なんか大事になった。王族が来るらしい。
「それじゃあ俺は行くから仲良くしてろよ。」
ゴードンが俺たちに手を振りながら言う。…これから女の人と2人か。かなり気まずい。ぶっちゃけ日本でもこんな状況なったことないからな。
「…えーとそれじゃあ取り敢えず部屋に行こうかな。」
ゴードンに渡されていた鍵を手に部屋へ向かう。俺の後ろからは当然だがアリアさんが着いてくる。そのせいかすれ違う方々がえ⁉︎みたいな顔をする。そんなに有名な人なのか。まぁ、上位1%なんだから仕方ないよな。
「…あのー、俺は基本的に部屋にいるつもりなんですけど…あなたも一緒の部屋にいるんですか?。」
「…ふー、…名前呼びで構わない。それと一緒の部屋にいるわけではない。私の索敵魔法の範囲は五百メートル、この宿のほぼ全てを監視できる。だから隣の部屋にいることになる。」
いや、サラッと言ったけど500メートルを監視出来るって何?。やばすぎない?。
「それにしても…お前からは本当に何の匂いもしない。ただの市民といった感じだ。」
「え?俺臭います?。あー、しばらく濡れたタオルで拭くだけだったからな。一応気をつけていたつもりなんですけど。」
「いや、そういう意味ではない。修羅場を乗り越えて来た者には同類だけにわかるものがあるんだ。…それより今の台詞、まるで湯浴みをするのが日常のような言い草。…貴族か?。」
おっと、こんなところで認識の違いがあったか。今までは捕まっているから風呂に入れないと思っていたけどどうやら庶民は入浴する文化がないようだ。ここは日本の圧勝だな。あの気持ち良さに勝るものはそうそうない。…あれ?じゃあ俺が転移した浴場ってひょっとして偉い人達がいたんじゃないか?。
(…どうだろう、ここは1つ、俺が異世界から転移して来たと告げてみるのは。)
想像
今すぐ言う
「僕は異世界から来ました!。」
「何と!、ではその証拠を見せてみよ!。」
「今は何も出来ません。」
「黙れ虚言癖!。」
…こうなることは避けられない。やはり最低でも自分の能力を理解してからにするべきだろう。
「だんまりか。まぁ良い。私は私の仕事をこなすだけだ。この任務はゴードン殿からの直接指名依頼。報酬もかなり良い。」
黙っている俺を見てアリアさんがため息を吐きながら言う。
「…なぁ、あのおっさんって偉いのか?。」
「お前っ…、本当に知らないのか?。…ゴードン殿は元Sランクの冒険者で英雄と呼んで差し支えない方だぞ。昔負った怪我によって引退はされたがその名声は今でも健在だ。」
…思っていた5倍ヤバいやつだった。…でも待てよ…
「ならそのゴードンの上って誰なんだ?。そのために俺は待つわけだけど。」
「…恐らく王族の方がいらっしゃるはずだ。それと司祭だろうな。そしてお前の処遇を決めるのだろうな。詳しくは聞いてないがお前一体何をしたんだ?。」
王族。…この世界は王政が敷かれているのか。そしてその絶対権力者が俺に会いに来ると。
「…元ぼっちには厳しいぜ。…吐きそうだ。」
考えるだけで嫌になる。リア充とか権力者とは接点がない暮らしだったからな。
「…では私はこちらの部屋にいる。一応言っておくが無用の外出は控えるように。と言っても私には全て視えているぞ。」
アリアさんが到着した部屋に入っていく。…見えているか、…何か能力なんだろうな。俺の未だ何か分からない七つの顔を持つ男みたいな。
「…ゆっくり寝よ。明日のことは任せるぜ明日の俺。」
部屋に入った俺は存外豪華な部屋に驚きながらも久しぶりのベッドの誘惑に耐えきれず目を閉じる。牢屋は硬い煎餅みたいな布団だったからな。
…明日から何しよ、ってか王族ってなんだよ。人生ハードモードすぎるだろ。Bランクって話はどうなった?。そこんところまじで確認したい。