Cランクの依頼を受ける、ここにきて初耳の知識。
「…なんか久々に依頼を受けた気がする。」
俺は今Cランクの依頼を受けている。本当ならもう少しランクの低い依頼を受けるつもりだったのだがシャーリーがゴリ押ししてきた。
「鈍った体を叩き直すのよ。今回の依頼は沼地でのクエスト。だから泊まりがけになるのよ。」
Cランクの依頼になると少し離れた場所に行かないと行けない。だから俺たちは今テクテク歩いている訳で片道4時間ぐらいらしい。だから到着して一休みしてから討伐。その日は野宿で次に日に帰る感じらしい。中々面倒臭いがその代わり報酬も良い。少なくともDランクを2日間受けることの1.5倍ぐらいは貰える。
「えーと、何を討伐するんだっけ?。…なんか…貝だったよね。」
朧げな記憶を遡る。シャーリーが依頼受注の手続きをしてしまった為俺は詳しく見ていない。受付の人もランクが高いシャーリーに言えば良いと思ったみたいだ。
「…ランガル貝なのよ。水辺に生息する貝でその強固な殻と水属性の魔法が厄介な魔物なのよ。」
…残念ながらその情報だけじゃ姿の想像がつかない。二枚貝タイプなのかそれともオウム貝タイプなのか、それと大きさがどれくらいなのか。それによって戦い方が変わってくる。
「硬いってことは…俺は大虎か造匠頼みかな。でも大虎は相手も強くないと発動しないっぽいからな。…今のうちに造匠を練っておくか。」
「そうすると良いのよ。今回は単体じゃないから一度で消えるような制限はやめるのよ。大体十匹ぐらいって聞いてるのよ。」
…そうなると…あまり強い条件はつけない方がいいな。あくまで現実的な条件で…一回振ったら消えるとかはダメだ。
(…貝ってことは中は柔らかいから…砕けば良いんだよな。…貝殻の構造的に一箇所でもヒビが入れば全体に波及するから…)
「よし、銘は『波砕』。能力は触れた所の衝撃を浸透させる。内部破壊系の能力で。これなら上手くいけば貝本体を攻撃できるしダメでも貝殻を内側から破壊できるから硬度を落とせる。」
即興で作った割には良い出来の剣が出来た。
「少しでも砕いてくれれば問題ないのよ。私のこの拳で砕いてやるのよ。」
シャーリーはアグナドラゴンの時に見た籠手を腕に装着している。鈍い光を放つその重厚な籠手はシャーリーの見た目とのアンバランスさが中々凄い。
「まぁ、頼りにしてるよ。」
その後は色々と雑談をしていたら目的地に着いた。途中で休憩を挟んだとはいえ4時間も歩いたのだ。どうやら俺も大分冒険者が板についてきたらしい。
「ここがベースキャンプになるのよ。この一帯には加護の光が広がっているから魔物は入ってこないのよ。」
「…加護の光って何?。」
いつものように疑問に思ったことを口にする。いつもなら呆れながらも教えてくれるのだが今回は少し様子が違った。
「…⁉︎…加護の光も知らないのよ⁉︎。…今までいた街に何故魔物が入ってこないか疑問に思ったことはないのよ?。」
あー、そういえばそうだな。あの壁があるから大丈夫とか思ってたけど…周囲を囲まれたら一大事だよな。
「身近な疑問には案外気がつかないものなんだぜ。」
「かっこつけるんじゃないのよ。…はぁー、加護の光は光属性の高位魔法を閉じ込めた灯籠によって発生する安全地帯なのよ。大体Bランクの魔物までは避けるようになるのよ。」
「ふーん、…なら全土に置けば良いんじゃない?。」
そうしたら雑魚い魔物はいなくなる。…いなくなるのか?避けるだけだから…耐性とか出来そう。
「それは無理なのよ。使われている素材が古代遺跡から発掘された物やとても希少な金属なのよ。だから街にはあるのはBランクまでを避けるけど村とかにはEランクぐらいしか避けないものを配布するのよ。」
思わぬ格差が発覚しました。
「え、じゃあその村は魔物に襲われ放題ってこと?。ヤバイじゃん。」
「普通はあまり強い魔物がいない場所に作るのよ。Eランクの魔物ぐらいならそこまで苦労することはないのよ。それに村にも魔物が避ける成分を配合した壁を作ってあるのよ。Cランク以上の魔物が発生した時は近くのギルドに救援要請を出すのよ。その仕組みは確立されているのよ。」
シャーリーの話を聞いて安心する。加護を超えそうな魔物がいたら救援依頼が出来るのか。それに壁っていうのはアリアさんに聞いたことがあったな。忘れてた。
「ここの加護の光はどのくらいの魔物まで大丈夫なの?。」
「あの灯籠の大きさだとEランクぐらいなのよ。この辺は陸生の魔物は少ないし、沼からは少し距離があるからこれで問題ないのよ。」
シャーリーが灯籠を指差しながら言う。シャーリーが言うなら問題ないのだろう。俺たちは背負っていた荷物を置き拠点を設営する。と言っても簡単なテントみたいなものだ。
「少し休憩したら討伐に向かうのよ。」
「おぅ、分かった。」