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説教を受けます、え、英雄なんかじゃないですよ。

 サクスベルク家に無事に帰宅した俺を待っていたのはアリアさんとシャーリーだった。心なしかその表情は怒っているように見える。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。俺はアリアさんとシャーリーが待つ御前に素早く正座した。


「…ほう、どうしたクラヒト。何か言いたい事があるのか?。」


「勝手に迷子になってすいませんでした!。」

 俺は迅速に頭を下げる。一瞬の間も置かずにだ。そのおかげか、場を呑んだ気配がする。謝罪する時は先手必勝。俺の教訓が活きる。


「…私達が怒っている理由はそんな事じゃない。お前が危険を冒したからだ。」


「話は聞いたのよ。なんで嵐鬼とやり合うことになるのよ。あれは絶対に手を出しちゃいけない部類なのよ。」

 どうやら2人は俺が迷子になったことについて怒っている訳ではないらしい。やれやれ、それなら土下座をする必要なんてなかった。だって迷子になったのは俺の責任だがフィーネと戦闘になったのはあっちが悪いからだ。俺は勢いよく頭を上げる。


「…俺だって自分から挑んだわけじゃないんだ。ちゃんと話を聞いてほしい。」

 2人の目を見てそう訴える。2人ともが俺の提案を了承し俺は迷子になった後の行動から2人に話した。あ、因みにちゃんとソファに座りましたよ。


「…つまり嵐鬼のお気に入りになったのよ?。」

 話し終わったらシャーリーがそんな事を言う。いや、あの感じはお気に入りというより美味しそうなご飯を見る目だったんだが。


「恐らくその時の嵐鬼は昂っていたはずだ。王城でエルマ殿にもちょっかいをかけていたからな。そして目の前にお前が現れた。神速を使った状態でな。クラヒト、お前が助かったのは奇跡に近い。それだけは忘れるな。」


「やっぱり?…ユリウスさんもよく生き残ったって、言ってたから。」


「当然なのよ。嵐鬼の実力はAランクオーバー。あの唯一無二の植物魔法は攻守に優れた魔法なのよ。それに嵐鬼にはスキルもあるらしいのよ。」

 …らしい?。


「らしいってどういうこと?。」


「誰も見た事がないのよ。でも植物魔法だけで龍種を倒すのは無理があるのよ。だからスキル持ちだろうって言われているのよ。」

 …確かに植物だと燃えそうだしな。あれで全力じゃないとかどんだけ強いんだよ。


「…見た目は凄い綺麗だったのにな。」


「…ん?…クラヒト、嵐鬼の姿を見たのか!。」

 アリアさんが驚きの声を上げる。あぁ、そういえば騎士団でも正体が分かってなかったんだよな。アリアさんの驚きも当然か。


「え、うん。全身の色素がない感じだった。髪も肌も真っ白で目だけが赤くてさ。性格破綻してなかったら多分めっちゃモテると思う。」


「…ふーん、クラヒトは嵐鬼を好きになったのよ?。それなら嵐鬼と両想いだからもう一回姿を見せるといいのよ。」

 拗ねたようにシャーリーが言う。どうやら俺がフィーネの外見を褒めたのが気に食わなかったようだ。…ダメだな、絶対にダメだ。殺される未来しか見えない。


「俺が言ったのはあくまで一般論だ。俺としてはもう会いたくないな。あんな周りに害を振りまくような奴。一緒にいるのが無理だもんな。」

 やっぱり一緒にいるなら落ち着く奴じゃないと。シャーリーみたいにね。俺は何の気無しにシャーリーの頭を撫でる。


「…な⁉︎…何突然撫でているのよ!。クラヒトのくせに生意気なのよ!。せめてBランクに上がってから撫でるのよ。」

 どうやらシャーリーの頭の上は通行手形が必要なようだ。Bランクといえばシャーリーがなんで受付嬢をやっていたかの理由を聞けるのもBランクになってからだった。俄然Bランクを目指す気になるね。


「…アリア様、その…お客様がおいでです。」

 メイドさんがアリアさんに来客を告げる。だがその口調がいつもとは違った。いつもは完璧な感じなのになんか辿々しい。


「…客?…今日は来客の予定はなかった筈だが…」

 アリアさんが顎に手を当て記憶を探る。でも結論は出なかったようだ。メイドさんについて玄関へ向かった。


「…はぁー、なんか疲れたよ、シャーリー。色々巻き込まれすぎた。」

 アリアさんが立ち去った事で取り敢えずこの俺を糾弾する場は終わりになった筈。


「そもそもの原因は1人で出かけたことなのよ。慣れない土地で1人きりにならないのは子供でも知ってる常識なのよ。…今度から出かける時は私を誘うといいのよ。」

 前半はいつもの罵倒8割、忠告2割の発言なんだけど後半の言葉は聞き捨てならない。


「それってデートのお誘い?。」

 ここぞとばかりにシャーリーをからかう。


「ち、違うのよ!。いちいちクラヒトが迷子になっていたら兵士が可哀想なのよ。だから見張ってあげるって言ってるのよ。」

 俺の揶揄にシャーリーはプンスカ怒りながらもそれでも俺と一緒に出かけることは辞めない。このツンデレさんめ。


「…あー、クラヒト。ちょっといいか?。」

 シャーリーと戯れているとアリアさんが戻ってきた。だけど今度は1人の少女を連れている。…あれ?あの子…


「…こちらはセレナ・ホーベンス様だ。お前に用があるらしい。」

 …セレナ…あの時の子だ!。


「その節は私の命を助けて頂き誠にありがとうございます。是非貴方様に直接お礼を言いたかったのです。私の…英雄様。」

 …おや?…何か様子がおかしいようだ。

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