転移したらそこは女風呂でした。
どうもお久しぶりです!。玉地蔵人です!。なんか色々不手際があって転生ではなく転移してきました!。それから1週間が経って俺は…
「…お前もしつこい男だな。何故市民証も持たないお前が女性用浴場にいたのか。本当のことを話せば解放してやるのに。罪自体は軽微なものだ。既にその期間の拘束は済んでいる。」
「だから、何回も言ってるでしょ!。気付いたらそこにいたんですよ。市民証なんて知りません。保険証みたいなものですか?。国民皆保険!。」
絶賛拘束中です。はい、記憶も消されず赤ちゃんから始まることもなくアースハイドにやってきた俺の目にまず飛び込んだのは肌色成分多めの女風呂。そこで逮捕されてかれこれ1週間ですよ。異世界転移から1週間拘束とかラノベだったら大問題だよ。俺の冒険はまだまだ始まらない!。
「お前はまた訳の分からないことを!。…はぁ、それに始めに聞いた名前、えーと玉地蔵人か?。姓があるってことは貴族なのか?。しかし聞き覚えがない。どこの出身なんだ?。」
「日本だって言ってるでしょ。」
「だから、それが分からんのだ。この世界にそんな名前の場所は存在しない。」
って感じのやりとりを繰り返している訳ですよ。でもまぁ、ここでの暮らしは食事は出るし尋問は1日3回1時間で終わり。それ以外は本などを読めるから悪くない気がしている。外に出れないけど。
「…はぁ、…もう一度だけ聞く、本当に嘘は言っていないのだな。」
お?今までと少し雰囲気が違う。これは根負けして解放してくれる気になったか?。
「はい、俺は嘘をついていません。」
「そうか、なら仕方ない。この魔導具を使うことにする。これに手をついてもう一度初めから話せ。嘘を言えば爆散して…」
なんか便利なアイテムを持って来たと思ったら物騒なアイテムだった。ひょっとしてこれを使うのを躊躇してくれていたんだろうか。
「爆散して…?。」
「…お前は死ぬ。残骸の処理が面倒だから使いたくなかったのだが仕方あるまい。」
なにそれ怖い。それに面倒だからって…。俺を心配してくれてた訳ではないようだ。
「それでも良いのなら、手をかざせ。」
そう言って差し出してくる。…って言われてもな、本当のことしか話してない訳だし。
「ん!、これでいいのか。」
「…っ、まさか本当に手をかざすとは。…本当のことを言っているのか?それとも狂人なのか。」
俺の躊躇いのない行動に驚く男。
「さぁ、これでどうなるんだ?。」
「…どうやらお前は本当のことを話していたようだ。そうなると…もう私の一存でお前を…」
お?解放か?。
「解放することは出来ない。市民証を持たず更に
突拍子もないことを言いそれが真実となってしまった今、上に掛け合うしかないのだ。浴場の覗きがどうとかの次元を超えている。…もうしばらく身柄を拘束させてもらう。」
何も解決してなかった。むしろ更にややこしくなったようだ。俺の冒険はいつ始まるの?。それともここが終着点ですか?。
「ただ拘束といっても牢屋にではない。担当者が来るまで宿にいてもらう。一応無用の外室は控えてもらうが軟禁はしない。無論監視は付けさせてもらうがな。それが嫌ならここにいてくれても構わないが…。」
「監視付きで構わない。宿に泊まらせてくれ。因みに俺は無一文だ。」
即答、即答ですよ。そりゃここでの生活も悪くはないけどやはり寝床が硬い。
「…こちらで工面する。」
それだけ言い残し男は部屋を出て行く。宿を押さえに行ってくれたようだ。この牢屋より酷いってことはないだろうから成り上がりに成功したと言っても良いだろう。
「久しぶりの日の光だ。眩しいな。」
しばらく待つと部屋を確保したと連絡があった。そのまま流れるように解放される俺。1週間ぶりに直視する日の光に目を細める。
「それじゃあ宿に案内する。一応信用しているが…逃げるなよ。」
「分かってるよ。俺なんかが逃げれる訳ないじゃん。」
「それと宿に着いたら監視兼護衛の冒険者に会うことになってる。」
「…冒険者あるのか。それってギルドとかに所属してたりする?。」
「なんだ?ギルドのことは知ってるのか。ますます分からんな。まぁ良い、俺の仕事はこれで終わりだ。さぁ、着いたぞここがこれからお前が滞在する宿だ。」
『…『金の成る木』…、なんか嫌な名前だな。俺たちはその養分ってことか?。」
「お前は金を支払ってないだろ。それに意味が違うぞ。この名前はここを土台に大きく成り上がれという願いが込められている。現実にここを拠点に成功して今は王都で暮らしている冒険者も多い。」
「…ふーん、で俺の監視ってどの人?。」
「ちゃんと話を聞けよ…。待てよ、えーといた!おーい、」
ちょ、耳元で叫ぶのはやめてくれ。
「さてさてどんな人か…な…って…。え?マジで?あの人?。」
男の声に呼ばれて向かって来ているのはどう見ても女だった。それも凄い美人。日本では早々お目にかかれることはないだろう。シャルさんと良い勝負かもしれん。…やべー、緊張してきた。
「この男が監視対象か。…うむ、全くと言っていいほど強さを感じさせない。…本当に私でないとダメなのか?、ゴードン殿。」
長い茶髪を振り乱しながら立ち止まったその女性は端正な顔をしかめ男に尋ねる。この男ゴードンって名前だったのか。…下っ端じゃないのか?。
「あぁ、すまないが頼む。俺の顔に免じてな。」
「ゴードン殿が言うなら…構いませんが。」
「ううんっ、…私の名前はアリア・サクスベルク。Aランクの冒険者だ。これから君の監視をすることになる。」
サクスベルク…名字があるってことは貴族か?。それにAランクって…。赤い瞳が強烈な印象なんだよな。
「なぁなぁ、Aランクって強い方なのか?。」
「お前っ!ゴードン殿になんて口を…」
「いいんだアリア。そうだな、Aランクは冒険者の中で上位1%に位置する存在で単騎で軍隊に匹敵する実力を持つ。」
「………そんな化け物がなんで?。」
俺が暴れても所詮ただの大学生だよ?。軍隊の1人に負けるよ?。それにやっぱりこの男がかなり偉いだろ。やべーよ、今から態度変えた方がいいかな。
「それだけお前は異常なんだ。分かったら大人しくしていてくれ。」
「了解致しました。私はこの宿から一歩も外に出ません。どうかお気になさらず。これまでどうもありがとうございました。」
「…今さらだし気持ち悪いから喋り方変えなくてもいいぞ。」
「…りょ!。」
今までのように返したらアリアさんに睨まれたがゴードンが気にしないと言ったからか何もなかった。やれやれ俺の冒険はまだまだこれからだ。