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食堂での一幕、人は自分の知らない所で有名になる

 魔法を使えるようになったとされる日。俺は体力を使い果たしすぐに眠りについた。ソアラさん曰く弁の強制貫通後は今まで感じられなかった魔力を感じて疲労が激しいので寝てしまった方がいいらしい。


「……ふぅあぁ〜、…起きよ。」

 翌日目を覚ました俺は静かに目を閉じる。そして頭の中に六芒星を思い浮かべる。


(…あるな。…日輪か。これが多分魔法系のスキルなんだろうけど…まだ字も黒い。発動条件があるタイプか。)

 頭の中の六芒星では昨日発現した日輪の文字が目立つ。どんな能力かワクワクするが今は確かめられないようだ。



           天癒

       造匠      神速


       大虎          

           日輪


「…これで5つか。でもどう考えても能力が入る場所はあと一つしかない。七つの顔にはならないんだよな。」

 これは六芒星が浮かんだ時からの疑問だ。六芒星なのだから当然頂点は六つ。七つ目が入る余地はない。


「クラヒト?起きているのよ?。」

 なんて考えているとドアからシャーリーの声がする。あまりに起きてこない俺を迎えにきたようだ。


「起きてる。…今いく。」

 俺はガバッと起き上がりドアへ向かう。日輪に関しては時が来れば分かるとしか言いようがない。だって今は使えないのだから。出来れば凡庸性のある能力であることを望む。


「やっと出てきたのよ。もうお昼近くなのよ。暫く冒険者の仕事をしてないから鈍っているのよ。」

 おっと、朝だと思っていたが昼だったようだ。そりゃ様子を見にくるか。


「ごめん、ごめん。でも昨日属性も知れたし明日から依頼を受けることにする。元々ランクを早く上げるために王都に来てるんだし。」


「そうなのよ。ダラけていたら本末転倒なのよ。ほら、早くご飯を食べにいくのよ。今日は昼から闇属性の魔法について軽く説明するのよ。」

 シャーリーにせっつかれてサクスベルク家の食堂に向かう。この家は朝、昼は基本的に各人で取るようだ。と言ってもあまり中途半端な時間に行くとメイドさんの迷惑になるからできないけど。サクスベルク家は使用人をとても大事にするらしく食事は同じ物を食べるらしい。ザ・ホワイト企業だ。食堂に入るとメイドさんが何人か食事をとっていた。俺とシャーリーを見て慌てて立ち上がろうとするが俺とシャーリーはそれを制止する。俺たちはただこの家に厄介になっている居候なのだから。俺とシャーリーが席につくとメイドさんが昼食を運んできてくれる。


「クラヒト様とシャーリー様はお心が広いのですね。」

 俺とシャーリーに1人のメイドさんがそう言う。誰かと思えばメイド長のアミリアさんだった。


「いや、そんなことないですよ。俺達はただの居候なんで。伯爵家に仕えている皆さんの方がずっと立派だと思いますよ。」


「ふふっ、…ありがとうございます。その言葉は使用人一同で共有させていただきます。流石はアリア様が認められた方々です。…あ、これは独り言なのですがアリア様もそろそろ婚礼適齢期ですね。…ではこれからもどうぞ宜しくお願いします。」

 俺の返事にアミリアさんは微笑んで頭を下げる。そして食堂を出て行った。間に謎の独り言が挟まっていたな。なんだったんだ?。


「クラヒト、早く食べるのよ。時間は有限なのよ。」

 俺がアミリアさんの言葉の真理を推し量ろうとしているシャーリーが口いっぱいに食事を頬張りながらそんな事を言う。因みに今日の昼食はサンドイッチみたいな奴とステーキでした。ステーキは焼き立てで美味しそう。


「いや、そんなリスみたいに頬張るなよ。レディとしてどうなんだ?。口元にもめっちゃ付いてる。」

 メイドさん達はサンドイッチをナイフとフォークで切って食べている。俺が見ていた限りシャーリーは手で鷲掴みだった。


「う、煩いのよ。」

 シャーリーが口元をゴシゴシしながら口の中のモノを飲み込む。まぁ俺も普通に手で食べるけどな。しっかり噛み締めて食べる。うん、美味い。


「ステーキ美味しいのよ。…クラヒト、いらないなら食べてあげてもいいのよ?。」

 目の前にある全ての料理を食べ終えたシャーリーはもの寂しそうな表情を一瞬浮かべた後、俺の前にあるステーキに狙いを定めた。


「いや、おかわりが欲しいなら頼めばいいだろ。多分問題なく、くれるだろ。」


「は、恥ずかしいのよ。私はレディなのよ。」

 いや、今更だと思うけど。…仕方ないな。


「ちょっとだけだぞ。」

 俺は2切れステーキをシャーリーの皿の上に乗せる。…こういうのはマナー的にどうなんだろ。


「…いらないなら仕方ないのよ。残すのは失礼なのよ。」

 シャーリーは嬉しそうな顔で言い訳しながらステーキを食べる。うん、まぁ、可愛いからいいか。

 シャーリーが食べ終わるのを見届けて食堂をあとにする。そんな俺たちをメイドさん達は笑みを浮かべながら見送ってくれた。







「…行った?…行ったわね。ふぅー、緊張したぁ。」

 クラヒト達が去った食堂。その中ではメイド達が全身から力を抜いていた。そしてそれまではナイフとフォークで食べていたサンドイッチを手掴みで食べる。


「いきなりでびっくりしちゃったわね。ねぇ、アリア様のお客様のお二人のことをどう思う?。」


「そうねぇ、あの獣人の子は可愛いかったわ。聞いてたでしょ、ちょっと足りなかったけどお替り頼むの恥ずかしがってた。」


「うん、そうだよね。言ってくれたら用意したのにね。」


「あの男の子はどう?。アリア様がわざわざ招くぐらいだからどんな人かと思ったけど顔は普通だったよね。」


「うん、特にカッコいいわけでもブサイクなわけでもなかった。でも私達が居ても気にしなかったから良い人なんじゃないの?。」


「でも使用人がいない家で育ったらそんなの気にしないよぉ。」


「私も良い人だと思うな。アミリアさんへの言葉も丁寧だったし。あの獣人の子にステーキあげてたし。」


「そうそう、なんやかんや言ってちゃんとあげてたよね。」


「ねぇ、あの子、アリア様と付き合うのかな?。」


「えー、どうなんだろ。でもアリア様は多分満更でもないし…!。でも獣人の子もいるし!。.目が離せないよ!。」


「そうね、どうなるのかしら。」


「これから要観察ね。」

 クラヒトの知らない所で彼は屋敷中のメイドから観察対象となっていたのだ。

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