転生じゃなくて転移になっちゃった(記憶もあるよ)
「ふあーーあ、読み終わったか。…やること無くなったな。ここでなんか能力の使い方の練習とか出来たら良いのに。…ってどうせ赤ん坊からやり直しだし記憶もないから関係ないか。」
続きが気になってた漫画も読み終えてしまいいよいよやることがない。
『2000035番の番号札をお持ちの方。転生の準備が整いました。3番ゲートまでお越し下さい。また仲良くなった人がいらっしゃいましたら最後の挨拶をお済ませ下さい。」
…俺だ!。番号長すぎてすぐに反応できなかった。そうか、いよいよ転生か。…なんか緊張するな。最後にシャルさんに挨拶をするべきだろうか?。でもどこにいるのかわからないしな。
「…ストライキとかどうなったんだろ。…まっ、どうでも良いか。シャルさんを探しつつゲート?まで行こう。」
ガイドブックの地図を見ながら3番ゲートに向かう。
「…ウド…、…クラウドォォ!。…」
俺を呼ぶ声が聞こえる。…この名前で俺を呼ぶのは1人しかいない。
「シャルさん?。…良かった、あいたかったんです。俺、これから転生なんです。」
「知っているよクラウド。君の番号は盗み見ていたからね。ここで待ってれば会えると思っていた。」
なんとシャルさんは俺に会いたかったようだ。めっちゃ嬉しい。
「君には世話になった。君は私のはじめての友だ。前の世界では友達なんていなかったからな。」
シャルさんは俺と同じボッチだったのか。
「出来れば同じ世界を君と共に生きたかったよ。でもそれは難しいだろう。…その、だから…」
嬉しいことを言ってくれるシャルさん。それだけで彼女無し人生を歩んできた俺は天にも昇るようだ。…既に昇ってるか。なんて考えていると…顔を赤くしたシャルさんが顔を近づけて来る。…え、ちょっ…
『…チュ…』
「せ、餞別だ。…一応…はじめてだったんだぞ?。」
「……………はっ⁉︎。…う、うす。ありがとうございます。」
頬に柔らかい感触。これはまさかリア充だけに許された頬キッスってやつか⁉︎。…すっごい柔らかい。いや、それより俺の顔どうなってる?赤すぎて溶けてるまである。
「それじゃあバイバイだ、クラウド。…次は長く生きろよ。」
そう言って走り去ってしまうシャルさん。俺は情けなくも言葉を発することが出来なかった。
「…あぁ、俺の生涯で間違いなく最高の瞬間だった。」
「ねぇねぇ、それを見せつけられる私の気持ち考えたことある?。ストライキしてる奴らの替わりに働いてんだけど。まじブルー入るわ。」
「…うおっ⁉︎…いつからそこに?。」
なんか後ろに面接の時のギャルみたいな人いた。
「クラウドォォ!…ってとこからいましたけど?。人が働いてる時に見せつけてくれるじゃん。はぁーあぁ、なんで面接課の私が出港課の仕事もしないといけないんだよ。私の管轄をお奨めしなきゃ良かった。」
どうやらこのギャルも中々疲れているらしい。せっかくの人の門出を祝う気は全くないようだ。
「お、お疲れ様です。」
「ほんとお疲れだからね?。…さっさとやっちゃうわ。えーと、アースハイド、Bランク。…ねぇ、キスされた時どうだった?。」
なんかタブレットに入力してたギャルがいきなり尋ねてくる。今聞くの?。
「…黙秘で。」
「…今ならまだミジンコにできるけど?。」
「…なんか柔らかかったです。それとシャルさんの温もりを感じて幸せでした!。」
「うざいからランク下げて良い?。」
「聞いといて⁉︎。」
「嘘ウソ、冥土ジョーク。…良し、これで入力完了。…はー、私もこれで仕事終わりだし、まじしんどかったし。」
「あの、これからどうすれば…」
「んー?しばらくすれば転生するよ。あ、それまでに聞いときたいことある?。」
「えーと、能力とかって…どうなのなんですか?。あと、どんな家に生まれるのかも。」
「…ちょっと待ってねぇー。確かこの辺に…」
そう言ってギャルは書類をひっくり返す。整理整頓ができないようだ。それとなんか手が光りだしている。これが転生の光か。…早くして欲しい。記憶は無くなるけど安心して旅立ちたい。
「…おっ、あったあった。えーと能力は『七つの…』あ!ちょっと待って!。まじやばい!。」
書類を読んでいたギャルが慌てだした。いや、もうちょっと言って欲しい。キラキラが体の部分まできてる。時間がないようだ。
「…えーと、えーと、…記憶消去の薬と…まず転生薬飲んでないじゃん!。このままじゃ…」
え、何!なんかやばいのか!。
「…ご、ごめんね。私の疲れ過ぎで薬を飲んでもらうの忘れちゃった。だから君は転生じゃなくて転移になっちゃいます。記憶も体もそのまま向こうに行くから…その、まじカンバ!。」
え、転生じゃないの?。今までの努力はなに?。
「…あ!能力、能力だけ言っとく。『七つの顔を持つ男』だって!。」
…それ詳しく聞かないと全くわからないやつ…。ってツッコミを入れようとしたが俺の全身が光りそこで俺は消え去った。
「シャルフォルン・アガトラム、本当にいいのか?。」
「あぁやってくれ。私がクラウドと同じ世界に行くにはそれしか方法がない。」
「まさか自ら無為な転生の輪廻に飛び込むとは。お前は…破壊の限りを尽くした魔王だが、それも理由あってのこと。それ故貧しいが人間に転生できるはずだったのに。」
「それじゃあダメなんだ。この記憶を残したままクラウドに会いたい。その為ならこれくらい耐えてみせるさ。…なにせ私は魔王なのだから。」