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王都での出会い、アリアさんの幼なじみだって

「クラヒトはいつから依頼を受けるつもりなのよ?。」

 ギルドを後にした俺たちはアリアさんの紹介で昼ご飯を食べる事にした。連れて行かれたのは結構ラフな感じのバーだった。メニューも気軽に頼める物ばかりで昼ご飯にはぴったりに思えた。値段もお手頃だったし。出てきたハンバーガーみたいなものにかぶりついているとホットケーキを食べていたシャーリーがそんな事を聞いてくる。因みに俺はホットケーキをご飯として認めていない。あれは…おやつだろう。


「…んー、俺としてはいつからでも問題はないんだよな。滞在する所も問題ないし、武器もあるし。」

 依頼を受ける為の懸念は一つもない。非常に順風満帆な出だしと言えるだろう(ほぼ他力)。


「なら明日から受けるのよ。冒険者は下手に休むと腕が錆びつくのよ。」


「そう言うならシャーリーなんて錆びすぎて大変なんじゃ…」


「煩いのよ。…そんなのは言われなくても分かっているのよ。だから私もクラヒトと同じ依頼を受けるのよ。ランクアップの査定には繋がらないけど丁度いいのよ。」

 3年のブランクのあるシャーリー。なら錆錆で鈍りまくっているだろうという俺の発言は食い気味にシャーリーに被せられた。


「なら私も…」


「…流石にアリアちゃんが一緒はいただけないのよ?。全部アリアちゃんが弱らせたと思われるのよ。クラヒトのランクアップの邪魔になるのよ。少なくともBランクの依頼を受ける時まで待っておくのよ。」

 俺とシャーリーに同行すると申し出ようとしたアリアさん。だがシャーリーに一刀の元に切り捨てられる。シャーリーの述べるぐうの音も出ない正論にアリアさんも口籠るしかないようだ。


「…そう言われると仕方ないか。なら…私は私で依頼をこなす事にしよう。王都にいる時しか受けられない依頼もある。」

 アリアさんは目の前にあるステーキを口に運びながら言う。心なしか寂しそうに見える。


「…あはは…そうなんだよ……ってアリア!。あんた何で王都に!。」

 俺達のテーブルの横を通って出口へ向かっていた1人の冒険者がアリアさんを見て歩みを止める。女の人にしては短髪の元気そうな女の人だ。隣には大柄な男がいる。そっちは背中に体とさしてサイズが変わらないような大剣を背負っている。厳つい。


「…ん?…ジゼルじゃないか!。久しぶりだ。」

 話しかけてきた女の人の顔を見たアリアさんが立ち上がり抱きしめる。え、ちょっと、なんか変な気分になる。


「それはこっちのセリフだぞ。お前Aランクになってから王都から出て行っただろ。それから全然帰って来てないし。」

 ジゼルさんと呼ばれた女の人がアリアさんの抱擁を受けながらそんな事を言う。あれ、でもアリアさん前にも王都に行っていたような。


「そんな事はない。私だって偶には帰って来ていた。お前が依頼で王都から離れていたんだろ。なんとも間の悪い奴だ。」


「…は?…私の間が悪い?。私は王都を拠点にしてるんだよ⁉︎。それなのに王都で会えないのは私のせい?。そもそもお前が王都を出なければいつでも会えただろうが!。」

 おや、何だが様子がおかしい。さっきまで笑顔で抱き合っていたのに今はお互いに距離をとって牽制しているみたいだ。


「私が何処で冒険者をしようと勝手だろう。私に会えなくて寂しかったのを私のせいにされては敵わない。」


「な⁉︎…さ、寂しくなんかねーよ。今日だってこいつと一緒に依頼を終わらせてきたところさ。なぁ!。」


「あぁ。…おい、もしかして…」

 突然会話に組み込まれた男が返事を返す。どうやらジゼルさんの尻に敷かれているようだ。同じくアリアさんとシャーリーに頭が上がらない俺としては好感を持たざるを得ない。


「そうさ、天覧のアリア。個人での戦闘力は勿論だが特出すべきは集団戦での采配。大規模な魔物の討伐では圧倒的な指揮力を発揮する、…私の幼なじみさ。」

 男の人にアリアさんの紹介をしていくジゼルさん。最後に照れながら幼なじみと言っていた。…ツンデレっぽい。


「…この2人があんたの連れかい?。…1人はやりそうだが…もう1人の男は…んー、アリア、この男の何が良いんだい?。」

 ジゼルさんの目線がこちらに向けられる。ジゼルさんも結構な美人だから見つめられると結構照れる。評価に関しては中々毒舌だけど。


「こっちはシャーリーでこっちはクラヒト。どちらも私の大切な友だ。…それにあまりクラヒトを舐めない方がいいぞ、ジゼル。お前なら知っていると思うが以前コーラルの街に魔族が訪れた。」

 ジゼルさんの物言いに腹を立てたのかアリアさんが俺とシャーリーの名前を紹介してくれる。その時何故か俺の事を更に紹介しようとする。俺としてはそんなに目立ちたくないから別に今のままの評価で良いんだけど。


「それなら知ってる。ローゼリア様が慌てて兵を引き連れてとって返したからな。だがローゼリア様が到着された時既に魔族は撃退されていたのだろう。コーラルにはお前もいるしケレンさんもいる。それに今は引退しているがゴードンさんもいる。充分に対応出来るはずだろ。」


「情報が足りてないな。先ずは魔族は単体ではなかった。魔物の召喚が可能な魔族だったんだ。」


「…っ、つまり中級魔族以上ってことね。それでも…」


「更にケレンさんはその時ここ王都にいた。…あの時コーラルにいた現役のAランク以上は私だけだった。」


「…ど、どうやって魔族を…。あんたの能力じゃ中級魔族を一騎打ちで押し込むのは…」


「クラヒトだ。クラヒトが絶体絶命のコーラルと私の命を救ってくれた。」


「そ、そんなの信じられないさ。だってそれが本当ならその男は勲章を授かっていて当然だもの。なのに私はそれを知らない。…って事は…」


「クラヒトが固辞したんだ。ローゼリア様はその思いを受け今回の騒動の真相を隠した。」


「…ごくっ………つまりその…貴方は強いの?。」

 ジゼルさんが緊張したように唾を飲む。ジゼルさんからすればその中級魔族とかいう奴に勝った男に喧嘩腰で喧嘩を売ったのだから当然だ。


「いや、全然。俺Dランク。」

 だから俺はその緊張を解かすために本当の事を言った。


「…なんなのよ!。」

 ジゼルさんの叫び声がこだまする。

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