王都の冒険者ギルドに行きます。
「良し、それじゃあご飯でも食べにいくとするか。クラヒトとシャーリーに王都の案内もしたいしな。」
サクスベルク家の人達に挨拶を終えた俺たちは部屋に案内されていた。どうやら俺にも1つ部屋が与えられるらしい。シャーリーは別の部屋だ。心境としては心細いので一緒の部屋が良かったのが本心だが。ぽろっと口走ったがシャーリーは顔を赤くして下を向き続けたし、アリアさんは不機嫌そうに「2人が相部屋になったら天眼で監視し続ける」と宣告してきた。理由はよく分からなかったけど多分貴族の家で客が変なことをしないようにだろう。アリアさんの負担になるのは避けたいので個別の部屋となった訳である。
「そういえばシャーリーって冒険者なの?。ギルドは休職するって言ってたけど。」
屋敷を出た時にふと思い出した。シャーリーは俺に付き添うためにギルドの職員を休職している。仕事はどうするんだろうか。
「一応冒険者として登録してたからそれが残っていたらそのまま使うのよ。なければないで新しく登録するから問題ないのよ。」
どうやら俺の心配は杞憂だったようだ。昔から冒険者をしていたらしい。…ずっと思っていたけど…シャーリーはいくつなんだろうか。アリアさんのこともちゃん付けで呼んでるし。…気になるが女性に年来の話をするのはダメだってなんかの雑誌に書いてあったから聞かない。
「…ここがギルドだ。まぁすぐに来ることになるだろうが…今日寄って行くか?。」
歩いているとアリアさんがある建物の前で止まる。大きいが無骨な感じのその建物が王都の冒険者ギルドらしい。流石の大きさだ。コーラルの3倍以上ある。
「依頼を受ける日に行って登録のやり直しになっていたら面倒だから今のうちに確認してしとくのよ。クラヒトもそれでいいのよ?。」
シャーリーは今日のうちに確認しときたいらしい。受付をやっていただけあったしっかりしている。勿論拒否する理由もないので承諾する。シャーリーのランクとかも知っておきたいし。
「…ざわざわ…」
ギルドに入ると一斉に視線が向けられる。懐かしい感覚だ。俺もコーラルのギルドでは初めの方はそうだった。それでも俺が魔族を撃退したことを知っている冒険者がいたからすぐに馴染めたが。ここではどうだろう。もとぼっちの勘からすると…何もわかりません。そもそもそんな勘ないし。
「…見ろ、天覧のアリアだ。…なんでこっちのギルドに…?。」
「その隣の獣人、中々強いぞ。あれは…拳闘士だな。
「…後ろの冴えない男は…荷物持ちか?。あんな美人2人に仕えられるなんて羨ましい男だ。」
「アリアお姉様、ハァハァ…是非踏んでいただきたいわ。」
ギルドの中から囁き声が聞こえる。殆どがアリアさんに向けての内容だったけど数人あたまがおかしい人がいるようだ。あと俺は荷物持ちじゃないから。
「ようこそ、アリア様。本日は何かご用でしょうか?。」
モーゼの海割りのように人が割れてカウンターに辿り着く。受付の女性は丁寧に、それでいて何故か少し不思議そうにアリアさんに尋ねる。
「いや、用があるのは私じゃない。こっちのシャーリーだ。冒険者カードの登録がまだ有効か確認したいらしい。」
「…ということは1度引退なされていたということですね。」
アリアさんの後ろから顔を出したシャーリーを見つめながら受付の人が尋ねる。
「そうなのよ。だからまだ残っているかの確認となかったら新規で作って欲しいのよ。番号は…」
シャーリーが番号を言う。その番号は冒険者一人一人に与えられていて引退した時に教えられるらしい。辞めてからも今回の件ように復帰する場合や便宜を図って欲しい時に番号が必要になるそうだ。俺なら確実にその番号を忘れると思うけどね。
「畏まりました。確認のため少々時間をいただきます。お待ちください。」
シャーリーから番号を聞いた受付はメモして奥に入って行く。手持ち無沙汰になった俺たちに声がかけられる。
「…あの、…天覧のアリアさんですよね。自分大ファンなんです。握手して貰っていいですか?。」
若い女の子がアリアさんに挨拶をする。アリアさん人気者なんだな。日本のアイドルみたい。
「あぁ、構わない。見たところ剣士系統のようだな。いつの時代も剣士は前線を支えなければならない。これからも頑張ってくれ。いつか共に戦える日を待っている。」
握手に応じたアリアさんはその女の子に激励の言葉をかける。…アイドルっていうか宝塚みたいだ。女の子、号泣してるし。何度も頭を下げて女の子は元いた場所へ帰っていった。…アリアさんはこれだけ尊敬されるひとなんだよな。俺なんかが知り合いになれて更に世話になれるなんて幸運以外の何ものでもない。転生の時のBランクっこの事だったのかもしれない。なんて考えているとある違和感を感じる。その正体は分からないけど…なんだ?。このギルド全体に対して…。
「お待たせ致しました。」
何か閃きかけた時受付の人が帰ってくる。声をかけられたせいで頭の中がすっ飛んでいきました。諦めます。
「…シャーリー様の冒険者カードの記録は残っておりました。再発行してお返しいたします。シャーリー様は王都でのギルドの仕組みについてご存知でしょうか?。」
受付の人がシャーリーにカードを渡す。…ん?…待て待て色が…。
「シャーリー、その色って。」
チラッと見えたカードの色は俺がまだ見たことのない色だった。つまりおれのランクより上。…記憶を辿り今見た色のランクを思い出す。
「Bランクなのよ。でも久々だから先ずはゆっくり依頼をこなしていくのよ。」
「…えぇぇぇぇぇぇ‼︎。」
顎が外れる程びっくりした。