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サクスベルク家の人達、真の支配者について。

 アリアさんがこれまた大きな門扉に触れると重厚感のある扉が内開きしていく。こんなに大きいのに音は一切しない。


「お帰りなさいませ、お嬢様。」

 開いた扉の先にはメイドさんがずらっと並び道を作っていた。その数約20人。圧巻の光景である。


「あぁ、ただいま帰った。父上達は何処に?。」

 アリアさんは当然だが慣れたようにメイドさんに腰につけた剣を渡す。家の中では武器はつけないようだ。まぁ実際のところアリアさんなら武器がなくても早々負ける事はないと思うが。


「旦那様は応接室でお待ちです。」

 メイドさんはアリアさんにそれだけ言うと俺たちの方へ視線を向ける。なんだ?この名家には俺みたいな奴は相応しくないとか言われるんだろうか。


「お初にお目にかかります。サクスベルクのメイド長を仰せつかっております、アミリアと申します。お客様方には申し訳ございませんが当家では屋敷の中での武装は禁じられております。武装解除の方お願い致します。」

 予想が外れた。俺たちにも丁寧な口調で語りかけてくれる。一応正式な客人として扱われるようだ。だけど武装解除か、やっぱり貴族の家では防犯の為にそれぐらいするのか。特に断る理由もないし俺は腰の剣を預ける。シャーリーも手甲を外していた。あれも武装にあたるのか。


「すまないな、クラヒト。煩わしいだろ。私はこんなの反対なのだが…」


「失礼ながら申し上げます。この処置の原因をお作りになられたのはアリアお嬢様でございます。」

 アリアさんが俺に詫びてくるがその途中でアミリアさんが割って入る。


「…ん?…どういうこと?。」


「以前お嬢様が旦那様並びに若旦那様に斬りかかった為当家では屋敷内での武装解除が習慣になったのでございます。」


「…アリアさんマジで?。」


「し、仕方ないじゃないか。父上と兄上が勝手に結婚相手を決めようとするから!。…殺して当主の座に就くしかないと思ったんだ!。」

 いや、狂気!。確かに勝手に結婚相手を決めたのは悪いけど…本気で殺そうとしたのは弁護しようがない。この家で武装が禁止されるのも納得だ。…待てよ…ということは…


「アリアさんの家族ってみんな強いの?。」

 殺す気で斬りかかったアリアさん相手に生き残っているということは強いのか?。


「…あぁ、父上は当主の座を継ぐ前に王都の騎士団の団長をしていた。兄上も騎士団の副団長だ。」

 馬鹿強い。いや、騎士団っていうのがどれくらいか分からないけど絶対に強い。


「確かお姉ちゃんも凄腕の魔導師なのよ。王国魔導院の特攻隊長なのよ。サクスベルク家は王国有数の名門なのよ。」

 聞いたことがない機関の名前が出たけど話の流れ的に騎士団の魔法版みたい。そこの特攻隊長とか怖い。


「はい、その通りで御座います。サクスベルク家は貴族でありながら戦場では1番の槍となる事を信条としております。…ただ一つ情報が抜けております。」

 アミリアさんが俺たちから預かった武器を後ろのメイドさんに渡しながら相槌を打つ。ただ、今の情報だけが全てじゃないようだ。ってかそんなに仕える家の事を話していいんだろうか。


「当家の1番の権力者は奥様でございます。どうかそれをお忘れなきよう進言させていただきます。」


「…元騎士団団長の旦那と現役の副団長とその魔導なんとかの特攻隊長とAランクの冒険者がいるのに…えーとその…アリアさんのお母さんって…人間?。」

 つい口に出してしまう。シャーリーがなんて事を言うのかと睨みつけくる。完全な失言だ。だが、


「…んー、母上は私が見る限りでは負けたところを見たことがない。私たち3人兄妹の喧嘩を制圧するのも母上の役目だ。…冷静になれば少し強すぎるような…」

 アリアさんはむしろ母親、人外派の考えだったようだ。取り敢えず俺とシャーリーはほっと胸を撫で下ろす。シャーリーに思いっきりつま先を踏み抜かれたけどこれは仕方ない。


「お嬢様、これ以上お客人をこの庭先でお迎えするのはあまりよろしくないかと。ご案内させていただきます。」

 アミリアさんがアリアさんにそう告げる。はっとしたアリアさんがメイドさんにソーラとイルの手綱を預ける。流石にソーラとイルも慣れているのか大人しくついていく。またな、ソーラ、イル。


「こちらは当家自慢の花壇で御座います。年間を通して様々な花が咲き乱れております。」

 歩き始めたアミリアさんの後を追っていく。他のメイドさんも俺たちの後ろをついてくるんだけど全く気配がしない。これが一流のメイドなのだろうか。視界には色とりどりの花が咲いている。しっかりと区画で分けられていて見るのも楽しい。定番の蔦のアーチのようなものもある。ってか庭にベンチがある。ここでお茶を楽しんだりするんだろう。


「これだけの花を育てるのは大変なのよ。それによく見ると薬効のある花も混ざっているのよ。」

 花を眺めていたシャーリーがそう漏らす。やっぱり女の子だからこういうのも好きなんだろうか。いじってやろうかと思ったけど反撃が怖いのでやめておく。さっき踏まれたつま先はまだ痛いです。


「多分それ専用の人を雇っているんだよ。これだけ広い庭の世話をするなんて凄い手間だし。」

 庭師という職業の人達でもここまでの庭は大変だろう。何人雇っているのか。


「いや、我が家では庭師は雇っていない。母上が全て面倒を見ていると言っていた。」


「…いや、それは嘘だよ。一人でこの庭をなんて…」


「本当で御座います。この素晴らしい庭は奥様1人で管理されております。私たち使用人は関与しておりません。」


「…うーん、…どうやって…。アリアさんは見たことないの?。」


「いや、その私は…子供の時からこう言った花などより…その、馬や、剣の方が興味があったのでな。母上が庭で何をしているのかは知らないんだ。」

 アリアさんがワタワタしながら言い訳のような説明をする。


「…ますます謎が深まるな。」


「本館に到着いたしました。これより旦那様のもとへご案内いたします。」

 アリアさんの母親について考えているといよいよ本丸、どでかい洋館に辿り着く。目の前にしてわかる。凄いやつやん。だけど俺の頭はそれどころじゃなかった。心拍数が一気に跳ね上がるのがわかる。いや、アリアさんの家に滞在するって段階で薄々感付いてましたよ?でもさぁ、…いきなりとは思わないじゃん。


「…え、…あの、俺も一緒?。」


「当然なのよ。これからこの屋敷に世話になるのに挨拶無しなんてあり得ないのよ。」


「すまんな、クラヒト。父上から是非会ってみたいと言われていたのだ。私が初めて招く男の友人なのだからな。」

 お父上からの指名でしたか!。これは…覚悟を決めた方が良さそうだ。

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