王都に着いたよ、気になる滞在先は。
王都に着いた。王都までの道のりは…特に何もなかったです。日中ではソーラとイルのお陰で凄い速度で走っていたから魔物なんか目にも止まらなかったし、夜も平穏だった。基本的にアリアさんが見張りの真ん中の2時間を担当してくれていたのも大きい。先になっても後になっても連続で4時間寝れる。あと1番大事なことなんだけどソーラとイルは…ソーラだけ俺に懐きました。ソーラは俺が撫でようとしたら自分から寄ってくるし、体を擦り付けてくる。だけどイルは基本的に触れることを許してくれない。同じセイバーホースなのに何故ここまで違うのかは謎だ。
「アリアちゃん、直接守衛の所に行けばいいのよ?。」
今御者としてソーラとイルの手綱を握っているシャーリーがアリアさんに尋ねる。因みにおれたちの前には王都を囲む外壁に向かってずらっと伸びる長い列がある。シャーリーはそれを無視しようと言うのだ。
「あぁ、それで良い。恐らくカードの確認はさせると思うから用意だけしといてくれ。」
アリアさんから了承の返事がある。俺達の乗った馬車は列の横を走り抜ける。凄い数の人を抜かしていることになる。普通の庶民だった俺としては心が痛む光景ではある。
「…止まってください。個人を確認できる物の提出をお願いします。それと一応中を改めさせていただきます。」
外壁にある建物の前に到着した俺たち。そこにも当然兵士が立っているのだが明らかに腰が低い。そこで俺はこの馬車にアリアさんの家の紋が刻まれていることを思い出す。そもそもこのルートは権力がないと使えないっぽいから兵士も下手に出るんだろう。シャーリーが3人分のカードを提出する。俺とアリアさんも外に出て様子を見る。
「…あ、アリア様。アリア様のご一行でしたか。…はい、中の確認も終了です。王都へは依頼でいらしたのですか?。」
アリアさんが外に出た途端兵士たちが色めき立つ。すげー、流石Aランク。
「いや、暫く王都に滞在しようと思っている。場所は実家にいるつもりだ。」
「かしこまりました。…それと…Dランクの冒険者が1名と…Bランクの冒険者が1名。…はい、確認しました。こちらお返しします。」
俺とシャーリーを見つめた兵士がカードを返却してくれる。俺にも言葉遣いが変わらないってことは実は兵士はいい人達なのかもしれない。俺が読んだ漫画では横柄な兵士が多かったけど、あの義理堅い王女様の一族が治めていると考えると教育が行き届いている可能性もある。
「それでは門を開きます。どうぞお通りください。」
外壁の一部が開く。どうやら一般の門と違いここは普段は閉じているようだ。そのかわり小さいが。兎に角俺は初めて王都に足を踏み入れる。
「…すげぇ、…きちんと整理されてる。…それに…あのでかいの何?。」
門を潜ると綺麗に区画整理された街並みが目に入る。そしてどうやら中心に向かって大きな建物が増えているようだ。その中でも一際大きな建物が目に入る。勿論何かの想像はついている。だけど一応確認だ。
「あれがハートラルクの王城だ。クラヒトがあったローゼリア様もあそこにおられる。」
はい、予想が的中しました。マジで君主制の王族の威厳凄いな。白亜の王城がそこにはあった。全貌を見ることは出来ないが荘厳さだけはわかる。
「もしクラヒトがAランクに成れたら1年に一回あの城に行くことになるのよ。Aランクは貴族と同等の扱いになるのよ。」
俺が城を見て呆けているとシャーリーがそう伝えてくる。Aランクっていうのは貴族に匹敵するぐらい大事な存在ってことか。改めて目指すものの難易度にぶち当たるな。でも日本にいた頃なら挑むことすら出来なかったはずだ。難易度の高いことに挑むのに楽しみを覚えている。
「2人とも、王都の中では馬車の外を歩いてもらう。まぁ街の中を見たいだろうから丁度良いかもしれないがな。」
俺とシャーリーにアリアさんが言う。流石に道も広いとはいえあの速度で走るのは危ないから反対などしない。歩いて王都の中を歩いていくがまず人が多い。それに色々な種類の店もある。コーラルも結構栄えていると思っていたけどそれ以上だ。武器屋も剣、槍、盾等専門に分かれている。服飾も細かくブランドが分かれているようだ。でも日本でも俺は服装にこだわりなんてなかったからなぁ。食べ物は美味しそうだ。なんて考えていると街並みが変わった。先程までの喧騒がなくなり静謐な雰囲気の家並みが並ぶ区域に来た。一つ一つの家が嘘みたいに大きい。豪邸すぎる。
「この辺りから貴族街になる。といっても冒険者で稼げば買えないことはないがな。」
「こんな所に家を買っても買い物が不便なのよ。」
「いや、多分この辺に住む人は買い物なんてそうそう自分で行かないんじゃない?。食品とか配達してもらうだろ。それか使用人が買いに行くか。」
シャーリーが明らかに庶民的な発言をしたので俺の予想を話す。あくまで勝手なイメージだけど。
「大体クラヒトの想像通りだな。欲しい物を伝えると商会が持ってきてくれる。その方が双方にとって手間がないからな。…着いたぞ、これが私たちが滞在する…我が家だ。」
ずっと頭の中で懸念だった。滞在先も世話してくれると言ってた。だけど一度も話題に上がらなかった。シャーリーもわかっていたんだ。アリアさんの家に滞在することを。だって特に驚いて…る。
「…お、思っていたより立派なのよ。流石伯爵家の中でも一つ抜けていると言われるだけあるのよ。」
どうやらサクスベルク邸の大きさに驚いていたようだ。勿論俺だってびっくりしてる。なんなら小便をちびりそうだ。噴水のある広い前庭。その奥にはお洒落な洋館がそびえている。
「自分の家だと思って寛いでくれ。」
アリアさん、ごめん。それは無理だ。