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旅立ちを決意する。

(コーラルにいるべきか、…王都に行くべきか。…人見知りの俺としてもこの街には結構馴染んだと思う。ギルドの冒険者たちとも打ち解けてきている。また一から人脈を築くのは結構めんどくさい。それにコーラルにいてもランクを上げることが出来ない訳じゃない。ゆっくりと力をつけていくのも…悪くないんじゃないのか?。)

 アリアさんと別れた俺は金の成る木の自室で考え事をしていた。今の暮らしに不満はない。毎日お金は稼げているし蓄えもある。毎週銀貨50枚を蓄える事が出来る。日本円で五万円だ。月に20万になるから家を買うのも近いと思う。でも…ここで家を買ったら俺は安定を求めて王都へは行かなくなるだろう。


(…普通に暮らすならそれで良いんだろうな。寧ろ大分成功者だろう。…だけど俺は2度目の人生だ。前の人生では…人と余り関わらず無難に過ごしていた。彼女もいなかった。同じ人生でいいのか?。)

 記憶を持ったまま転移するっていう奇跡の結果今の俺がいる。なら…前の人生では出来なかったことをすべきなんじゃないのか。…今の俺がやりたいこと…。


(恥ずかしながら…アリアさんと付き合いたいんだよな。性欲丸出しで本当に恥ずかしいな。…童貞のまま死んだ時後悔したもんな。その為に俺は…)

 アリアさんに相応しい男になるまで俺からは告白しない。せめて対等に見てもらえないと格好がつかない。対等となると…Aランクは必須になる。なら…


「王都に行こう。王都に行って俺は強くなる。しかも王都にもアリアさんはついてきてくれるらしい。そこで更に親密度をあげる。そして…振られてもいいから告白する。」

 口に出すことで決意が固まるのを感じる。心の中で決めただけなら幾らでも自分に誤魔化しが効くからだ。


(でもそうなると…シャーリーの事が気掛かりだ。このコーラルで1番仲良くなったと思っている。…王都までどれくらいの距離があるのか分からないけど…寂しいな。)

 シャーリーにはアリアさんとは違う方向の親愛を抱いている。俺が軽口を叩けるのもシャーリーだけだ。前の人生ではいなかったけど女友達ってこんな感じなんだろうなぁ。


「…でもローゼリア様は大体10日ぐらいで王都からコーラルまで来たから…会おうと思えば会えるか。…良し、決めた。俺は王都に行く。王都に行って一流の冒険者になってやる。」

 そう決意した俺は旅立ちの準備を始める。これまでずっと滞在していたここ、金の成る木の店主にあと少しで王都に行くことを伝えると残念がられた。どうやら毎日きちんと宿泊代を払うのは冒険者では珍しいらしい。その後数時間前に別れたアリアさんを探し王都に行くことを決めた事を伝えた。アリアさんは俺の決断を尊重してくれ、任せろと言ってくれた。とても頼りになる。だけどいつか俺が頼られるようになりたい。モリアさんとミリアちゃんにもこの街を離れることを告げる。ミリアちゃんの涙には戸惑ったけど強くなって帰ってくると伝えたら笑顔を見せてくれた。そして最後に…シャーリーも元へとやってきた。


「…シャーリー、話がある。」

「クラヒト、話があるのよ。」

 顔を合わせた瞬間切り出したのだが全く同じタイミングでシャーリーも俺に話しかけていた。そのせいで2人の間に気まづい沈黙が流れる。お互いに視線を交換し、俺から話をすることになった。


「…俺は王都に行こうと思っている。王都に行って強くなりたい。…だから…」


「私もついていくのよ。」

 暫く会えない。そう言おうとした俺の言葉を遮るようにシャーリーが言う。俺は初めその言葉の意味が分からなかった。


「…え、……あぁ、王都に旅行でもいくの?。なら行きは一緒に行けるね。でも…」


「違うのよ。私も王都に滞在するのよ。」

 俺の推理の途中でまたしてもシャーリーが被せてくる。じゃあ転職するのか?…でもケレンさんに恩があるって言ってたような。


「…暫くギルドの受付は休職するのよ。あんたが一人前になるまで私が一緒にいてあげるのよ。」

 俺の頭の中の言葉さえも否定するようにシャーリーが告げた内容は俺にとって思ってみない内容で…一番嬉しい内容だった。シャーリーの言葉の内容を理解するまでシャーリーの顔を見つめていたがその顔は真っ赤に染まっていた。


「…本当に…?…本当にシャーリーが来てくれるの!。…やったぁぁぁぁぁ‼︎。」

 人目も憚らず叫び声を上げる俺。だって考えてみて欲しい。転校になると思っていたら1番の親友が同じ転校先に行くことになる状況を。それまであった初めての土地への不安が一気に消え去る。


「ちょ、クラヒト、大きい声を出すのをやめるのよ!恥ずかしいのよ。…」

 シャーリーは照れたように俺を諫める。だが俺は止まらない!。…はい、腹にグーパンチを叩き込まれて強制的に静かにさせられました。


「…いつ王都に向かうか決めたのよ?。」


「うん、3日後に出ようと思ってる。」

 未だ衝撃が残る腹部を押さえながらそう答える。


「分かったのよ。王都での滞在先は決まっているのよ?。王都はコーラルよりも物価が高いのよ。」


「いや、アリアさんが任せろって言ってたから何も決めてない。」


「アリアちゃんも行くのよ?。…なら…多分…」

 アリアさんが一緒に行くことを告げるとシャーリーが何やらぶつぶつ言い出した。


「…アリアちゃんが一緒なら宿の心配はないのよ。安心なのよ。」

 シャーリーがそう言うが何故か少しだけ不機嫌な気がした。俺の気のせいだと信じたい。その後少し予定について話してギルドをあとにした。なんやかんや世話になったコーラルに思いを馳せながら散策した。途中であったアリアさんにシャーリーがついてきてくれることを伝えたら何故か動揺していた。…2人は仲が良いんじゃなかったのだろうか。

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