アリアさんの家に行くことになった、剣も貰いに行くよ。
不味いことになった。アリアさんと戦うことになってしまったんだ。…俺の命の刻限が迫っているかも知れない。なんとか話題を逸らしたい。
「…えーと、今日は新しい剣を取りに行かないといけないんだ。」
これは本当です。丁度剣を頼んでから1週間だし取りに行きたい。今はギルドで貸し出ししてる剣を使ってる。
「ん?ならその剣を引き取ってから戦うことにしよう。クラヒトも新しい剣の使い心地を試したいだろ?。」
ダメでした。そうだよね、普通に考えてそうなるよね。寧ろそうなるよね。
「俺としては戦うって言うより…教えてもらう方が…いいなぁ、なんて。」
「うむ、…そう言えばクラヒトはスキルによって戦うのだったな。…うーん、そのスキルは今使えるのか?。」
俺の情けない提案にアリアさんが頭を捻ってくれる。クソ雑魚ですいません。
「あーぁ、すいません。今日はもう使っちゃってるんだ。」
これは半分本当。造匠はもう使っちゃってる。大虎と神速は残ってるけど。
「あれ?クラヒト、今日はクリエイター(造匠)だけしか使ってないって言ってたのよ?。それならワイルドとソニックが残ってるのよ?。」
俺が何とか場を誤魔化しきれそうになった瞬間シャーリーが告げ口をしてくる。いや、事実なんだけど、事実なんだけど…今はダメだよ。
「…ん?…クラヒト、お前スキルについてシャーリーに話したのか?。」
おや?思っていた反応と少し違う。…あ!、アリアさんにはスキルの詳細まで話してない。
「うん、俺が依頼を効率的にこなすのにその方がいいかなぁと思ったから。」
どうせシャーリーにはアグナドラゴンの時に能力の事は話していたからついでに話した。
「…ふーーーん、…私には教えてくれてないのに…シャーリーには教えてるんだな。…お前と出会ったのは私の方が先なのに…。ふーーん、…」
俺の返事を聞いたアリアさんが目に見えて機嫌が悪くなる。…というよりいじけたようにつま先をグニグニやってる。なんだ?今この場で何が起こってる?。良く周りを確認しろ。…いじけて此方を睨んでいるアリアさん、何故か少し誇らしげなシャーリー、そしてこの場の異常さにざわつく冒険者達。…考えろ、この場を切り抜けるだけの修羅場を俺は…潜ってきてない…。ど、どうしよう。
「…あ、アリアさんに相談に乗って欲しいなぁ。俺のスキルについて一緒に考えて欲しいなぁ。」
テンパった俺の口を突いて出たのはよく分からない言葉だった。対女性の経験値の少なさが出てる。
「…ふ、ふん。…まぁ、どうしてもと言うなら付き合ってやっても良い。…」
…おっと?…アリアさんの態度が軟化したぞ。何故か分からないが怒りを鎮めることが出来そうだ。
「うん、どうしても。やっぱり経験があるアリアさんに話を聞いて欲しいんだ。」
「ぅ、ううんっ!…そこまで言うなら分かった。良く考えれば今日は疲れているからな。訓練はなしにしてクラヒトについて話を聞くとしよう。…場所はそうだな…私の拠点でどうだ?。」
アリアさんの機嫌が完全に治った。ついでに俺の命も助かった。万々歳である。なのに何故だろう、今度はシャーリーの機嫌が少しだけ、ほんの少しだけ悪くなった気がする。顔には出てない。でも…尻尾が垂れ下がってる。
「そ、それなら私も行くのよ。丁度仕事も終わったしこれから暇なのよ!。」
垂れ下がっていた尻尾が突然起き上がりそれと同時にシャーリーが同行を宣言する。
「え、そんな急に仕事終わってもいいの?。」
「大丈夫なのよ!。着替えてくるから待ってるのよ。」
いそいそとギルドの奥へと入っていくシャーリー。まるで反論を挟む余地がなかったな。
「…あの反応…まさかシャーリーも…?。…いや、まだ確定ではないか。」
アリアさんが顎に手を当て何か呟いている。残念ながら内容は聞き取れなかった。その後いつもよりかなり早く着替えたシャーリーが帰ってきた。
「お待たせなのよ。それじゃあ行くのよ。先ずはモリアさんの所に行くのよ?。」
「うん、そうだね。その後、アリアさんの拠点?家でいいのかな。に行くんだよね。」
「…あぁ、……待てよ、…シャーリー、クラヒト、2人はモリアさんの所に武具屋で待っててくれ。私は…少し用事を思い出した。いいか、必ず待ってるんだぞ。すぐに行くからな。」
これからの行程についてアリアさんに確認したんだけど途中で何か用事を思い出したそうだ。慌てて何処かへ行ってしまった。
「…何だったんだろ。疲れてるって言ってたのに。…まぁいいか。」
「そうなのよ。…私達はモリアさんの所に行くのよ。」
2人でモリアさんのところへと向かう。レアメタルを含んだ俺のための剣。…楽しみだなぁ。
「…慌てて帰った理由は女の情けで言わないでおいてやるのよ。」
ルンルン気分で歩いていたからシャーリーが何を言ったのかは分からなかった。
「…なんか言った?。」
「なんでもないのよ。」
なんでもないそうだ。