思ってより高額の報酬、あれも上がるみたいだ。
呪いの言葉を吐くシャーリーを解放した後シャーリーからギルドに来るように告げられる。
「それってアグナドラゴンについて?。」
「そうなのよ、色々と手続きがあるから早く来るのよ。…全く尻尾がボサボサになったのよ。」
シャーリーが尻尾の毛繕いをしながら言う。どうやらやり過ぎたようだ、しょんぼりしてしまっている。いくら報酬が貰えるか知らないけどご飯を奢ってあげよう。
「…怪我も治ったし…今からでもいいのか?。」
「勿論なのよ、冒険者ギルドは24時間対応なのよ。」
ギルドへ向かうことにした俺はシャーリーと並び道を行く。ミリアちゃんはモリアさんについているらしい。まぁどうせ武器を作って貰いに行くから近いうちに会えるだろう。
「早く座るのよ。何か飲むのよ?。」
ギルドに着くと早速カウンターへと向かい椅子に腰掛ける。
「え、飲み物なんて出るの?。今までそんなの出たことなかったけど。」
「わ、私の私物なのよ。喉が乾いてなかったら別に飲まなくていいのよ!。」
なんとシャーリーが私物のドリンクを出してくれるらしい。勿論、お願いした。心の距離が縮まっていることを感じる。出てきたのはオレンジジュースみたいなドリンクだった。
「おぉ!美味しい。なんか凝縮されてる感じがする。どこで売ってんの?買って帰るわ。」
「…私の手作りなのよ。…そんなに量を作ってる訳じゃないけど…毎日依頼終わりに一杯飲ませてあげてもいいのよ。」
手作り来たー!。20年の生で初めて母親以外の異性から手作りの食べ物を貰ったかもしれない。…いや、おばあちゃんとかから貰ってたわ。
(それはつまり毎日会いに来てってことだな。)
「…それはつまり毎日会いに来てってことだな。」
あ、心の中で思ってたことが口から出ちゃった。
「…な⁉︎ち、違うのよ!。勘違いしないで欲しいのよ!。あんたが美味しいって言うから…善意なのよ!。」
一気に赤面したシャーリーは否定の言葉は述べると奥に引っ込んで行ってしまう。
「…置いてけぼりになってしまった。どうしよう。」
取り敢えず出来ることは待つことかな。なんて思いながらジュースを飲んでいると紙が1枚に視界に滑り込んでくる。
「…?。…この紙いきなり出てきたな。…なんなんだ。」
『シャーリーを助けてくれてありがとう。モリアさんは彼女にとって大切な人だったんだ。だから君が行かなければ1人で行っていたかもしれない。そうなれば彼女は死んでいただろう。君は彼女の命を助けてくれた。本当に感謝している。
追伸 また少し強くなったようだね。早く僕の存在を認識出来る様になってくれよ。 ケレン』
紙にはシャーリーを助けたことの礼が書いてあった。差出人はこのギルドのマスター、ケレンさん。直接話しかけないのは俺に負担をかけたくないからだろう。基本的に良い人なんだよな。認識出来ないけど。
『これからもシャーリーと仲良くしてやって欲しい。』
新しい紙が滑り込んでくる。そこには短いながらもシャーリーを思う文章が書かれていた。
「当然だ。シャーリーに見捨てられても付き纏ってやるぜ。」
今から新しい人とか馴染める気がしないし。初対面の気まずさはマジやばいから。
「…あんたマスターと何を話してたのよ?。」
シャーリーが戻ってきた。シャーリーはケレンさんのことが見えるからちゃんと会話してるように見えるんだな。普通に見たら俺が空間に向かって話しているように見えるはずだ。
「別に大したことじゃない。」
「そう、…それじゃあサクサク用事を済ませるのよ。先ずは説明からしていくのよ。」
シャーリーは特に追及してこなかった。ケレンさんが絡んでいるからだろう。
「モリアさんの救出は正式に依頼として受けたことになるのよ。救援依頼だから報酬もいいのよ。これが金貨1枚なのよ。」
「そしてそれとは別にアグナドラゴンの討伐についてなのよ。これは本来BランクからAランクの依頼なのよ。成功報酬は金貨で30枚なのよ。」
金貨30枚!。すげーぇ、流石Bランクの依頼。アリアさんがAランクを3つこなせば一年暮らせるって言ってたけどBランクでも3つで1年いけるだろ。…いや、でも怪我もするし…治療費もかかる。武器代、防具代諸々で考えると…。いや、それでも凄いけど!。
「そしてなりよりあのアグナドラゴンが変異種だったから素材としての価値が高いのよ。ほぼ傷もないから標本にしたいと言われているのよ。」
確かに殆ど力比べをし続けて自分で死んだから、体に傷は少ないだろうな。
「まだ正確には分からないけど…金貨60枚は下らないのよ。取り敢えず討伐報酬の金貨30枚と救援依頼の報酬金貨1枚を振り込むからカードを出すのよ。」
シャーリーに言われるがままにカードを渡す。…すげぇ、金貨60枚って。…これが冒険者ドリームってやつか。…上手くいけば家も買えるじゃないか。いやいや、だめだめ、家を買ったらすっからかんになってしまう。我慢だ。
「はい、振り込み終わったのよ。」
シャーリーが返してきたのは白いカードだった。はて、俺のカードは青色だったはずだが。
「今回の件でクラヒトはDランクに上がったのよ。でもまだEランクの魔物とかを倒してないから焦り過ぎたからだめなのよ。あくまで特例なのよ!。」
なんとEランクになってから1日でDランクになってしまった。
「特にクラヒトの力は制限があるみたいだから着実に力をつけていくといいのよ。先ずはEランクの魔物を安定して狩れるようになるのよ!。」
「そうだな、ランクのことは驚いたけど…地力はまだまだだからな。気をつける。…でもこのままカードってさ、あれだよな。」
「…なんなのよ?。」
「引き落とし機能がついてるんだろ。取り敢えずの目標をこれにしてたから早くも叶った。」
「確かにDランクは冒険者の1つの目標なのよ。…一先ずクラヒトを一人前の冒険者と認めてあげるのよ。肩書きに見合った力をつけれるように頑張るのよ。」
俺はついに日本でいうクレジットカードを手に入れた。それも結構な額の預金と共に。少しずつこの世界での暮らしが豊かになってきた。