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怪我が治ったら、お約束のアレをしますよ。

 俺が分かったことは何か柔らかくて暖かいものが額に触れたこと。


「%<〒4+☆|###!。」

 落ち着け俺!。言語を失うな!。人から動物になってしまうぞ!。


「…お兄さんどうしたんです?。」


「クラヒト、頭がおかしくなったのよ?。」

 ほら見ろ、ケモ耳少女と幼女が困惑した表情を浮かべているじゃないか。


「…ふー、…もう大丈夫だ。なんか元気が出たよ、ありがとうミリアちゃん。」

 頭の中で円周率を思い浮かべて平静を取り戻す。3.14…までしかわかりませんでした。


「そうです?えへへ、なら良かったです。」

 俺が大丈夫だと伝えるとぱっと和かな笑顔を見せてくれるミリアちゃん。あぁ、癒されるなぁ。怪我もなおるんじゃないだろうか。ロリコンの気持ちが少しだけわかる気がする。


「…クラヒトは女の子なら誰でもいいのよ?。」

 鼻の下を伸ばした俺の顔を見たシャーリーが何か呟く。だけど俺には聞き取れなかった。


「シャーリー、何か言った?。」


「なんでもないのよ!。死ねばいいのよ。」

 めちゃくちゃ罵倒された。どうやら女の子の言葉は一言でも聞き逃すと万死に値するらしい。俺の知識がまた一つ増えた。その後シャーリーは不機嫌そうなままだったが治癒師が来たのでミリアちゃんを連れて帰ってしまった。なんでも俺とミリアちゃんを同室に置いておくのが危険らしい。甚だ不名誉だ。


「…これは、また…あんた凄いですね。体中がボロボロだ。でも安心してくださいよ。俺がバッチリ治してあげますからね!。」

 やって来た治癒師は日本で言うチャラ男だったが腕は確からしい。なんでも普段は女性限定らしいのだがシャーリーが頼んで引き受けたらしい。


「…おぉ、なんかムズムズする。…これが治ってる感覚なのか。」


「効いてきたっしょ!。…俺の女の人に触りたくてめっちゃ努力したんすよ。」

 ただのチャラ男だと思ったがちゃんと努力したチャラ男だったらしい。どんな方向にでも熱意を持って取り組めば大成する成功例みたいな奴だった。


「本当はシャーリーちゃんの依頼でもお断りなんすけど、あんただったから引き受けたんすよ。この街の恩人ですからね。それにアリアさんも助けてくれたっしょ。」


「知ってるのか。」


「当然すよ。俺もあの場にいましたから。俺ら治癒師がバテちゃってアリアさんに魔法を使えない時クラヒトさんが助けてくれたのを見てたっす。…正直悔しかったすっね。曲がりなりにも人を救うのが俺らの役目なのに。だから助けてくれたクラヒトさんには借りがあったっす。」

 そうか、あの場にいたのか。それなのに俺が取り乱しているのも知ってるはずなのにそれに触れてこないのは気を遣ってくれたんだろう。


「…思ってたよりしっかりしてんだな。…なぁ名前を聞いても良いか?。」

 今まで名前を聞いてなかったことに気づき尋ねる。この男とはこれからも仲良くやっていきたい。


「勿論っす。俺の名前はカイルっす。…よろしくお願いします。って言っても、もう借りは無しなんでクラヒトさんの治療はしないっすけどね。」

 俺の出した手を握りながら名乗ってくれるカイル。だが次の治療は断られてしまった。徹底してるな。ここまでくると尊敬する。


「…なーんて言ってる間にどうですか?体、痛いところまだあります?。」


「…治ってる。…もう痛くないな。」

 俺の体を支配していた痛みはいつの間にか消えていた。体中の包帯を外しても傷も残っていない。改めて魔法すげー。いや、カイルが凄いのか。治療も会話してる間に終わらせてくれたし。


「…跡も残って無さそうですし大丈夫そうですね。代金は、金貨1枚になります。現金にします?それともカード払いにします?。俺としてはカードが良いんすけど。」


「金貨1枚か、…結構するなぁ。俺がEランクの冒険者だって知ってるか?。1日に銀貨10枚の稼ぎだぞ。」

 まぁ、ローゼリア様から貰った金貨があるから払えるし、これだけ綺麗に治して貰ったから払うけど。


「いやいや、何言ってんすか。アグナドラゴンを倒したんすよね。なら特別報酬でがっぽがっぽでしょ。それに珍しい倒し方だったから素体がそのまま残ってるってギルドや商会が大騒ぎになってましたよ。…あ、まだ報酬と売却金を貰ってないんすね。それなら後払いでいいっすよ。また連絡してください。…んじゃ俺これから女の子と約束あるんで!。お大事にっす!。」

 カイルが部屋から立ち去る。んー、俺って結構お金貰えるのか?。確かにアグナドラゴンも倒したしな。半分はシャーリーに渡すとして…どれぐらいになるんだろ。金貨5枚ぐらいになるかな。そしたらいい武器も買える。もっといい暮らしも出来る。そもそも宿暮らしを終えたい。最終的には家を買う方がコスト的にもいいはず。


「ローゼリア様から貰った分も合わせて大体金貨105枚か。…家を買うにはどれぐらい必要か分からないからどうしようもないな。シャーリーに相談すればいいんだろうか。」

 暮らしてきて大体の貨幣価値もわかっている。俺の全財産は1000万円ぐらいだ。…やはりまだ早いか?。余裕をみて買わないといけないし…目標は金貨200枚を貯めることだな。その為にはDランクに上がって街道を行き来出来るようにならないと。そうすれば他の街にも行けるし、…待てよ、そうなったらそもそも家を買わない方が…。


「…考え事をしてるのよ?。どうせ無駄だからやめといた方がいいのよ。エネルギーの無駄遣いなのよ。」

 俺が真剣に持ち家について検討しているのにシャーリーが無駄だと言い捨てる。やれやれ、仕方ない、その身にお仕置きしてやる。


「口の聞き方に気をつけた方がいいぞ。俺の怪我はもう治ってるんだぞ?。それが何を意味するか分かっているのか?。」


「…な、なんなのよ?。やるのよ?。」

 俺の言葉に身構えるシャーリー。そんなシャーリーに近寄った俺は一気にその柔らかそうな尻尾に掴みかかる。


「ほぉ、中々良い毛並み。ふわふわとしていながらすっきりとしている。…んー、91点!。」


「な、何様なのよ!。人の尻尾に点数をつけるなんて舐めてるのよ!。…離すのよ!。」


「駄目だ、俺はまだこの尻尾を満喫していない。くんくん、太陽みたいな匂いがする。」


「嗅いでる⁉︎、私の尻尾を嗅いでるのよ⁉︎。乙女の尻尾を嗅ぐなんて許されないのよ!。」

 ジタバタ暴れるシャーリーを抱え込むようにして拘束する。本気で抵抗すれば多分俺はボコボコになってる筈なのでシャーリーも完全に嫌と言うわけではないと思う。その後俺は10分間シャーリーの尻尾をもふもふし続けた。


「…呪ってやるのよ…。」

 解放されたシャーリーはぐでぇーと体の力が抜けた状態で物騒なことを呟いていた。やり過ぎと反省するが後悔はない。

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