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ケモ耳触りたい、幼女からのおまじない inベッド

 目を覚ました時、俺はベッドに寝かされていた。体を起こそうとするが鈍い痛みに顔をしかめる。


「…っ…いつもみたいに白い空間じゃないのか。…って事はそんなに時間も経ってないってことになるのか?。」

 窓から見える景色、陽は登っている。俺が意識を失う時には殆ど陽は暮れていた。


「…っ、そうだ、ミリアちゃんの所へ行かないと。…約束したんだ、後1日だけ頑張れって。俺は…もう涙を見たくない。」

 俺は悲鳴を上げる体に鞭打って無理やりベッドから起き上がる。どうやら腕や腹、頭にもに包帯が巻かれているようだ。


「…まだ治療が完全に終わってないって事は…そんなに時間も経ってないって事だ、QED。」

 治癒魔法があるのに包帯が巻かれ更に血が滲んでいるのは夜中にこの街に帰ってきて、治療を受けられてないから。ならばまだ約束の1日には間に合う。QEDなんて似合わない発言で自分を茶化して痛みから気を紛らわせながら歩を進める。


「シャーリーにも礼を言わないといけない。あのサイズで俺を担ぐのは大変だったろうからな。…痛つつ…」

 ドアを開けようと手を伸ばすが痛みが襲う。想定外の痛みについ声が漏れる。


「…?クラヒト…!。…目が覚めたのよ…?。」

 ドアの外から声がかかる。独特の口調、間違いなくシャーリーだ。ドアが開きシャーリーが入ってくる。


「…あぁ、今目が覚めた。シャーリーがここまで運んでくれたんだろ?。ありがとう。」

 視界に入ったシャーリーに思わず抱きつきそうになるがなんとか堪える。もし今シャーリーの力で殴られれば瀕死は免れないからだ。


「と、当然なのよ。冒険者の命を守るのも受け付けの大事な仕事なのよ、…ってなんで立ってるのよ!。まだ治癒師に診て貰ってないから絶対安静なのよ!。」

 俺の姿を見たシャーリーが慌てて俺の前に立ち塞がる。そして鋭くベッドを指差す。


「それはいかない。俺は約束したんだ。ミリアちゃんに明日帰ると言った。だから…」


「そんなボロボロで格好つけてもダメなのよ。それにミリアちゃんもこの治療院にいるのよ。モリアさんのところに行ってるのよ。」

 シャーリーに強引かつ優しくベッドへと戻される。驚くべきことに全く抵抗出来ませんでした。それは俺が弱いからではなくミリアちゃんが近くにいると知れたからである!。そう、抵抗する意味がなかったからである!。…嘘です、すいません。


「…あぁ、モリアさんもちゃんと助かったのか。…良かった、やっぱ最後まで見れなかったから少し不安だったんだよな。…これでミリアちゃんの涙を見ないで済むなぁ。」

 ポーションを置いてきたとはいえ気がかりだったのだ。不安が解消され張り詰めていた最後の糸が切れたのかじわじわとした痛みが体に回り始める。


「…あ、マジ痛い。…シャーリー、俺の体ってどうなってる?。」


「痛くて当然なのよ。クラヒトの体は筋肉がブチ切れているのよ。なんとか治癒魔法で繋がってはいるけど全然完治には程遠いのよ。…限界を超えた力はその身を痛めつけるのよ。…今度から使うのは…気をつけるのよ。」

 やはりあれだけの体格差を支えるのはかなり無理だったようだ。シャーリーのスキルで体自体の損壊はあの時のままのはずなのにそんなにボロボロだったとは。


「…全く無茶苦茶なのよ。…Eランクのくせに…竜種を殺すなんて…。無茶苦茶なのよ…。…」

 シャーリーの目尻に光るものがある。


「俺の為に泣いてくれるのか?。」


「な、泣いてなんかないのよ!。この部屋があんたのせいで臭いから防衛本能で涙が出ただけなのよ!。勘違いしないで欲しいのよ!。」

 それを指摘すると烈火の如く怒りを露わにするシャーリー。露わにするが俺の体には一切触れない。そんな何気ないことにも距離が縮まったことを感じる。…今ならいけるんじゃないか?、俺の本能がそう告げていた。


「…シャーリー、1つ頼みがあるんだ。聞いてくれるか?。」


「…な、なんなのよ。いきなり…。…と、取り敢えず聞くだけ聞いてあげるから言ってみるといいのよ。…でも勘違いしないで欲しいのよ?聞いても頼みを了承するとは言ってないのよ?。」

 シャーリーも満更でもない様子。いけ、俺!今しかないぞ!。


「その耳をワシワシさせてくれ!。」


「…は?……え、なんて言ったのよ?。」


「その耳をワシワシさせてくれ!。」


「き、聞き間違いじゃないのよ…。ダメなのよ!、私の耳を撫でていいのはマスターとモリアさんだけなのよ!。アリアちゃんにだって耳は許してないのよ!。」

 駄目だった。…くそぉ、…しかしアリアさんでも駄目なら仕方ない気がする。


「…でも今日だけ…尻尾だけなら触らせてあげても良いのよ?。」

 俺がガックリと肩を落としたのを見たシャーリーは視線を上下に彷徨わせながら尻尾を俺の手の近くに持ってくる。


「マジで⁉︎、あ、でも待って。今は触れないわ。手のひらの包帯でグルグルだった。」

 いざシャーリーの尻尾に手を伸ばそうと思うと包帯が巻かれた手が視界に入る。そういえば穴が開いてたんだった。多分もう塞がってるけど…この状態じゃしっかりと感触を感じることが出来ない。


「…きょ、今日中なら別に良いのよ。もう暫くしたら治癒師さんが来てくれるから直してもらうといいのよ。」


「…うん、そうだな。楽しみにしてる。」

 どうやって尻尾をワシワシしてやろうか。もう、俺のワシワシなしじゃ生きていけない体にしてやるぜ!。なんてしょうもないこと考えているとドアの前に人影が現れる。


『コンコン』


「お兄さんいますか?。」

 そしてノックの音と共に聞きたかった声、開いたドアから見たかった笑顔が覗く。


「あ、ミリアちゃん。」


「お兄さん!、おじちゃんを助けてくれてありがとうございます!。」


「あ、待つのよ、ミリア。クラヒトも怪我をしてるから飛び込んじゃダメなのよ。」

 俺に飛び込もうしたミリアちゃんをシャーリーが受け止める。良かった、いくら幼女とはいえ今の俺の体に飛び込まれると死を覚悟しなければならなかっただろう。


「…ごめんなさい。私、お兄さんにお礼がしたかったの。」

 落ち込むミリアちゃん。こらこら俺はそんな顔を見るために体を張った訳じゃない。


「なら、俺は元気なミリアちゃんが見たいな。」


「分かりました!。…お兄さん、怪我痛いですか?。」


「…ちょっとだけね。」


「ならミリアがおまじないしてあげます。」

 ミリアちゃんの質問に虚勢を張る俺。そんな俺にミリアちゃんがおまじないをかけてくれるらしい。日本ならそんなの迷信だけどこの世界ではあながちバカに出来ない可能性もある。俺は喜んでお願いする。


「…早く元気になーれ!。…チュ!。」

 俺が何か動きを取る間も無くミリアちゃんの口づけが俺の額に触れたのだった。




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