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武器を作りに行っただけなのに、幼女の涙はプライスレス

今日の投稿分で連続更新は終わりです。これからはいつも通り日曜日の午前0時更新に戻ります。

「…ここか。良しちゃんと外観は見えてるな。」

 シャーリーに教えてもらった武具屋に到着した俺。少々寂れているが普通の感じだった。こんな所にそんな腕の良い職人がいるんだろうか。


「あれかな、コミュ障なのかな。」

 もしそうだったらすごく仲良く出来そうだ。何はともあれシャーリーから優しいと聞きてるし入ることにする。


「すいませーん。…」


「……………」

 返事がない、不在なのだろうか。いやでも入口は開いてたし…。


「すいませーん!。」


「……………」

 返事がない、ただただ不在のようだ。困ったことになった。色々と新調しようと思っていたのに。…取り敢えず狩りに行こう。いつもより少しだけ外に行ってどれぐらいやれるか試してみよう。


「あの、お兄さん誰ですか。」

 そう決めて店をあとにしようと背を向けた俺にか細い声がかけられる。


「…え、人いたの?。」

 振り向くと小さな女の子がいた。白のシンプルなワンピースを着た可愛い幼女だ。ワンピースの裾をギュッと握ってこちらを見つめてくる。どうやら俺に話しかけるのもかなり緊張しているみたいだ。


「…いま、おじちゃんはいません。3日ぐらい帰って来てないんです。」

 その女の子が呟くように話す。その瞳には薄っすらと涙が浮かんでいる。この状況、まさか…


「今までこんなことあった?。それとご飯はどうしてるの?。」


「これまでおじちゃんは毎日ちゃんと帰って来てくれてました。なのに、なのに…!。私、捨てられちゃったのかな。」

 俺の質問に答えながら女の子は泣き崩れる。それとも同時に響くお腹が鳴る音。これだけで事態の深刻さは明白だった。


「ちょっと待ってて。すぐに…えーと5分で帰ってくる!。」

 俺は女の子にそう告げて慌てて外に駆け出す。逃げたわけじゃない。何か食べ物を買わないと。





「…はぁ、はぁ、…んぐっ、…これ食べてよ。お腹空いてるよね。」

 俺は露店で買ってきた食べ物を女の子に渡す。急いで帰ってきたからビクッとしていた女の子だが食べ物が出す湯気と匂いに目が釘付けになる。…やっぱり食べてなかったのか。


「…はぐはぐ…はぐはぐ…ありがとうございます。」

 女の子は俺から渡された食べ物を大きな口を開けて頬張る。その表情には少し笑みが浮かんでいた。


「えーと、それじゃあ詳しく話を聞いても良いかな。この店の人は…3日前にどこに行ったの?。」

 おれが買ってきた食べ物を粗方食べ終わって一息ついた女の子に詳しい事情を聞く。シャーリーから聞いた印象では無責任にこんな女の子を放ったらかしにするような人じゃないと思う。


「…おじちゃんはいつも街の外に魔物の素材を集めに行くんです。その日もいつものように出かけて行きました。でも…帰ってこなくて。…心配だったけどおじちゃんに留守番をお願いされてたから。…」


「…街の外か。…」

 頭の中に嫌な想像がよぎる。これは最悪の場合も想定しないといけないかも。


「そのおじちゃんが何の素材を集めに行ってるかって知ってる?。」


「ううん、…分かんない。…おじちゃん、怪我しちゃったのかなぁ。…ぐすっ、…」

 女の子の泣きスイッチがまた入りそうになる。俺の発言のせいで不安になったようだ。


「だ、だ、大丈夫!。俺がそのおじちゃんを探して来てあげるよ。だから…えーとあと1日だけ頑張れるかな。」


「…今日1日だけ…?。…うん、ミリア頑張る。…」

 俺の言葉にまだ不安そうな女の子。ミリアって名前らしい。そりゃそうだよな、いきなり現れた俺だけど1人よりはマシだっただろうし。


「…ミリアちゃん、手を出してごらん。それからこうやって小指を出して。」


「…こう?。」


「そう、そしたら俺の小指と絡めて。指切りげんまん、嘘ついたら針千本呑ーます。っと。」


「なにこれ。」


「これは俺が知っている中で1番の約束の方法なんだ。俺は絶対にミリアちゃんのところにおじちゃんを連れて帰ってくる。もし出来なかったら針千本飲み込むよ。」


「…ありがとう…。待ってるから、お兄さんも気をつけてね。」

 おれと約束した小指を見つめながらミリアちゃんが微笑む。良かった、笑顔を見れて。その笑顔に力を貰った俺は自分のなすべきことをする為にその場を去った。





「…シャーリー‼︎。大変なんだ!力を貸してくれ!。」


「な、なんなのよ!私はもう仕事が終わっているのよ!。」

 冒険者ギルドに駆け込んだ俺はシャーリーの姿を見つけ駆け寄る。シャーリーは帰宅前だったようで帰り支度をしていた。突然現れた俺に怒りの表情も向ける。だが今そんなことを気にしている場合じゃない。


「シャーリーの紹介してくれた武具屋のおっさんが3日前から行方不明なんだ。」


「…!、…ここに座るのよ!。」

 俺の言葉を聞きすぐにシャーリーの表情が変わる。即座に席に座り事情を説明する。


「…困ったことになったのよ。今の時間すぐに集まる冒険者はいないのよ。モリアさんは普段Dランクの魔物を狩っているのよ。モリアさんが不覚をとるとすればそれ以上の何かに襲われたとしか考えられないのよ。」


「マジか、…でも俺はミリアちゃんと約束してるんだ!。なんとかならないか。」


「…仕方ないのよ、私が一緒に行くのよ。すぐに装備をとりに行くからポーションだけ集めておくのよ!。」

 悩んでいたシャーリーだが他に選択肢がないと分かったのか自分が出ることにしたようだ。でもこんな小さな子で大丈夫かと思ったがアリアさんの言葉を思い出す。シャーリーはBランクぐらいには戦えると言っていた。俺はシャーリーの言いつけ通りポーションを買い溜める。ポーションは飲めば少しだけ体力が回復する液体だ。今まで飲んだことないけどこれからは使うことになるだろう。今日までFだったのに一気にDランクかそれ以上の魔物と戦わないといけないんだから。


「用意出来たのよ!。3日も経ってるならギリギリなのよ!。雑魚は無視して行くのよ!。」

 出てきたシャーリーは胸にプレート、腕と足にも金属の板を装備していた。


「…思ったよりゴツいな。」


「なにをごちゃごちゃ言ってるのよ!。全速力で行くから置いていかれないようにするのよ!。」

 そんな確実に俺より重装備のシャーリーは俺を置いて駆け出す。速い!、マジで置いていかれないようにしないと!。


「…待ってろよ、見知らぬおっさん。あんたの帰りを待ってる幼女がいるんだぞ!。」

 俺は見知らぬおっさんの安全を願いながら走り出した。

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