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魔物を狩ったよ、剣の性能のおかげっぽいけど

「クラヒト、お前武器を持ってないだろ。今日はこれを貸してやるから明日にでも鍛冶屋に行くと良い。」

 取り敢えずの今日の目標を決めシャーリーの叱責を背にギルドをでた俺にアリアさんが声をかけてくる。それと同時に腰につけていた剣を差し出してくる。アリアさんは腰の左右に剣を下げている。煌びやかな装飾を施された細身の剣。それと黒い鞘に収まった無骨な剣。その内の右の剣を手渡される。


「この剣は特別な能力こそないが斬れ味に特化している。剣自体の重さだけでスライムぐらいなら斬れるはずだ。」

 アリアさんに渡された剣のずしりとした重さを感じる。


「…これが剣の重さか。うーん、初めてだけど…これなら振れるかな。…明日は確実に筋肉痛だろうけど。」

 日本でほのぼの暮らしてきた平凡男性に剣を振る習慣はない。


「ゴードン殿からお前が剣の一振りで魔物の大群を両断したと聞いたぞ。その時に剣を振っているから初めてじゃないだろ。」


「いや、あの時は無心だったし。それに…多分スキルで出てきた剣だから重さも無かった気がする。」

 それに剣っていうより刀っぽかった。この世界には刀はないのかな。


「そうか、…お前がそれだけ必死に私たちを助けようとしてくれた証拠として嬉しく思っておくよ。」

 アリアさんはだいぶ好意的に受け取ってくれたようだ。俺が目を覚ましてからアリアさんが俺に甘すぎる気がする。


「それではついでに剣の振り方も教えてやる。さぁ、街の外へと出るぞ。」

 アリアさんが先導して街の外へと向かう。おぉ、ついに街の外へと出るのか。魔族と戦ったのも街の中だったしそれ以前は監視されてたしで初の街外だ。日本とかだったら田舎に行かない限り街の隣も即街だったけどこの世界は違うだろう。おら、ワクワクすっぞ!。てなことを考えてると石で出来たような囲いが目につく。成る程、このタイプか。そして門のような所に着くと兵士が立っていた。…怖い。やはり転移早々兵士に連行された身としては引き締まるな。


「…冒険者のアリアだ。討伐の依頼達成の為外に出る。こっちは私の友のクラヒトだ。彼も冒険者だ。」

 アリアさんが兵士に話しかける。外出するのも申告しないといけないのか。まぁアリアさんは強いから戦力としてどこに居るか分からないといけないんだろう。


「はっ!、アリア様、クラヒト様ですね!。…この前の魔族の襲撃の際、この街を守ってくださってありがとうございます!。お陰で被害は最小限に留めることが出来ました。」

 アリアさんと俺の顔を確認した兵士が大声で礼を言いながら頭を下げる。その声に引き寄せられて寄ってきた他の兵士達も礼を言いながら握手を求めてくる。なんか…良いことしたって実感出来る。心が暖かくなる。そしてそのまま門の外に出る。街を出た途端荒廃している…なんてことはなく普通に田舎の道みたいな感じがずっと続いていた。


「なんか普通だな。…でもこの壁だけで魔物を防げるのか…。常に見張ってる人がいるんですか?。」


「それも知らないのか。本当に世間を知らないんだな。街を囲っている外壁には魔物が忌避する魔力が練り込まれているんだ。だから普通の魔物は近寄って来ない。」

 成る程ね。それならあの兵士の数も納得できる。そんな便利な物があるとは。でもこの前のは…あぁ、魔族がいたからか。あいつが街の中で召喚していたんだな。魔族ってなんなんだ?。


「…お、出たぞ、スライムだ。どうやら単独のようだな。クラヒト、あれを倒してみろ。飛び込んでくるが速度自体は大したことない。体から飛ばす液体にだけ気を付ければいい。」

 魔族について考えているとアリアさんが何かを見つけて指を差す。スライムがいたらしい。スライムといえばモンスターの定番で可愛らしいフォルムのあいつだが。


「…なんか可愛くないな。思ったよりドロドロしてる。」

 もし可愛かったら心が痛むかもしれないと思ったがそんなことはなかった。赤色のそいつはドロドロと形を変えながら近づいてくる。アリアさんの忠告に従い慎重に近づき剣を振り下ろす。速度自体も遅かったので容易に剣が当たる。グジュっとした触感の後スライムは消え小さな石が転がっていた。


「これが魔石か。普通の石と見分けが付かないかもしれない。」

 魔石は少しだけ青いがよく見ないと見分けが付かない。倒すたびに回収しないと見落とすことになるだろう。


「クラヒト、どうだ?初めて魔石を拾った感想は?。どんな冒険者でも誰もが通る道をお前は今通ったんだ。」


「グジュってして気持ち悪かった。それ以外の感想はない。達成感もない。」


「ふふっ、まぁそうだよな。スライム一匹だからな。ならばあれを狩るか?。」

 正直な感想を言うとアリアさんは笑いながら頷く。どうやら感想としては間違ってなかったみたいだ。どう考えても達成感がなさすぎる。流石銅貨1枚。


「ゴブリンには色々な種類があるが、あれは1番弱い奴だ。武器も木の棒だけだしな。問題なく狩れるだろう。」

 次にアリアさんが示した先には緑色の小さい物体がいた。


「おぉ、こいつはゴブリンっぽい。」

 木の棒を振り上げながら接近してくるそいつは多分腰より低いぐらいの身長しかない。でも口には鋭利な歯があるし動きはスライムより断然速い。気を引き締め正面に立ち塞がる。


「…ごくっ、…落ち着け。あんな木の棒に負けるわけないんだ。…いくぞ!。…って…うわっ!。」

 意を決してゴブリンに飛びかかろうとした時なんと視界の端からもう二匹のゴブリンが現れた。どうやら正面の奴は囮だったようだ。


「…危なっ…!。…でも…リーチの差があるから!。」

 木の棒を振り下ろして攻撃してきた左右のやつをその場で回転しながら斬り倒す。傷は浅そうだが怯ませることに成功する。


「…今のうちに!。先ずは一匹!。」

 そして正面のゴブリンを縦に両断する。木の棒を頭の上で横に構えて防御しようとしていたみたいだが剣の斬れ味が良いからか難なく真っ二つにする。


『グゲッ‼︎』

 仲間がやられたことに怒ったのか二匹が突っ込んで来る。挟まれる形になってしまった。


「…アリアさんごめん!。」

 俺はアリアさんに詫びを入れて剣を投げつける。飛んで行った剣はゴブリンの頭に突き刺さり倒れる。これで後は一匹。ダッシュで突き刺した剣を拾い残りの一匹を迎撃する。飛び込んできていた体に突き刺すと動かないかなった。


「…はぁ、はぁ、…ふぅ、良かったぁ、何とか倒せた。」

 戦いが終わって安堵の息を吐く。落ち着きを取り戻すとそんなに焦る必要はなかったと分かる。でも仕方ないじゃない。


「すまんな、クラヒト。お前がどれくらい戦えるか見せて貰うために黙っていた。咄嗟の時にセンスが見えるものだからな。」

 俺が魔石を拾っているとアリアさんが走ってくる。やっぱりそうか。アリアさんが見落とすのはおかしいと思っていた。


「ごめんね、アリアさん。剣借り物なのに投げちゃって。」


「別に構わない。罠にかかって三体に囲まれたのは良くなかったがその突破はよかった。咄嗟に剣を投げて道を作るとは中々悪くない。どうやらクラヒトは機転が効くようだな。」


「今の感じだと落ち着いてやればすぐにEランクの目安ぐらいには稼げるようになるだろう。」

 アリアさんのお墨付きを貰う。スライムとゴブリン限定だけど。だけどこの世界で初めてお金を稼いだ。生活の基盤ができた事は良い事だ。日が暮れるまで狩りを続けてシャーリーをびっくりさせてやる。

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