魔法の使い方
魔法についての本はかなり沢山あった。俺はその中で1番ボロい本を取りとる。1番ボロボロなのは1番良く使われているから。つまり初心者用かつわかりやすい。これは日本にいた時大学の図書館で掴んだ秘法である。
(…魔法か、使えたら便利なんだけどな。俺の能力、全然分からないけど…多分…)
「…めっちゃピーキーだよな。尖り過ぎた能力は凡庸性がないから。」
今わかってるだけで回復、武器錬成、高速移動の3つ。一見すると応用が効きそうだけど…怪しいと思っている。実際神速は効果時間があるしその後ヤバイぐらい心臓が痛くなる。
「なんか使えそうな魔法が有れば良いが…」
元いた席に着き本を開く。"魔法とは森羅万象を覗くことである“。本の1ページ目にはそんな文言が書いてあった。意味は分からない。
『魔法には属性魔法、干渉魔法、特異魔法がある。属性魔法は自らの魔力を何れかの属性に変える。主な属性は炎、水、風、土、の4つで更に派生も存在する。干渉魔法は物事に干渉する魔法全般をさし、硬化や軟化、鈍化、吸音、治癒などがありその種類は多岐に渡る。特異魔法は希少でスキルと遜色ないとされる。判明している中で最も有名な物は転移魔法で使用できれば国の重要戦力となる。』
これこれ、俺が探していたのはこれだよ。知りたいことが全部書いてある。ふむふむ、…できれば属性魔法を使えるようになりたいな。水とかあったら便利そうだし。干渉魔法は…別に良いかな。その習得に充てる時間を属性に充てたい。特異魔法は多分使えないからどうでも良い。兎に角今は属性魔法を使えるようになりたい。
「…習得方法は書いてないのか。…次のページを…」
次のページには魔法の使い方が書いてあった。なんて便利な本なんだ。この本を選んだ俺を褒めてあげたい。
『魔法の習得方法(属性魔法)
前提として魔力を認識する必要がある。まだ認識出来ていない者は次のページに方法を明記しているので参考にされたし。このページでは魔法、特に属性魔法について書いていく。属性魔法の習得は基本の四属性に関しては誰もが習得可能ですある。ただし向き不向きがあるので1つまたは2つに絞る方が良いと思う。習得方法は体に魔力を巡らした状態で習得したい属性に触れることである。炎なら火に、水なら水に、触れて理解出来れば習得出来る。この際に適正が高ければ高位の魔法が使え、なければ低位の魔法しか使えない。または稀にだがその属性の魔法攻撃を生身で受けて開花することもある。この方法の場合自分の適正に関係なく撃たれた魔法のレベルまで網羅できる。ただしこれは危険が伴うので推奨しない。』
『魔力の認識方法
魔力の認識は自分の他に魔法が使える者がいれば容易である。体に魔力を流してもらうことで魔力を流れを感じることが出来る。その流れをしっかりと自分だけで感じることが出来ればそれで完了である。』
…長い!、…長いけど、内容はわかる。つまりまず俺は魔力の流れを理解しないといけない。それから水に触れて向いてたら使えるってことだな。そんで向いてないけど強い魔法が使いたい時は一か八かその強い魔法を生身で受ける…ってこと。…でも強い魔法なんて生身で受けたら死ぬだろ。この方法考えた奴、馬鹿なんだろうか。
「…なんとか飲み水を出せるくらいには使える…はずだよな、この書き方だと。」
誰でも習得可能って書いてあるし。アリアさんに魔力を流してもらおう。
「アリアさん、まだその本読みます?。」
「…ん?…あ、クラヒトも読みたいか?。…ううん!仕方ないな私の隣で一緒に読むとしよう。さぁこっちに来い。」
用が済んだから出ようと思ってアリアさんに声をかけたけどなんか勘違いしたようだ。隣の椅子を寄せてポンポン叩いている。
「いや、そうじゃなくて俺が調べたいことは全部終わったんだけど。」
「…な、なんだ、そうだったのか。」
何故かがっかりしたような顔になるアリアさん。何かあったのだろうか。
「私ももう大丈夫だ。主な竜種については頭に入れた。これでいつ竜種にあっても対策が取れる。」
そんなに竜に会いたいんだろうか。俺なら恐怖で気絶するまである。
「これで俺の今日の予定は……あ、そういえば…」
「…どうしたクラヒト?。」
「俺が今いる宿の料金って誰が払ってるか知ってる?。」
初めはゴードンが工面するって言ってたけどずっとそうとは限らない。既に1ヶ月ぐらい経っているわけだが…。
「あぁ、それはギルドが払っている。なんと言ってもお前は街の救世主だからな。動けない間の滞在費くらいは払うそうだ。」
「…俺、もう動けるんだけど。」
「なら明日の分から自費だな。金の成る木は一泊銀貨5枚だが心配しなくてもお前にはローゼリア様からの金があるだろう。」
「そうだけど…なんか不安になってきた。」
銀貨5枚ということは…金貨1枚で20日分になるだろ。つまり俺の全財産を宿泊費に充てると2000日は滞在出来るわけだ。だが食費など諸々がかかると考えると…不安になる。これは俺が労働大国日本生まれだからだろう。家賃があるのに働かないのは落ち着かない気がする。自分の金が減るなら足していかないといけない。
「なら、明日からギルドで仕事を受ければいい。暫く私が冒険者の指南をすると約束したしな。」
「それはありがたい。…ついでに魔力の認識の手伝いをして欲しいんだけど。」
「勿論、構わないぞ。それは伝統的に先輩が後輩に施すものだからな。」
「良かった、…アリアさんがついていてくれるんなら安心だしめっちゃ頼もしい。よろしくお願いします。」
「た、頼もしいか。…そうか、そうか。まぁ大船に乗ったつもりでいるんだな。私が一人前の冒険者にしてやるからな!。」
何故か顔を赤くしたアリアさんが大声で宣言する。ありがたい宣言だがアリアさんは場所を失念しているようだ。この後職員さんに怒られました。