日本の技術の結晶の製作を依頼する
次回更新はお休みします。
「やぁやぁ、クラヒトちゃん。本当に来てくれるなんて嬉しいなぁ。」
屋敷の内見の2日後。俺はマーガレット様の研究室に来てきた。ローゼリア様にマーガレット様への伝言を頼んだのだが思っていた5倍早く返事が来て現在に至る。
「俺も男の子ですからね。こういう光景にはときめくものがありますよ。」
子供の頃はブロック遊び、学生になってからも工場見学などに行く時はテンションがあがった。だってなんかカッコいいじゃん。マーガレット様の研究室は王城の一画にあった。ただ明らかに隅の方にあり、とても王女様がいるとは思えない場所だったし、厳重に『この先マーガレット様研究室。……危険。』って書いてある看板が設置したあったけど。
「うんうん、分かってるなぁ〜、クラヒトちゃん。この何でもない物同士が組み合わさって意味を成す。その瞬間がたまらないのよね。」
マーガレット様が机の上の物を片付けながら俺にお茶を淹れてくれる。机の上にあった物は特に見ずにポイポイと収納しているけど大丈夫なんだろうか。
「それで?今日はどうしたの?。突然だったけど。」
マーガレット様の口調は咎めるようなものではなく純粋に疑問に思っているようだった。そりゃいきなり会いたいって言われたらこうなるか。
「実は先日とあるアイデアが思い浮かびまして。それが実現可能なのか相談しにしたんです。魔導具の事を相談するならマーガレット様かなと。」
「うんうん、まぁ、私は魔導具に関しては自分でも優秀だと思ってるよ。だからクラヒトちゃんの選択は正解だね。さぁさぁ、クラヒトちゃんが思い付いたアイデアとやらの事を私に話してよ。」
マーガレット様がウキウキして顔を近づけ来る。この人は自分の顔面偏差値の高さを理解していない感じがする。この前も普通に隣に座ってきていたし。
「…えーとですね、」
とは言っても気にしても仕方ない。いや、気にはなるけど心を無にして。ウォシュレットの事を説明する。使用感なんかは理解してもらえるとは思えない。あれは使わなければ理解できないのだから。だから取り敢えず構造とどういう動きをするのか。どんな所に重点を置くのかを説明する。
「…んー、トイレに設置だよね?。そして棒が伸びてきて、水を出す。その水の勢いを調整出来る様にと温度もかぁ。…うーーん、後付けだと独立して動力を持たないとダメだよね。だから結構コストがかかるかなぁ。構造自体はそこまで難しくはないね。使い方はよく分からないけど。」
「俺の考えが正しければ流行ると思うんです。それこそ後付けじゃなくて本体とセットで設置されるぐらいに。そうなれば動力の問題は解決出来ますよね。」
既に地球ではそうなっている。殆どのトイレに標準装備だ。
「うん、トイレには水洗の機構を維持する為の魔石が入っているし、その交換は簡単かつ安価になるようにしているけど。………分かった。クラヒトちゃんのアイデアだし、作ってみるよ!。」
「構造自体は簡単だからそんなに時間はかからずに作れるよ。具体的には…1時間ぐらい。」
「…え、早い。」
早過ぎない?。新しい屋敷に住むまでに出来れば良いかなぁと思っていたけど1時間って。なんなら今日中に完成するじゃん。
「私は今から製作に入るけど…クラヒトちゃんはどうする?。研究室の中で待ってても良いよ?。」
「それならここで待たせてもらいます。その方が確認とかしやすいので。」
俺がそう告げたのを確認するとマーガレット様は奥の部屋に向かっていった。どうやら本格的な工房は奥のスペースのようだ。
「さて…白雪。おいで、魔力をあげるよ。」
特にすることのないおれは白雪を呼んで魔力を食べさせる。白雪は日に日に大きくなっており、今では中型犬ぐらいになっている。そのサイズになってもまだ俺の膝や頭の上に乗ろうとするのでかなり辛い。
「お前も大きくなってきたからな。そろそろ抱えるのが無理なんだ。これからは親離れをして、立派な龍になるんだぞ。」
白雪は両脇を手を入れて顔の前に持ち上げながら言う。こっちの世界にきてかなり鍛えたけどそれでも腕はプルプルだ。
『………⁉︎。』
白雪はえ…⁉︎みたいな顔をしているが自分がどれだけ大きくなるのか理解していないのだろうか。このまま俺の頭に乗り続けるのはどう考えも無理なのだが。
「安心しろ。それでお前と俺の絆がなくなる訳じゃない。白雪は俺の相棒だからな。」
膝の上に下ろした白雪の背中を撫でる。まだ膝の上ならマシだな。今から1時間か。部屋の中の物を見て回って…
「クラヒトちゃん!出来たよー!。」
いやいやいや、早過ぎる‼︎。