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人生最大の貰い物

「ここがクラヒトに今回に与えられることになる屋敷だ。」

 ローゼリア様が建物の門扉に触れる。それまでずっと外壁で覆われていたから建物の上の方しか見えなかったがやっと全景が見える。


「…おぉー…。…いや、一般人の家としては広過ぎる!。」

 屋敷の段階である程度は想定していたがそれよりも上だ。目の前に広がるのは前庭。サクスベルク邸よりは当然狭いがテニスコート4面分ぐらいはある芝生。そしてその奥にはニ階建ての洋館が聳えている。


「そうか?私としてはもっと広い屋敷が良いと思ったのだがデルトがこのくらいが良いと提言してきてな。」

 デルトさん流石過ぎるぜ。俺の中で株が爆上がりだ。


「建物自体は建てられてから10年ほど経過していますが耐久性に問題はありません。中の装飾類はマーガレット様の要望により一新されております。」

 …あー、なんかそれも言ってたな。でもあの人魔導具は任せてって言ってたけど内装全部とは言ってなかったような…。俺の記憶違いかな。


「姉上が珍しく自分のこと以外に精力的に動いていたからな。あの人は間違いなく数百年に1人の天才なのだが、それ以外がな。そうだ、姉上が是非クラヒトに研究室に来て欲しいと言っていた。時間がある時でいいから訪問してあげて欲しい。」


「ささ、中を見分致しましょう。」

 因みに庭にはまだ特に何もない。芝生が広がっているだけだ。なんでも前庭をどうするかはその屋敷にする者の趣味らしい。それによって同好の士を見つけることも出来るのだとか。あの凄い庭園を造ったマーベルさんはその道ではかなり有名なんだそうだ。


「クラヒトはどんな庭にするのか楽しみにしているぞ。」

 …そんな期待感のこもった目で見られても。…いや、まてよ。…俺のアドバンテージを活かせるかもしれない。この国には当然日本庭園なんてものはないはず。それを再現することが出来れば。…久しく忘れていた日本人としての矜持を思い出せ。


(…日本での事を思い出したら…あれのことも思い出したな。日本が世界に誇ったトイレのあの技術。…ウォシュレット!。…この国で見かけた事はない。水洗トイレはあるから出来なくはないと思うけど。…マーガレット様に相談してみよう。)

 密かにある野望を胸に抱く俺。おっといけない、今はそれよりも内見に集中しなくては。


「一階には玄関ホール、ダイニング、応接室、談話室、キッチン、バスなどの住人皆が使うフロアと使用人の部屋が御座います。」

 あ、使用人の人も住み込みなんだ。そうだよな、サクスベルク邸は使用人の為の建物があるけどこの屋敷には使用人は3人だけの予定なんだし。


「二階は主に私室になります。1人用の部屋が八つと一階のものよりも狭いですが談話スペースも御座います。」

 …八部屋。絶対に要らない。今のところ予定は俺とシャーリーと…アリアさん(も来てくれるかな?)の3人。ゲストルームにするとしても多い。


「それだけ部屋があると掃除が大変ですね。気合を入れないと。」


「……ん?…あぁ、そうか。クラヒト、お前は何のために使用人を雇うんだ?。」


「………家の事をやってもらう為です…ね。」

 恥ずかしい。そうだよな、その為の使用人だもんな。


「クラヒト殿、何か問題点はありますか?。今ならまだ改修も出来ますよ。」

 デルトさんが尋ねてくる。…パッと見た感じ問題はない。トイレの件はマーガレット様に相談してからだし、個人の部屋は勝手に模様替えするだろう。


「そうですね、特に思いつく事はありません。」


「そうですか、良かったです。では最後に書類と鍵の受け渡しをさせて頂きます。」

 デルトさんがずっと持っていた鞄から数枚の紙を取り出す。ふ、不動産の契約書、それも賃貸じゃない。一生に一度あるかないかの瞬間だ。


「…ここと…ここですね。…えーと…名前と…」

 書類に慎重にサインをする。別に内容を疑っているわけじゃない。ただ単に俺の署名が汚くならないようにだ。サインを書き終わると書類が光る。


「これで正式のこの屋敷はクラヒト殿の物となりました。…それではこちらが鍵となります。」

 デルトさんから鍵を渡されたのだがそれは一枚の板だった。…カードキー?。


「これは姉上が開発した魔導具だ。基本的に持ち歩く必要はない。この魔導具に登録された人物が門に手を当てると自動的に開くようになっている。その登録用の鍵だ。」

 …この建物に入る時にローゼリア様が門に触れていたな。あれか。


「…今のうちにクラヒトだけでも登録しておくといい。」

 俺は言われるがままに魔導具に触れる。すると暖かい波動が流れカードに俺の名前が刻まれた。


「これで大丈夫だ。この魔導具に登録されていない者は門を開けることが出来ないから今度来る使用人達も登録しておいてやるんだぞ。」

 そうだな、そうしないと一々俺たちを呼ばないと…、ん?。


「…あれ?でもローゼリア様はもう登録されて…」


「し、仕方ないだろう。案内するのに必要だったんだ。決してこれでいつでもこの屋敷に訪問することができるなんて事は考えていない!。」


「…しかもローゼリア様だけじゃない。マーガレット様とクラリス様も登録されてる。アリアさんは人気者だな。」

 3人ともアリアさんと仲が良いからな。気軽に遊びに来られるようにしたんだな。そうに違いない。


「…クラヒト殿…。」


「使用人達はクラヒト達がここに来る日から勤めるようにしておこう。どのくらいがここに引っ越すことができる?。」


「そうですね、…七日ぐらい有れば大丈夫かと。」


「分かった。ではその日に顔合わせをするとしよう。心配せずとも我々が選んだ者たちだ。」

 …優秀過ぎる人たちだとなんか申し訳ない気持ちになりそうだな。程よい感じの人でお願いしたい。


「…では、今日はこれで…」


「あ、ローゼリア様。…一つお尋ねしたいことが。」


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