シャーリーの一日 前半
次回更新はお休みさせていただきます
「…朝なのよ。」
私の朝は何でもない目覚めから始まる。王都に来てから時間が経った。冒険者を引退してから時間が経っていたけど最近では身体も動くようになってきている。
「…ふあぁー、……」
ベットから起き上がり身嗜みを整える。滞在しているのは貴族の家。懇意にしている人の実家でどれだけ気にしないと言われていても最低限のマナーがある。
「あら、おはよう、シャーリーちゃん。」
部屋のドアを開けるとアリアちゃんのお母さんであるマーベルさんがいたのよ。同じく起きたばかりのはずなのに何でそんなに優雅なのか是非尋ねたいのよ。
「おはようございますなのよ。」
挨拶を返すと頭を撫でてくれるマーベルさん。普通なら頭を撫でられるのは好きじゃないのだけれどマーベルさんに関しては全く嫌じゃないのよ。多分本人が無意識に発している活性の魔力のお陰なのよ。その後は二人はダイニングへ向かう。そこにはすでにアリアちゃんが座っていた。ベルガさんとクルトさん、ソアラさんは仕事の為昨日から泊まりで外出しているからあとは…
「…クラヒトはまたいないのよ?。」
私と同じく客分であるクラヒトが不在だった。どうやらクラヒトは朝にそれ程強くないらしく良く寝坊する。一度本人に問い正すとめざまし?という物がないのが原因かだとか何とか言ってたのよ。良く意味が分からなかったけどそれは今に始まった事じゃないから気にしていないのよ。それよりも問題は今この場にクラヒトがいない事。そのせいで朝ご飯が始まらないのよ。
「…どうやら、まだ寝ているようだ。部屋に反応がある。…また魔力の使い過ぎだろう。」
一瞬目に輝きが灯ったアリアちゃんがそう告げる。天眼という圧倒的な視野を手にするスキルでクラヒトの様子を確認したみたいなのよ。相変わらず便利なスキルなのよ。私のスキルとは大違いなのよ。
「なら私が呼んでくるのよ。」
わざわざクラヒトを起こすのにメイドさんの手を煩わせるのは申し訳ないのよ。
「あぁ、頼む。」
アリアちゃんの言葉を背に受けて私はクラヒトの部屋に向かう。…魔力の使い過ぎって言ってたのよ。クラヒトは私生活はズボラな所はあるけど基本的には勤勉なのよ。魔力は使い切ると成長するから日課で魔力を使い切ろうとしているのよ。普通は魔力を使い切るのは難しいけどクラヒトにはあの子龍がいるから可能なのよ。
「…クラヒト!。もう朝なのよ!。あんたが来ないと朝ご飯が食べられないから早くするのよ。」
ドアをノックして声をかける。すると中でバタバタと音がする。確実に今の呼びかけで飛び起きたのよ。
『…ガチャ…』
ドアが開いてまず出てきたのは白雪。クラヒトが孵した?小龍で何故か私と敵対しているのよ。
「あんたが魔力を吸いすぎなのよ。少しは遠慮したらどうなのよ。」
白雪に呼びかけるが白雪は私を無視。そのままダイニングに飛んで行ってしまう。…に、憎たらしいのよ。いつか食べ物に辛いものを混ぜ込んでやるのよ。
「…お、おはようシャーリー、いい朝だね。」
「…クラヒトがちゃんと起きていれば今頃朝ご飯を食べれていて最高の朝だったのよ。」
寝坊した事を誤魔化そうとするクラヒトに釘を刺しておくのも忘れない。なぁなぁにすると後々良くないのよ。
「すいません。」
クラヒトは自分が悪い事が分かっているので素直に謝罪する。元々が真面目な性格なのだと思う。その後はダイニングで朝食を摂る。サクスベルク家のご飯は美味しいのでとても満足なの。最近ではクラヒトが採取系の依頼もこなしているので珍しい食材も食卓に上がる。中には発見が難しい素材もあるのだけど何故かクラヒトは普通に見つけてくる。不思議なのよ。
「それじゃあ装備を整えてギルドに集合なのよ。今回の依頼では釣り竿が必要だからしっかり借りておくのよ。」
朝食を終えて依頼の準備をする。最近では二日に一回、クラヒトと合同で依頼を受けている。それぞれ得意な分野があるからその方が効率が良いのよ。
「…クラヒトが珍しい素材を手に入れる事が出来る秘密を探るのよ。」
私もしっかりと用意をしてギルドに向かおう。