白い世界の会議
『どうやら最近我が兵が葬られているらしいな。』
雪降る大地。その中に建てられた荘厳な建物。その一室では数人のモノ達が会議を開いていた。長方形の机。その最も上座、つまりお誕生日席と呼ばれる場所に座る男が豪華な椅子に腰掛けながら尋ねる。
『左様でございます、魔王様。ハートラルクに派遣していた兵のうち数名が消息を断ちました。』
男、魔王と呼ばれた者の右手に座る男が問いに答える。
『ハートラルク?。確か新たなダンジョンが発見され、そこに2名派遣したな。その者達か。』
『はい、少し侮りすぎたようです。我が軍に入ったばかりの者でしたので。』
『…そうか、…まぁ、死んだのなら仕方ない。弱いそいつらが悪いのだ。問題はハートラルクにそれなりの強者が出現した事だ。その武がどれ程のものか。』
『王よ、一つ報告しておきたいことがあります。』
魔王から最も離れた席に座っていた1人の男。一見すると貴族の跡取りのようにも見える優男だがその首から腕にかけては火傷の痕が刻まれていた。
『なんだアスラ。…いや、そういえば貴様がその傷を負ったのは…』
『そうです。私を敗走せざるを得ない状況に追い込んだ男がハートラルクにはいます。今回のダンジョンでの件もその男の関与があるかもしれません。』
魔王に向けて言葉を発するアスラ。だがアスラの前に座る男が嘲笑うように言った。
『はっ、テメェが負けたからってその男が強いとは限らねーだろ。なぁ、人間に負けて魔翠玉まで失ったそよ風のアスラさんよ。』
『…黙れ、レイニール。王の前でなければその首跳ね飛ばしているぞ。』
『やってみろよ、テメェの風なんか俺の焔の前では意味なんかねーよ。』
睨み合うアスラとレイニール。
『…2人とも黙れ。なんなら今ここで2人とも…滅ぼしてもいいんだよ?。』
その2人を魔王の左手に座る者が諌める。仮面の人物だ。紅い髪と仮面が目を引くその者は言葉の一つ一つに濃密な殺気と魔力を織り込む。それだけで室内を重い空気が支配する。もしここにクラヒト達がダンジョンで出会った魔族がいれば発狂していただろう。
『…っ、すまない。熱くなってしまった。私の悪い癖だ。』
『…悔しいがまだあんたには勝てねーわ。…ったくあんたみたいな奴がなんで今まで無名だったんだ。突然変異か?。』
『それは…分からない。私には…何もないんだ。』
『そうだったな、あんたは記憶がないんだったな。』
『気は済んだか?。話を続けるぞ。我らの脅威となるかは別としてアスラには後程その男に関しての報告を書で提出してもらう。だが我らの計画に変更はない。』
『この世界を治めるのは最も優れている我らしかない。大人しく軍門に下る勢力は生存を許そう。だが歯向かう者には須く…死をくれてやろう。』