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屋敷と使用人、王族の語らい

「…ふーーーん、…そうなのよ。家が貰えるなら良かったのよ。」

 王家女性陣をやり過ごした俺。その俺は今晩御飯を食べている。テーブルにはシャーリーと俺、アリアさんとマーベルさんがいる。ソアラさんは俺がアフロディーテをあげると研究のため出かけてしまった。そして今の言葉はシャーリーの言葉である。俺が採ってきたアルキノコを使った料理を貪り食いながらの一言だ。


「……俺をあんな状況に置いてけぼりにしておいてそんな言い方するのか。…その耳を揉みしだくぞ。」

 ついつい恨み言が出てしまう。だがそれも仕方のない事だ。あの場で俺がどれだけプレッシャーを感じていたか。胃に穴が開いていてもおかしくない。


「し、仕方ないのよ。私がいても意味なんかなかったのよ。」

 シャーリーも流石に罪悪感を感じていたのか、いやに素直に反省してくる。仕方ないな、尻尾ゴシゴシで許してやるとしよう。


「それにしても屋敷を提供してもらうとは。それに使用人まで紹介して頂けるなんてな。余程気に入られているらしい。」

 いや、屋敷じゃなくて家ね。俺の口から屋敷を寄越せなんて一言も言ってないからね?。


「そうよねぇ、私もクラヒト君が独り立ちしたら何人か紹介しようとしていたけど先を越されてしまったわね。」

 マーベルさんが少し残念そうに言った。先程のアリアさんの言葉と共に引っかかる。なんかその言い方だと使用人の紹介に何か意味があるみたいなんだが。


「…知らないようだから教えておこう。貴族の間では使用人を紹介するのは信頼の証なのだ。使用人にも仕える主人を選ぶ権利がある。紹介は貴族にとっては優秀な者を雇用する機会であり、使用人にとっては信に足る主人に出会う機会でもあるのだ。つまり、紹介する側はそのどちらに対しても責任を負うのだ。能力の低い使用人を紹介したり、仕えるに値しない主人を紹介すればその貴族の評判は地に落ちる。」

 …そんな重い事だったの?。紹介してくれるし、お金も払ってくれるからラッキーぐらいに思っていたけど…。今からでも断りたい。


「自分が知っている優秀な使用人を譲る形になるからお互いの結束が深まることになるの。」

 …だめだ断ることは出来ない。信頼の証を突き返すことなってしまう。


「つまり度量の大きさを見せないと見限られるのよ?。」


「まぁ、そうだな。今回は王家からの派遣だから早々とはそんなことにはならないと思うが…」

 ですよね。でもそれが余計にプレッシャーなんですよ。王家の権威を貶める訳にはいかないから使用人の人達は辞めるとは言えない。俺に仕えたくなくてもだ。えげつないパワハラみたいな感じだ。


「…今から不安なんだけど。」


「大丈夫よ、クラヒト君なら上手くやれるわ。だってこの短期間で人脈を築いているんだもの。」

 マーベルさんは何故か自信満々に俺の事を肯定してくれる。その根拠はどこにあるんだろうか。


「そんな不安そうな顔をするな。ある方達がお前の困る事をする訳ないし、屋敷の決定や住むための手配でまだまだ時間はかかる。ゆっくり考えていけば良い。」


「そうだよね、まだ時間はあるだろうし、折角家をくれるんだから喜ばないと損だよね。」

 俺は問題を未来の自分に丸投げする事にした。取り敢えず今は家を手に入れた事を喜ぼう。



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「貴女達から聞いていた通り気持ちの良い青年でしたね。」

 ある一室。豪華な装飾の施された部屋の中で椅子に座る4人の女性。それぞれ金髪ながら特徴を持つ4人は紅茶を飲みながら今日会った青年の事について話していた。


「でしょ!お母さま!。クラヒトはね、すっごく良い人なんだよ。戦いでも自分が前に出て周りを助けてくれるの。」


「はいはい、その話は何度も聞いたわよ。サポートも個人戦も出来るスキルなんでしょ?。」


「はい、お母様。クラヒトは個人でも魔族と戦える戦力を有しています。どうやら自分ではそれがどれだけ稀有なことあまりわかっていないようですが。クラヒトにとって大事なのは自分の周りを守れるかどうかなのでしょう。」


「個人で魔族とね。それならランク的にはAかSになるわね。でも本人の意向で現在Cランク。それでもかなり早いペースではあるけど。」


「クラヒトちゃん、冒険者じゃなくて技術者になればいいのに。そしたら私も一緒にいれるのになぁ。」


「あら、マーガレットもクラヒト君がお気に入りなのね。」


「うん、私が思いもしなかった発想をすぐに思いついたんだよ。もっと色々お話ししたいなぁ。」


「…3人ともね。…なら貴女達に聞きたい事があるわ。何故誰もクラヒト君に近衛騎士の事を話してないの?。3人とも少ながらずクラヒト君を候補に入れているんでしょ?。」


「私はこの前会ったばかりだし、その時は魔導具の事で頭がいっぱいだったよ。」


「私はまだ自分の気持ちを測りかねています。クラヒトの事は好ましく思っていますが。」


「私はこの前言ったんだけどクラヒトが眠ってしまってたよ。」


「「…え?」」


「行動を起こしているのはクラリスだけなのね。クラヒト君を近衛にしたいのなら早く動くことね。彼の優秀さは次第にみんなが知ることになるわ。既に知っている人も結構いるのよ。元Sランクの英雄『不剛』のゴードンさんや、コーラルのギルドマスター『武命』のケレン君も彼も事を知っているのよ。」


「でも彼の性格的に近衛は断られるかもしれないわね。その時は諦めなさい。無理やりはダメよ。クラヒト君を困らせる事になるわ。」


「でも選んで貰えるように努力するのはいいですよね、お母さま!。」


「それは構いません。寧ろ…元冒険者として言わせてもらうと欲しい物があるのなら努力をするのが当然よ。自分の出来る努力をしてそれでもダメならちゃんと引く。それが一流の人間よ。」


「私は誰かを応援したりは出来ないけど…本当にクラヒト君が欲しいなら、頑張りなさい。」


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