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王妃様は元冒険者、近衛ってなんですか?

 メイドさんからの報告を聞いたマーベルさんは一瞬固まった後大きく息を吐き俺にこう告げた。


「…クラヒト君、既に事態は私の手を離れたようね。でもね、これだけは約束して。…私の分だけでも確保しておいて欲しいの。」

 …思いっきり自分本意のお願いだった。王家が参戦したという事はこのアフロディーテの所有権をマーベルさんが主張するのは難しくなる。書面でも交わしていれば話は違ったのだろうがそんな時間もない。だからそもそもの持ち主である俺に頑張って確保しろよと厳命した形だ。


「母上!ご自分の分だけなのですか⁉︎。クラヒト、頼む、私の分も…」


「わ、私も…その…欲しいのよ!。」


「私の分も是非頼む。見ることすらままならない希少な素材なんだ!。」

 当然アリアさん達もこうなる。…いや、そりゃ勿論頑張るよ?。でも権力に逆らえるかと言えばうんとは言えないよね。3人にも何とか努力する事は伝え納得してもらう。


「ではクラヒト君、…頑張ってくださいね。」


「………ん?……え、…まさか…」

 マーベルさんが頑張れと告げた後立ち上がり俺に背を向ける。


「俺だけなんですか⁉︎。」


「流石に王家総出で交渉にいらしているのに割り込む事は出来ません。アリア、ソアラ、シャーリーちゃん。私達はクラヒト君を信じるだけよ。」

 いや、その王家総出を俺1人で相手取る方が無理じゃないですかね。なんて俺の気持ちを置いてけぼりにして4人は部屋から出て行ってしまう。残っているのはメイドさんだけ。そのメイドさんも中々に青い表情をしている。俺と同じく貧乏くじを引かされた側なのだろう。取り敢えず神妙な顔つきで待機しておく。王女3人はまだ良い。全員面識があるから。問題は王妃だ。どんな人なのか。あの3人の人格から考えるとそこまで破綻した人である可能性はないと思うんだけど。


『ガチャ…』

 ドアが開く。ドアを開けたメイドさんが恭しく頭を下げ、その後ろから続々と登場する王家の女性陣。クラリス様、ローゼリア様、マーガレット様。そして最後に見たことのない人がいた。この人が王妃様だろう。


「…っ⁉︎……」

 突如頭にガツンと衝撃が走る。この感覚は…。予想通り頭に六芒星が展開されていた。こうなる場合は幾つかあるが、…おれの予想だと…。


「…ほぉ、クラヒト。お母様の力に気がついたようだな。初見で見破る者はかなり少ないのだがな。流石はクラヒトだ。あれからまた強くなっている。」

 俺の反応を見てローゼリア様が笑みを浮かべながらそんな事を言う。


「初めまして。私の名前はレオノワール・タキシオンと言います。貴方の事は娘達から聞いていました。とても勇敢な方で…そして将来有望な冒険者だと。無粋かと思いましたが少し試させていただきました。…貴方になら娘を預ける事に異議はありません。」

 王妃様。レオノワール様は思っていたより深みのある声で挨拶をしてくれる。最後の言葉は俺には聞こえなかったんだがどうしよう。そしてローゼリア様達が少し焦ったような表情を浮かべているのも気にかかる。…が無闇に触れない方が良いだろう。無難に挨拶を返しておこう。


「お初にお目にかかります。クラヒトといいます。」

 …他になんて言ったらいいかなんて分かんねーよ。


「そんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。私も元冒険者ですから。それに今日は此方が突然の訪問をしたのです。礼を逸しているのはこちらなのです。」

 レオノワール様の言葉を聞いて少しだけ体の力が抜ける。そこで改めてレオノワール様の顔を見る事が出来た。落ち着いた雰囲気のまさに貴婦人って感じの女性である。この人が元冒険者とか信じられない。


「ねぇ、クラヒトちゃん。その机に置いてあるのが…アフロディーテ?。」

 いつの間にか俺の隣に来ていたマーガレット様が興味を抑えきれないといったように俺に尋ねてくる。相変わらず自由すぎないかな、この人。


「えぇ、そうですけど…見たことないんですか?。」

 確か俺の前に発見されたやつも王家に納品された筈だけど。 


「うんうん、いつもはもっと細かくなってからしか見れないんだよぉ。それがこんなにあるなんて。…触ってもいい?。」

 餌を前にした犬のようなマーガレット様。俺がかなり軽く、風に飛ぶと言う注意点を話すと薄らと手に魔力を纏わせて観察し始めた。…暫く放っておいてもいいかな。


「クラヒト!、ダンジョンを攻略してから全然時間なんて経ってないのにまたこんな功績を残すなんて!。本当に爵位は要らないの?。今なら込み込みで伯爵ぐらいならいけるよ?。だよね、お母様。」

 待っていたとばかりにクラリス様が話しかけてくる。三姉妹の中で1番フランクなクラリス様が俺にそんな提案をしてくる。伯爵って、いきなり過ぎる。


「そうね、クラヒト君には今まで評されていなかった功績が多々ありますからね。それに完全に未知であったアフロディーテの素材をこれだけ。正体に関して何か掴んだと考えても良いですか?。」

 アフロディーテの事を知りたそうにしていたので素直にさっきアリアさん達に話した内容と同じ事を告げる。


「…クラヒト君が望むならクラリスの言う通り伯爵までならば可能ですね。既にローゼリアから騎士爵に任ぜられているのでしょう?。それとも…そのまま誰かの近衛になりますか?。」

 レオノワール様の言葉にアフロディーテに集中していた筈のマーガレット様、ニコニコ笑顔を浮かべていたクラリス様、レオノワール様の隣にいるローゼリア様がピクリと反応を示す。なんだ?今の言葉に何の意味があるんだ?。


「…あの、近衛ってなんですか?。」


「あら?誰からも聞いてないのですか?。」

 レオノワール様が少し呆れたような声色で王女3人を見る。


「では私の口から言うのは野暮ですね。気になったら3人から聞いてくださいね。」

 …いよいよ本当に何なんだ?。俺の中で疑問がどんどん膨らむ。この後レオノワール様からアフロディーテの素材を王家にも卸して欲しいと告げられた。だが量は全体の4分の1程で良いらしい。それなら問題ないと了承すると4人とも歓喜していた。自分たちで使うだけじゃなくて外交のカードとしても有用らしい。


「それでは対価についてお話しさせていただきましょう。」

 やっと折り返し地点のようです。誰か助けて。

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