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アルキノコの報酬、極められた関節

「お待たせ致しました!。鑑定の結果全て合わせて金貨2枚と銀貨75枚となりますが宜しいですか?。」

 うさ耳受付嬢が今回のアルキノコ討伐の結果を伝えてくれる。どうやらレア個体は金貨2枚になったようだ。全部で27万円相当。充分だ、アルキノコ専門の狩人として生きていける。


「うん、大丈夫だ。それでお願いするよ。」

 俺がそう伝えると報酬の支払いはどうするかと聞かれたのでいつも通り入金しておいてもらう。手持ちで金貨を2枚持っているしな。…よく考えたら普段から20万持ち歩いているってヤバいな。金銭感覚が崩壊する。カードを受け取った受付嬢が奥に消える。


(…さて、これからどうするか。帰っても、誰もいないんだよな。かと言ってアフロディーテの捜索はなぁ、…)

 これからの事を考えているとある事を思い出す。あの謎の魔物の事だ。


「こちらのカードの方に入金終了しました!。」

 受付嬢がカードを持って戻ってくる。この後にする事もないので聞いておく事にしよう。


「今日、アルキノコを狩っている途中で見たことのない魔物に遭遇したんだけど、これって何か分かる?。」

 俺はめちゃめちゃ軽い毛糸のような物を受付嬢に見せる。少しの風で飛んで行く可能性があるので細心の注意を払う。


「…んー、…すいません、分からないですぅ…。魔物の特徴とかをお聞きしても良いですか?。」

 受付嬢は俺の手のひらに置いてある素材を観察していたが分からなかったようだ。そして俺に魔物について聞いてきたのでとても速いという事と毛玉の塊のような見た目について話す。ただ速いと言っても主観になってしまうのであてにはならない。


「…すいません、私が勉強不足なのでお力になれずに。…こんな役立たず、相応しくないですよね。」

 目に見えて落ち込む受付嬢。うさ耳がペタってなってしまった。


「いやいや、そんな事はないよ!。どんな仕事だって初めから出来る人なんていないんだから!。大事なのは常に学ぶ姿勢を忘れない事、これからだって。」

 俺は立ち上がり受付嬢を励ます。なんで俺はこんなに偉そうな事を言っているんだろう。居候のくせに。


「…く、クラヒトさん!。はい、私頑張ります!。」

 だが俺の言葉は響いてしまったようだ。体の前で拳をぐっと握り決意を表明している。…ただ中々の声量だったので注目を浴びてしまっているのだが。


「…あ、毛が⁉︎。」

 俺が立ち上がった風圧で素材の毛がふわりと浮かび上がる。良く目を凝らさないと見つけられないような物だから…何処に…。


「…3人からも連絡はないし…、もうないのかしら?…いえ、諦めては駄目よ、まだ………んんんん⁉︎⁉︎。」


「あ、あった。白雪、お願い。」

 マーベルさんの頭上ぐらいに発見したので白雪にお願いする。すると白雪は小さな闇を作り出しそこに糸が吸い寄せられる。折角の素材だからな、無駄にするのは良くない。


「…それじゃあ俺は帰るよ。頑張ってね。」

 ギルドですることは無くなったし帰ることにする。


「はい!立派な受付嬢になってみせます!。クラヒトさん、ラビリの名前を覚えておいてくださいね!。」

 …今初めて知ったんだけどな。ラビリか、…ラビットっぽくて良いねっ!。俺はラビリに手を振るとギルドの出口に向かう。とりあえずサクスベルク邸の料理長にアルキノコを渡しに行かないと…


『…ガシッ‼︎。』


「…へ?…な、何を…⁉︎。」

 突如俺の腕が引かれる。慌てて振り向くとそこには今までに見たことのない表情をしたマーベルさんがいた。


「…え、あ、あの、何か。あ!、挨拶せずに帰ろうとしてすいません。」

 そうだよな、顔見知りなんてレベルじゃないんだ。お世話になっているんだし一言ぐらい声をかけないと失礼だよな。


「いえ、そんな事はどうでも良いのよクラヒト君。」

 どうでもいいの⁉︎。なら…なんで俺の腕を掴む力が緩む事がないのだろうか。頭の上の白雪も心なしか震えているようなきがする。マーベルさんが顔を近づけて小さな声で続ける。


「あのね、私、さっき見てしまったの。…私の探し物。」


「…探し物って…アフロディーテでしたっけ?。…えーと、協力させていただきます。」

 成る程だから声が小さいのか。…しかし、俺に手伝えることなどあるだろうか。


「…クラヒト君は良い子ですね。なら…このまま素早くギルドから出ましょう。」

 マーベルさんが俺の腕を引きギルドの出口に向かう。なんだ、見たのはギルドの中じゃないのか?。追跡するのか?。俺の思考は定まらない。ただ一つわかる事がある。いつの間にか関節を極められている俺の腕はもう自由にはならないという事だ。


「…受付嬢が新人なのは僥倖でした。ですが…誰かに聞かれればバレる恐れがありますから…屋敷へ。…貴女はアリア達に連絡を。発見して確保したと伝えなさい。」

 マーベルさんはメイドさんに何やら指示を飛ばしている。


「…クラヒト君、先程ちらりと見えた糸のような物、あれで全てですか?。」


「いえ、まだ結構有りますけど。……え、嘘、」

 マーベルさんの言葉。そしてこの焦りよう…間違いない。


「…っ⁉︎…そ、そうですか。それは重畳。…えぇ、そうです。あれこそが今王都中の貴人が探し求めるアフロディーテの素材なのです。」

 知らされた驚愕の事実。その後俺はマーベルさんにがっちりと腕を極められたまたサクスベルク邸へと護送された。

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