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王都での喧騒の理由、拘りは怖い。

「大収穫だったな白雪。これならギルドに渡す分以外にも俺たちで持ち帰れるぞ。」

 アルキノコ狩りを終えた俺と白雪。普段からサークルを使用していたおかげか索敵範囲がかなり広くなっていてアルキノコを探すのが捗った。更にレア個体である回復魔法を使用するアルキノコにも遭遇。俺が造匠で普通個体を引きつけている間に白雪が影を渡りそのレア個体を討伐してくれた。完璧なコンビネーションだったと自負している。


『…クゥ……クゥ……ク…』

 白雪は疲れたのか俺の頭の上で眠っているようだ。収穫できたアルキノコは80体。ギルドにはレア個体を含めた70体ぐらいを卸すつもりだ。もっと狩る事は出来たが神速と造匠を使ってしまったので安全マージンを取る為に辞めておく。往復2時間、狩りをしていたのは3時間ほどだったから労働時間換算は5時間。それでこの量なら充分だ。


「…さて、取り敢えずギルドに持っていくか。白雪、白雪!。起きてくれ。アルキノコを卸すから。」

 俺は眠っていた白雪を抱き抱え起こす。俺がこうして身軽なのは白雪が影の中にしまっておいてくれているからだ。俺自身で闇属性の収納を覚える日はいつになるのか。俺に起こされた白雪は一瞬、ぼーっと辺りを見渡した後アルキノコが入っている袋を出してくれた。そのまま二度寝することはなく俺の頭の上でキョロキョロしている。


「あ、白雪も気になる?。なんか今日はいつもと空気が違うんだよな。…んー、なんだろいつもはこの辺に…こんなに女の人がいたか?。それも高貴な人もいるよな。」

 少しだけ違和感の正体に気づく。いつもよりも道を歩く女性の数が多いのだ。それも普通の一般人

 じゃなくて貴族っぽい人がお付きの人を連れて色々な店を出入りしている。その中には冒険者ギルドも含まれていた。


「…冒険者ギルドに…あそこは薬剤ギルド、そして治療院…、雑貨屋。…いまいち関係性が分からないな。」

 なんて思っていると白雪に頭を叩かれた。白雪にとっては街にどれだけ人が溢れていようが関係ない。それよりもアルキノコを早く食べたいのだろう。俺も同感だし、早くギルドに行こう。


「…うわっ、なんか中も人が…ん?…あれは…」

 ギルドの中に入ってもいつもより女性の比率が高い。ここは中心街のギルドじゃないからAランク以下の冒険者が集まる所だ。それなのに依頼をしたいのか貴族っぽい夫人もいる。普通貴族なんかは直接はギルドに来ないし、行ったとしても中央の方だと思っていたんだが。そこで俺はある人物を発見する。


「あら、クラヒト君。今依頼を終えたの?。」

 マーベルさんである。マーベルさんは今日の朝から不在だったのだが思わぬ所で遭遇するもんだ。


「はい、そうですね。アルキノコの討伐に行っていたので。あ、厨房の方にお渡しすれば今日の晩御飯に使ってもらえますかね?。」


「えぇ、勿論よ。今日採れたばかりのアルキノコなんですもの、有難いわ。」

 よし、アルキノコを調理するアテがついた。それじゃあさっさと報告を終わらせよう。


「すいません、依頼の報告をしたいんですけど。」

 受付で声をかける。気がついたのは朝のうさ耳の受付嬢だった。一瞬ビクッとした後俺の方に来る。まだ怖がられているのか。…くそっ、シャーリーめ、中々の禍根を残しているぞ。


「お、お疲れ様です。確かアルキノコの討伐でしたよね。」


「はい、そうです。70体納品します。」

 俺は袋ごと机の上に置く。


「あ、後レア個体も一体倒すことが出来たんですよ。」

 危ない危ない、これは別にしとかないと間違えられたら損だからな。


「わぁ!凄いです。本当に治癒の個体を。それに…数が凄い…。今朝は本当に申し訳ありませんでした。こんなに実力のある方だと分からずに…」

 うさ耳受付嬢が改めて今朝の事を詫びてくるが俺としては特に気にしていない。


「いや、それはもう別にいいよ。…えーとすぐに査定出来る?。」


「はい!少しお時間をいただきますが。」


「うん、じゃあお願いします。」

 アルキノコは個体によって値段が違うので査定がある。うさ耳受付嬢は重そうに袋とレア個体を持って奥に向かった。さて、どうするか。


「…マーベルさん、今日はどうして此処に?。アリアさんとシャーリーもいなかったんですけど。」

 気になっていた街中の異常。マーベルさんなら何か知っていると思い尋ねる事にする。


「…実はね、ある噂が入ったの。いえ、噂では無かったわね。検証の結果事実だと判明したからここまでの騒ぎになっているのだけど。」

 マーベルさんがその綺麗な顔を此方に近づけて囁く。


「…アフロディーテという魔物が出たのよ。」


「……?、…アフロディーテ?。…えーと…その魔物が出たから…なんです?。」

 残念ながらさっぱりである。


「アフロディーテはね、肌を活性化させる成分を持つ魔物なの。その効果はありとあらゆる美容用品を凌ぎ肌が10代に戻るとも言われているの。それだけじゃないわ、活性化によってシミが消え美白にもなり、その後の老化をも抑制する。まさに夢のような成分なの。」


「…だから討伐依頼を出そうと此処に?。」

 女性の美に対する拘りは男の想像を超える。下手に口を挟むべきではない。


「いえ、違うわ。そもそもアフロディーテの姿を見た者はいないの。」


「姿を見た者がいない?。ならなんで。」

 いよいよ分からないな。そのアフロディーテとはいったいなんなのか。


「偶に体の一部と思わしき物を落とすのよ。そのほんの少しの落とし物だけがアフロディーテの存在を証明しているの。それが今回この王都の近くで発見されたの。残念ながらその発見されたものは王家に回収されたようですが。」


「…って事は街中に貴族が溢れているのは…」


「そう、その落とし物の残りが発見される可能性に賭けているのよ。そしてそれが納品された瞬間から争奪戦は始まるの。」

 だから至る所に貴族の夫人がいたのか。存在が公になっていないから発見した人がどこに持ち込むか分からない。自分の勘に賭けて待ち構えているわけだ。来るかも分からないその落とし物を。……んー、怖い。


「3年程前に発見された時は1人分が金貨300枚になったそうです。私も欲しかったのですけど発見されたのが遠い街で情報が届いた時には…、ですから今回は万全を期して待機しているわけです。ソアラとアリア、シャーリーちゃんも王都に散らばり情報に備えています。」

 …ガチ過ぎる。金貨300枚だよ?。3000万円ぐらいだよ?。…んー、日本でも3000万は…でも美容液とかヒアルロン酸とか使っていたからそれぐらいにはなるのか?。駄目だ、よくわからなくなってきた。


「そ、そうですか。大変ですね。」


「えぇ、なのでクラヒト君も何か情報が入ったら…」


「も、勿論いの一番にマーベルさんに伝えますよ。」


「そう?…ありがとう。あ、受付の方が戻ってきたわよ。」

 一瞬マーベルさんから尋常ではないプレッシャーを感じた。あの感じ…間違いなく今頃ベルガさんとクルトさんも王都中を奔走しているのだろう。


「…あまり深く関わらない方が身の為だな。さぁ、白雪さっさとお金を受け取って帰ろう。」

 俺は気づいていなかった。この後俺ががっぷり四つでこの件に関わる事になるという事を。

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