イメージを払拭したいこの頃です
セレナちゃん、ターニャちゃんという癒しと接した俺は依頼を受けることにした。ランクを上げるためにもコツコツとこなしていかないといけない。
「Cランクで日帰り出来る依頼はと…」
依頼が掲示されているボードを眺める。因みにシャーリーはいない。何故だが知らないが今日はサクスベルク家に女性陣は誰もいなかったのだ。街中でも女性の冒険者や貴族っぽい人が色めきたっていた。物凄いイケメンでも現れたのだろうか?。
『深林、徒歩で1時間、アルキノコの収穫。Cランク相当。』
…アルキノコ…、確かサクスベルク家にある図鑑で見たな。足が生えているキノコで走って逃げる。また魔法を使うことが出来、遠距離から攻撃してくる…らしい。サイズ自体は大きめの椎茸ぐらいだったな。これで良いか。
「すいません、この依頼を受けたいんですけど、大丈夫ですか?。」
既に誰かが捕獲に向かっているかもしれない。バッティングはしたくない。空いている受付嬢の前に座る。見たことがない人だ。うさ耳がうさうさと揺れて中々小動物感がある。
「あ、はい。アルキノコですね。アルキノコは大変美味しい為常に依頼が出ております。ですからどれだけ捕獲していただいても構いません。…ただ…魔法での攻撃を行う為魔法耐性や防御手段がない場合苦労なさると思いますが…」
受付嬢が心配そうに俺の方を見る。純粋に俺の事を心配してくれているのだろう。だが心配無用だ。既に対策は考えてある。造匠を使って魔法を弾く剣を作る。魔法を完全に無効化する破魔斬りと違って弾くぐらいだったら結構な時間使えるはず。
「あ、こら!。その人はいいのよ。…」
通りかかった別の受付嬢が目の前の受付嬢に耳打ちをする。多分目の前の人は新人でこの前のあの事件を知らないんだろうな。…その方が良かったな。受付嬢を1人追いやったあの事件以来何故か少し距離がある気がするんです。まぁ、避けられてるよね。
「し、し、し、失礼しまひた!。…うぅ、…せ、せっかく就職出来たのに…」
俺のことをなんて聞いたのか知らないが受付嬢のうさ耳が力を無くす。まさかあの忠告だけで首が飛ぶとでも思っているのだろうか。
「いや、そんなに気にしないで。あれはどっちかっていうと俺の相棒がやったことだから。俺自身はそんな権力を振りかざしたりしないよ?。」
シャーリーに責任を転嫁する。すまん、シャーリー。だがシャーリーが8割方キレていたから完全に間違いではないはず。
「…そうです?。」
「寧ろ俺の事を気遣って忠告してくれたんだから感謝したいぐらいだよ。」
「…良かったです。」
どうやら俺への恐怖は大分薄れたようだ。うさ耳が片方うさうさしている。
「えーと、魔法を使ってくる以外に注意点とかある?。採取方法とか。」
「はい、アルキノコは軸の部分に魔石があるのでそこへ攻撃すれば討伐出来ます!。あとは…アルキノコは魔法の属性によって味が違い、値段も異なります。それはこの紙に纏めてあります。」
うさ耳受付嬢が紙を差し出してくる。…確かに値段が違うようだがそこまで気にするほどの差でも…
「え、なんか一種類だけ馬鹿みたいな値段なんだけど。」
普通のやつが平均銀貨一枚、つまり一体千円ぐらいなのだがそいつは一体で金貨一枚から金貨三枚、十万円から三十万円である。
「あ、それは癒しの魔法を使う個体です。数が少ない上に味方を回復させて逃げてしまうので高額になっているのです。高価な薬の材料になるので時価で買取をしています。」
…うーん、良く考えれば中々良い依頼じゃないか?。確かに一体あたり銀貨一枚はCランクの依頼としては低いけど数を狩れば問題ない。どれだけ数を狩れるか分からないけど。30体は狩りたいな。その中に特殊個体がいればラッキーだ。
「分かった。取り敢えずやってみるよ。この紙ありがたく使わせてもらうね。」
兎に角やってみないと分からない。俺はうさ耳受付嬢から渡された紙を懐に仕舞い、深林に向かう。
「お、お気をつけて!。」
うさ耳受付嬢が手を振ってきたので振り返しておく。…いーなぁ、こういうの。思えば俺が会ってきた受付嬢って…主にシャーリーなんだよな。こんな愛想はなかったなぁ。しみじみとそんな事を思いながら俺は歩みを進めるのだった。