表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/136

そう言えば、報酬の話なかったな。

「…思っていたより大きいのね、背中。やっぱり性別が違うからかしら。」

 俺に背負われているクラリス様がそんな事を言う。おいおい、集中したいからおんぶしてるんじゃないのか?。…当然俺にはそんな事言えないけど。寧ろ手のひらから伝わる男の太腿とは違う感触から気を逸らせるのに精一杯ですけど?。さっきの降り階段では段差を降りる時に当たった胸の感触に心臓が止まりかけましたけど?。


「クラリス様、そろそろ…、…きます。」

 俺たちの先頭に立ち罠の回避を担当していたアリアさんが敵の襲来を告げる。


「…サンライト!。」

 薄暗いフロアに灯りを灯す。すると目の前に巨大な蛇が鎮座していた。黒光りする鱗と鋭い牙が目に止まる。


「でかい、…一呑みにされる可能性もあるか?。」


「あのサイズ感だと竜と言われても納得なのよ。しかも…2体もいるのよ。」

 その蛇の巨大さに呆気に取られる俺とシャーリー。以前倒したアグナドラゴンよりの数倍はありそうだ。


「あれは…恐らくサーペンタステイルの…変異個体だ。あんな魔物まで連れてきていたとは余程この下の遺跡に価値があるのか。」


「あの蛇の外皮は対物理能力が非常に高く加工した物は高位の冒険者が鎧などに利用する。更に恐るべきはその脱皮速度。火や風などで傷を負わせても即座に脱皮する事で硬度を保つ。本来は5メートルほどの体長なのだがな。」

 厄介すぎる。硬くてすぐ再生する外皮を持つ蛇。蛇は元々全身が筋肉だから速度もあるだろうにそんな硬い皮膚で締め付けられたら大変なことになる。頭の中で対策を考えていると背負っていてクラリス様がひらりと地面に降りて俺たちの前に立った。


「…どれだけ硬かろうと私の前では…意味をなさないわ。素材は出来るだけ無傷で確保したいから…点侵空螺!。」

 クラリス様の両手の人差し指の指先から小さな球体が放たれる。サーペンタステイルの外皮に触れたそれはまるで硬い外皮などないかのように貫通する。


『…⁉︎…!‼︎⁉︎………‼︎。』

 今までその硬さ故に勝ち続けてきたであろうサーペンタステイルは油断しきっていた。だがクラリス様の魔法は意に介さないようにその身にダメージを与える。初めての感触にのたうち回るサーペンタステイル。


「圧縮された魔法を解放。中を削り切る。」

 クラリス様が手を動かす。まるでサーペンタステイルの体を沿わせるように動かしている。クラリスの手の動きが全長の4分の1位になった時サーペンタステイルは息絶えていた。


「ふぅー、…結構早かったわね。魔物だからもっと持つかと思っていたけど。」

 そう言うクラリス様の額には汗が滲んでいる。この短時間にかなり消耗したようだ。


「…一体何をしていたのよ?。」


「…ごく小さな穴を穿ちそこから侵入させた私の魔法でサーペンタステイルの中身を抉ったのよ。中の肉だけを抉ったから外皮はそのまま持ち帰ることが出来るわ。貴方達にあまり高額の報酬を用意出来なかったらけど魔物の素材代は貰ってくれるのよね。」

 …まじやべぇ。強すぎない?。どうせなら俺もそんな感じのチート能力が欲しかった。あと報酬の話は初耳なのですが?。


「えぇ、その予定です。」


「アリアさん、俺聞いてないんだけど。」

 てっきり王家からの命令なのかと思っていた。アリアさんは勿論、俺も一応貴族らしいから拒否権はないのかと。シャーリーだって知らないはずだ。


「私は聞いていたのよ。」

 …あれー?。


「いや、シャーリーには引き受けた直後に聞いてきたから答えたが。クラヒトは理解しているとばかり。」

 シャーリーは知ってたって、聞いてたのかよ。報酬に関してだから流石にしっかりしている。


「…まぁ、別に良いですけど。あまり出来ない体験を出来たと思えば。それに元々くれるつもりだったんなら寧ろ臨時収入って感じですね。」

 どれくらい貰えるんだろうか。そろそろアリアさん宅に居候するのが申し訳なくなっているからな。家を借りたい。その頭金ぐらいにはなって欲しい。


「これまでの階層での魔物とサーペンタステイル。それに魔族を2体討伐したからな。…かなりの額になっているはずだ。」

 ワンチャン購入出来るんじゃないか、家を。でも王都は高いだろうからな、コーラルに別荘を建てようか。そろそろミリアちゃんに会いに行きたいし…。


「それは楽しみです。…それに何よりも今からの経験が楽しみだけどね。」

 この下の階には遺跡があるはず。日本にいた頃でも経験した事はない。何気に楽しみだ。やはり俺も男の子だからな。


「なら下に降りましょう。…アリア、守護者はいると思う?。」


「…天眼には映っていませんが、断言は出来ません。遺跡に近づけば出現する可能性もあります。」

 忘れてた。遺跡にはそれを守る守護者がいるんだった。…結構強いらしいしな。…魔族が倒しているって事はないのか?。


「魔族と戦って守護者がいなくなっている可能性はないのよ?。」

 シャーリーも俺と同じことに気がついたようだ。


「その可能性もある。だが…結局の所可能性でしかない。ならば…」


「想定すべきは最悪のパターン。守護者がいて、魔族との戦闘を終えていない。」


「…もしそうだったら戦うのよ?。」


「そうね、そうなるわね。だけど守護者は遺跡から離れる事はないわ。だから無理だと思ったら撤退も視野に入れる。今回の私たちの仕事は遺跡の存在の確認が主だから。」


「…さぁ、行きましょう。古代からの贈り物と対面よ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ