来た王女様。目覚めよ俺のスキル。
『コンコン。』
鳴り響く音。間違いなくこの部屋のドアから鳴る音だ。返事をした方が良いかとアリアさんの方を見ると頷いている。ってか俺が返事でいいのか。
「はい、どうぞ。」
失礼にならないような応答の仕方など習ったことはない。これで不敬になったらめっちゃ抵抗しよ。
「失礼する。ここにタマチクラヒトなる人物が滞留していると聞いたのだが。」
そう言いながらドアを開けて入ってきたのはまぁ日本では見ることが出来ないくらい綺麗な金髪の女だった。腰まで伸ばした金髪。アリアさんの髪も綺麗だったがそれ以上だろう。ということはこの人が王女様で間違いないだろう。…でもなんかそれらしくない格好だ。結構ぴっしりとした鎧のようなものを着ている。姫騎士的な。
「…えーと、玉地蔵人は俺です。………はじめまして。」
初対面の人と挨拶するのは緊張するよね。握手とかしていいか分からないし。それで不敬だ!死刑!とかなったら笑えない。
「ふむ…何というか特に特徴があるというわけではないのだな。ゴードンから特異だと聞いていたのだが。」
俺の顔を見てそんなことを言う。うんまぁ、そうですよ。俺は一般人です。だから今からでも帰って欲しい。
「…ん?…アリアじゃないか!。そうか、お前が監視にあたっていたのか。それでこの男はどうだ?何か変わったところはあるか?。」
アリアさんの顔を見た途端色めき立つ王女様。ってか名前聞いてない。あれなのか庶民には名乗らないのか?。
「…お久しぶりです、ローゼリア様。…そうですね、…ないですね。力も気配も唯の町人のそれと同じです。」
「…そうか。…クラヒトよお主のことを視させてもらってもよいか?。」
「え、えぇ。その…視させてもらうって何をですか?。」
「ん?そなた儀礼を受けたことが無いのか?。…普通は子供の頃に一度は受けるはずなのだが。…まぁいい。儀礼はその人に眠る可能性を引き起こす。そしてその人物の本質を明かす。…犯罪を起こせば徐々に黒く染まる。これによって罪人はその程度を知ることが出来る。それをさせて貰いたい。」
…大丈夫だよな。…犯罪…あの女風呂は入ったり…でも結局何も見れてないから。大丈夫のはず。
「…大丈夫です。構いません。」
「そうか、ラスター入れ。」
王女様、…えーとローゼリア様がドアの外に声をかける。するとそこから1人の女が入ってきた。それなりに老齢だろうその女は黒い服を身に纏い楚々と入室してくる。
「この者はラスターと言う。王家が世話になっている司祭だ。」
「初めましてラスターと言います。よろしくお願いします。」
司祭さんはちゃんと名乗ってくれた。それだけで安心できる。やっぱり挨拶は大事だよね。
「玉地蔵人といいます。よろしくお願いします。」
「…それではクラヒト様、これから儀礼を行わさせていただきます。今まで受けたことが無い場合頭痛があるかも知れません。その内に秘めた才能が大きいほど頭痛が大きくなるようです。」
「あぁー、私の時も痛かった痛かった。って言っても直ぐに治るけどね。」
「アリアの場合は人よりも痛みは強かったはずだ。普通の人なら本当に少し痛むだけだ。」
流石にAランクの冒険者になるような人は才能が大きいんだな。なら俺は…どうだろ。七つの顔を持つ男がどれくらいか分からんからな。でもそこまで警戒しなくてもいいだろ。
「…お願いします。」
「それでは…『汝の秘めたる力をこの世に示せ。』…。」
ラスターさんが唱えて指を俺のおでこに当てる。……………。
「………全く痛さはこなっ⁉︎。…え⁉︎…こ、これは…‼︎。」
ヤバい!頭が割れる!。…
「…ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎。…なんだ!…これ…止めて……止めてくれぇぇ‼︎。」
叫ばずにいられない。頭だけじゃ無い。身体中が沸き立つように痛む。目の前が黒くなる。
「…な⁉︎ラスター!これはどうなってる!。こんなに痛む者を見たことがあるか?。」
「そんな…今まで見たことがありません。」
「ローゼリア様見てください。目から血が…!。」
「くそ…、クラヒトに何が起こっている!。アリア!治癒士を呼んで来てくれ!。大至急だ!。」
「分かりました!。」
「ラスター、本当に原因は分からないのか!。このままではクラヒトが死んでしまうぞ。」
「…まさか、…1つ可能性が。」
「何だ!。早く言え!。」
「…このクラヒト様の才能が規格外なのでは?。それを目覚めさせたことにより体に大きな負担がかかっているのではないでしょうか。」
「…そんなバカな。…ここまでのか。」
「…はぁはぁ…水を……水を……かけてくれ。」
なんかごちゃごちゃ言ってるがそれどころではない。すぐに治るんじゃなかったのか。体が萌える、いや、燃える。
「わ、分かった。ラスター水だ。…いや、私がやる。『水よ来い‼︎。』」
「…あ…あぁ………」
ローゼリア様の手から水が飛び出す。それが体に触れると痛みが和らぐ。それでも頭は割れるように痛い。その中で言葉が浮かび上がる。
「………双身………神速………大虎……日輪……造匠……天癒…双身……神速………造匠………日輪…」
自分で何を言ってるかわからない。一際大きな頭痛が俺を襲いそこで俺は意識を手放した。