懐かしい、光の雨
・・・?、暗い・・・?いや、妙に、暗さの中に、明るさを感じる。暖かい、ここは・・・。
重い、瞼を開けた。
白い天井、そこで響く電子と呼吸の音。
背後から伝わる柔らかな感触、うまく力が入らない感覚がある。だけど、まだこの暖かい光が、どこから感じるのかが気になる。
無理やり、上手く力の入らない半身を起こし、おれは、その正体を目にした。
澄み切った青い色、それと調和された軽さを感じる雲。
そして、ひとつの部屋を余力を感じる程に明るくさせる、太陽の光。
バサッと、何かが、落ちる音がした。
まさに点になった感覚の目を、外から音の方向に向けた。
彼女が、そこにいた。
前よりも伸びた髪、そして伸びた前髪の隙間からちらりと見える、目の下に出来た隈と、いまにも涙を流しそうに潤んだ瞳。
「ッ!天海さんっ!!!!!!」
そう言って、落ちたものを拾わず、抱きついてきた彼女。
強く、また、優しく俺に寄ってくる。
まるで、死人が蘇ったかのように泣きじゃくる、普段の彼女からは、感じられなかったもの。暖かい、太陽の光と違った、人の温もり。
何故か、なんでか分からないが、俺の目から、雨よりも温かい、涙が流れた。
どうやら、俺はあの夜。
マンションの5階から落下し、その衝撃で足を骨折、後頭部と背骨を強打。
その場に人も居たことから、すぐに救急車を呼ぶことが出来、何とか一命は取り留めたのだが
脊髄損傷が起きていて、目が覚めるか覚めないかの五分五分の確率の中をさ迷っていたらしい。
なら、起きてすぐ抱き締められたのは不味いのではないのか?と思ったが、まぁ仕方ないことだ。とのことで、彼女の学歴に免じて許された。
彼女も、聞けばこの病院での職場体験に来るまで俺が意識不明の重体だった事を知らず、この病室の名前を見た時に、知ったのだそう。
親とも話を済ませ、俺は今院内の広場で腰を下ろしている。
悲しい事に、俺は辞めさせられた後、ちゃんと就職していた。
世間で言うブラック企業というものに。
俺が入院する事を親が連絡したら、そんな奴は要らない、クビだと言われ
怒りを示した親が勝手に了承したらしい。
だが、脊髄損傷の後遺症で左半身がうまく動かせなくなったのだから、それが正しい判断なのかもしれない。
貯金もあるので、保険金を含めると、そこまで不自由な暮らしをすることは無いだろう。
「さて、と」
顔を上げると、青い空とふ釣りあいな黒い物が視界を遮った。
「・・・なんで傘?」
「いや、その・・・やっぱり、こんな天気でも、天海さんなら・・・これかなって・・・」
「・・・はは、確かにそうかも、ありがとう」
彼女、潮さんが持った傘を、俺は右手で受け取り、耳を済ませた。
「相変わらずの、天気だね」
「そう、ですね・・・」
そう言って、傘を差すと
空から、晴れた光を屈折させる、晴れた空から降る雨が降ってきた。
「これは・・・」
「?どうしました?」
「え、・・・あ、いや、なんでもない」
俺は、笑顔でそう返した。
きっと、この雨は、最後の雨だ。
晴れた空を、最後に綺麗に見せようとする、優しい雨。
もう、あのレインコートも見えない、濡れる感覚もない。
だが、音が聞こえる。弱々しいが、とても強い音。
今にも消えてしまいそうだが、応援してくれているように感じる音。
お前は、いつだって俺を見てくれてたんだな。
ありがとう、これからも、よろしく頼むよ。
そうして、雨は、静かに、止んだ。
はい、ということで。
完結しましたですはい。
正直、5話終了って言うのが結構難しかったです。
どう表現しようどう進めようーってなるとだいたい困った事に色々頭に浮かぶわけです。
ほぼ一日でストーリー構成して文章に打ち上げてるので、まぁほんと楽しみにしてくれた方は
マダー?マダー?って思ってくれてたと信じます。はい。
あとまぁ、天海くんと潮ちゃん。
最終回で名前だそう名前だそうって思ってたので、ちょっと最終回が雑くなった感じしますが
わたし的にはよし、上手くいったって感じがあるのでプラマイゼロです。
で、Twitter見てくれた人なら分かってくれるかもですが、EXストーリー出します、はい。
それはお楽しみにしておいて下さい。
それでは!また気分が乗れば新しい小説出そうと思うので、お楽しみにしていてくださいねッ!