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rainy  作者: ぴょんす
4/5

とても重いものが、ゆっくりと落ちていく雨

あぁ、そうか、そういう事か

道理で、今も降る『この雨』は、嫌に『冷め切っている』わけだ。

彼女は、まちがってはいなかったんだ。

今日、彼女が言っていた流星群、しぶんぎ座流星群、だったか。


俺の目には、今も重く沈んだ色をした雨雲しか見えてない。

そう、『俺の目』には。


「お母さん!また流れたよ!」

「そうね、あ、ほら向こうにも流れたよ」

「ほんとだ!願い事しなくちゃ!」


さっきから、聞こえてくる。

手すりにもたれ掛かり、上を見る身体とは真逆の方向に目を向ける。

俺の住む部屋の階段から見える広い公園。

子供、大人、様々な年齢層に別れた、他の集合住宅の住民達がそこに集まり、雨が降る空を。






俺には、雨が降っている空を


星の雨が降っているという喜びの声を出して。






一体、いつからだろう。俺は、片手に持った、水の入ったコップを、震えながら、口元に寄せ一口、雨水を当たった筈の、濡れてない髪を後ろに送りながら、考えた。

気づき始めて、ただただ、苦しい。

俺は気づいた、なのに、まだ雨が俺の額を流れる感覚がある。

今朝は弱かったはずの雨は、残酷な程、俺を嘲笑う様に強く降ってくる。あの時、俺を嵌めた同僚の様な…


…同僚に、嵌められた…?

そうだ。あの日からだ。

同僚の失敗を、責任を負わされて会社を辞めさせられたあの日。

あの日から、この雨が降り始めた。


いやまて、ならおれは、今、何をしているんだ?

仕事は、しているはずだ。いや、本当に、働いているのか?

この雨は、俺が見て、感じている偽りの雨だ。


なら、俺が信じているものは、全て、『嘘』なのか?

下を除き流行を知る事のできる、会社の窓。

俺が気に入って座っている、公園のベンチ。

雨を弾きながらやってくる、勤勉なバス。


そして


俺の話を、不思議そうに、驚いたり、笑ってくれた。


彼女は。


本当に、彼らが見ている世界に実在していたのか?


おれは、


本当


この世界に

実在し







気づけば、俺は、雨粒と共に、空から、ゆっくりと離れていた。

もたれていた手すりも、じわじわと遠くなっている。

手に持っていたコップは、俺より上で、中に入った水を散らしながら、空を舞っている。

下からは、なんだろう。

とても、ゆっくりと、空の雲と同じ様な酷く重い音が聞こえる。


薄くなる、意識の中。

濡れていない芝生の感触を頭部で感じながら。

周りから人の声が聞こえる、何を言っているか分からない。

だが、そんな事はどうだっていいおれは、見なきゃいけないものがある。

痙攣する目を無理やり開けて、空を見た。


「は…は、た…し………か…に、ふっ………て…たな…………」


空を、先程まで、黒い雲が覆っていた空を

幾つもの星が、人の不幸を洗い流す雨のように降り注いでいた。

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