第8話 魔法習得【水】
石碑の上に魔宝石が置いてあっら。
この石碑には何が書いてあるんだ?さっぱりわからん。
「俺ってこの世界にきてから字とかまだわからないんだけど何と書いてあるんだ?」
「そういえば、ムツキはこの世界の字をまだ知らないんだっらな。これは、魔の石を取る者はこの下に眠る邪竜に怒りの鉄槌が下される、と書いてある」
この下に眠る、てことは封印されてるってことか。
まあ、ようするに意味はこの魔宝石を取ると、この下に封印されてる邪竜の封印が解かれて襲われるってことか。
「ムツキは字とかの勉強をしたほうがいいな」
勉強か。異世界にきたときくらい勉強からおさらばしたかったな。
「確かに勉強したほうがいいな。じゃないと不便だし」
「それはそうと、この魔宝石、取るのか?」
「んー、取らないと強くなれないし取るか」
「どうなっても知らないぞ」
「ああ、その時はその時だ」
俺は魔宝石を取って魔杖に吸い込んだ。
すると突然、地面が揺れ出し、石碑を中心とした半径三十メートルの地面が崩れ落ちた。
俺たちはギリギリのところで逃れた。
下から竜が羽で上がってくると俺たちを睨んできた。
これが邪竜か。どうやって倒そう。
「あいつは、邪竜ストキラ!」
「あいつを知ってるのか」
「あいつは南の魔王、ラスフィルドが作り出した魔物だ」
「そうか、早く倒したほうがいいな。攻撃をするぞ」
「おう、我が操る火の神よ、今この封印を解く、神よ、邪竜に天から炎を下せ」
「ファイア・ドロップ!」
リナは火を放ったが、邪竜には効かなかったようだ。
「我が操る音の神よ、脳天を貫くような雑音を邪竜に聞かせ」
「ノイズ・マジック!」
これもあまり効かなかったようだ。
これじゃやばい。俺も攻撃しないと。
「水魔法!」
どうやら蚊に刺された程度のダメージすらなかったようだ。
「やばい。これじゃ倒せない」
「どうやって倒すんだよ」
攻撃しながら考えていると突然声が聞こえた。
「ライト・ソード!」
光った剣を持った金髪の男が邪竜に向かって走ってきた。
そして飛んで邪竜を一瞬で何箇所も切った。
「大丈夫か。君たち」
「ああ、なんとか」
「魔杖を持ってるってことは魔宝石を取りにきたんだろ。ここには強い魔物がたくさんいるから気をつけたほうがいい。一体誰があの封印を解いたんだろう」
なんだこの爽やかな人は。
顔だけじゃなく、心までもイケメンかよ。まさに理想の人だな。
俺なんか顔は微妙だし、俺もこんな感じだったら前の世界でもっとモテてたんだろうな。
「あれ、そこの二人、どこかで会わなかったか?」
なんだ?新手のナンパか?
「いや、一度も会ったことないけど」
「そうか?気のせいかな」
「ウェンサルト様、待ってください。速いですよ」
後ろから男二人、女三人が走ってきた。
あの女の子、貧乳だけど可愛いな。
一番タイプだ。
「ごめんごめん、俺はこの後、用事があるからまたいつか会えたら話をしような」
「ああ、助けてくれてありがとう」
こうして無事、水魔法を習得できた。スキルはどんなのがあるんだろう。
俺は視界の右上にある水のマークのアイコンをアップにして確かめた。
スキルは回復魔法でレベル40で習得できるのか。
後は水中呼吸があるのか。これはレベル600で習得できるのか。十分間水に潜れるのか。
それと透視もあるのか。これはレベル50で習得できるのか。
そして浄化か。これはレベル250で習得できるのか。
魔法を習得しても、強くなかったら意味がない。
他にも魔物を倒さないと取れない魔宝石があるだろう。
だったらここは一旦、城に帰ってレベル上げをしたほうがいいかもしれない。
「この調子だと魔宝石を手に入れることは難しいと思うんだ。だから、一旦、城に帰ってそこら辺にいるスライムとかの弱い魔物を倒してレベルを上げてからまたここの来て魔宝石を手に入れよう」
「確かにそのほうがいいかもしれないな」
「そ、そうですね」
俺たちはドライル島を出た。
街を歩いていると周りの人が離れたり、家の窓を閉めたりして隠れたりしていた。
そして俺を見てこそこそと話をしていた。
やっぱりこういうのは不愉快でしかない。
だが、あの時よりは苦しくなかった。
「ちょっと防具屋に行くか。」
防具屋に行くと安心感が湧いた。
「よう、あの時の兄ちゃんじゃねぇか。防具買いにきたのか?」
「いや、みんなに魔王とばれてみんな俺を軽蔑するから安心できる場所に行きたいと思ったらこの防具屋が浮かんだんだ。実際、本当に安心した」
「なんだよ、防具を買いに来たんじゃねえのかよ。俺はお前のダチじゃねえんだぞ」
「それはちょっとショックだな。でも親近感は湧いただろ」
「まあな」
「俺は一旦、東の国に帰ってレベル上げをするから当分この国にはこないだろうな」
「そうか、くれぐれも魔物に殺られないようにな。ところでそこの二人は防具は買っていかないか?」
「今は必要ない」
「即答かよ」
「い、今はお金もないので」
「なんだ、お前ら金持ってなかったのか」
「いや、持ってはいたんだけど、ドライル島にある街を火炎竜が火をはいて襲ってたんだけど、その時に俺が街の守り神である氷の魔宝石を取って火炎竜を倒したんだ。そしたら街が燃えたのは俺が氷の魔宝石を取ったせいとか言い出して、そして修理代として持ってる金を全部払ったんだ」
「そいつは災難だったな」
「本当だよ。ここに戻っても俺が魔王ってだけで恐れて近づかない。むしろ俺がそこを通るとみんな避けるんだよ。俺はこの世界に危害を加えてないし、するつもりもない」
「仕方ない。それがこの世の中なんだ」
俺は他にも話を聞いてもらった。
「ありがとな。俺の話を聞いてくれて、おかげでちょっとスッキリした」
「ああ、次来る時は買い物のためにこいよ」
その笑みがなんか怖い。
「わかったよ。またな」
「あ、ちょっと待て」
「なんだ?」魔王とバレてんだろ。だったらこれ着けていけ」
するとおっさんはフード付きの服を見せてきた。
「いくらだ」
「特別だ。ただでくれてやるよ」
俺のことをそこまで思ってくれてるなんて。
俺は嬉しくてじわっとした。
「ありがとう。この借りは絶対返すからな」
「ああ、楽しみに待ってるよ」
俺たちは防具屋を出ると城の門に向かった。
「なあ、ムツキ。話を聞くなら私たちでもよかったんじゃないのか?」
「いや、女の人に相談するってなんか俺のプライドが許さないっていうか」
「なんだよそのプライド」
「それに俺ってなぜかおっさんとかおばさんに好かれるんだよね。おっさんとかおばさんに囲まれた環境で育ったからその人と話すと安心するんだよ」
「そうなのか」
そうこう話をしていると門まで辿り着いた。
外には出ることはできないとか言ってたな。
「クレア、風魔法であの二人を飛ばしてくれ」
「わ、わかりました」
クレアは風魔法を使って見張りの二人を飛ばした。
そのうちに俺たちは走って東の国、エルメキア王国に帰った。