第6話 魔法習得【氷】
「ご、ごめんなさい。私、ムツキ様の足でまといになってしまって」
クレアが突然、謝る。こういう自虐的な人ってどう接せればいいのか、わかんないんだよな。
とりあえず、俺はその言葉を否定して、褒めた。
「お前は足でまといになんかなってない。それにお前が風魔法を使っていなかったら今頃俺たちも捕まって脱獄すらできなかった」
「そうだぞ、クレア。役に立つことをした時は堂々としてマイナスに考えないでプラスに考えないと」
そんな話をしながら俺たちは寝るところを探した。
「夜だから寝たほうがいいな。街の道じゃ、邪魔になるから山で寝るか」
「そうだな。見張りもいたほうがいいな」
「まずは俺が見張りをするから次にリナで、その次にクレアが見張りをしてくれ」
「わかった」
「わ、わかりました」
「ちなみに三時間ごとに見張りを変えるからな」
二人が眠っている間、俺は見張りをした。
山で野宿か。キャンプみたいだな。俺は前の世界ではキャンプとか刺激的なことしたことなかったからな。新鮮でいい。
三時間経過すると、リナと交代した。
「よろしく頼んだぞ、リナ」
気付いたらもう朝になってた。
「おお、もう朝か、クレア、見張っていてくれてありがとう」
「い、いえ。当然のことをしただけです」
「おい、リナ、起きろ。今からドライル島に行くぞ」
俺たちは準備を整えるとドライル島に向かった。
その途中、道を歩いたとき、家の中で女の人が、ブツブツ言いながら手から火を出して料理をしているのを見た。
「なあ、ちょっと気になるんだけど、村人とかの一般人も魔法って使えるのか?」
「ん?ああ、使えるよ。一個だけだけどね」
「そうなのか。じゃあ、あいつらは魔法を習得するんだ?」
「この世界では生まれつき魔法を持ってる。その属性は人それぞれ。たまに無属性が生まれたりする。その人たちのために魔宝石というものがつくられたんだ」
「え?じゃあ、なんで俺は魔法を使えないんだ。無属性だからか?」
「多分違うな。ムツキは前の世界では魔法は使えたのか?」
「いや」
「だったら違うな。それにムツキは悪魔で召喚されてこの世界にきただけであって転生したわけじゃないぞ。
だから魔法は使えない」
「え〜そうなの?」
できれば召喚じゃなくて転生だったらよかったのにな。それだったらわざわざ魔宝石を手に入れなくても何の苦労もしないで済むのに。
それに俺一応死んでここにいるんだよ。転生といっても過言ではないだろ。ていうか、召喚されるんだったらあんな痛い体験をしないで済んだだろ。
まあいくらそんなことを考えても現実が変わるわけではない。これも仕方がないことなんだろう。
「闇属性の人とかっているのか?」
「ごくごくまれにいる」
闇属性だと悪い性格になりそうだな。
そうこう話をしていると船がある場所についた。
「おっさん、船が欲しいんだが、お金は何枚だ」
「誰がおっさんだ。まあ、いい。船の大きさにもよるけど、この舟なら銀貨七枚だな」
「はい、銀貨七枚」
「じゃあ、ドライル島に行くぞ」
「お前ドライル島に行くのか?あそこは気をつけたほうがいいぞ。あそこにはいろいろな魔物がいるって話だ。その中でドラゴンは街を襲ってたからな。そうとう凶暴だと思うぞ。それでも行くのか?」
まじかよ。その話を聞くと乗り気じゃなくなってきたな。
でも魔法を習得すれば怖くないか。
「ああ、行くよ。俺は魔宝石を手に入れるために行くんだ」
「ということはお前、無属性ということか。今まで損な人生だったな」
確かに魔法があったら前の世界であんなに苦労しないで済んだだろうな。
「気をつけて行くんだぞ!」
「ああ、ありがとな。おっさん!」
「だから俺はおっさんじゃなーい!」
俺たちは舟でドライル島に向かった。
「火の魔宝石は確か、崖にある洞窟にあったと思う」
俺たちは崖に向かった。
向かう途中で街を通った。
ドライル島にも街とか村とかあるのか。大丈夫なのか?魔物に襲われたりしないのかな。
この島はどうやら真ん中に崖の山があってそれを中心に村とか街があるらしい。
洞窟に続く穴が多いな。
この中からどこにあるか見極めるのか?
でも崖にあるって言ってたしわかるか。
崖につくと俺は思った。
崖を登るの大変そうだな、簡単に上る方法ないかな。そうだ。
「おい、クレア」
「は、はい」
「お前の持ってる風魔法でこの崖を上れないかな」
「で、できますが、私も一緒には飛べませんよ」
「それもそうか」
どうやっていけばいいのかな。やっぱり素直に崖を登ったほうがいいのかな。
そんなことを考えているとリナが、
「じゃあ、崖を上った後に召喚魔法を使ってクレアを出すよ」
「確かにそれならクレアも崖の上にいけるし、いいかこれで?」
「は、はい。これでいいです」
「じゃあ、よろしく頼む」
「我が操る風の神よ、今この封印を解く、神よ、この者たちを空まで舞い上がらせろ!」
「アップ・サイクロン」
俺とリナは風にのって崖の上にいけた。
「魔の世界に存在する魔物よ、あの者を魔空間で導いてくだされ」
「サモン・マジック」
すると魔法陣が出てきてクレアの下にも魔法陣が出てきた。
クレアは魔法陣の中に落ちると、ここの魔法陣から出てきた。
これが召喚魔法か。こういう感じとわかっていたけど、実際に見ると興奮が収まらない。
「すげー。これって俺もできるのか?」
「ああ、できるよ」
「じゃあ、どうやって。ドライル島にあったりするのか?」
「いや、それは魔法を習得して、そして戦いでレベルを上げると召喚魔法とかが習得できるようになる」
レベル上げとかまるでゲームだな。レベルってどこでわかるんだ?
「レベルってどこでわかるんだ?」
「視界の右上に書いてある」
「ん?何も書いてないが」
「ああ、それはまだ魔法を習得してないからだ。例えば火魔法を習得すると右上に火のマークがあってその右にレベルが書かれてるんだ。ちなみにそれは他人には見えないんだ」
ますますゲームみたいだな。
ん?左上のアイコンはなんだ。
「この左上にあるこれはなんだ?」
「左上?左上には何も書かれていないぞ」
もしかしてこれは俺だけが持ってるやつ?
「うわっ、びっくりした」
左上を直視するといきなりアップになってHPや、SPが表示されてた。
ステータスみたいなものか。
HPはマックスか。まあまだ一度も戦ってないからな。
攻撃力はレベル1で経験値は0で防御力は10でMPは1か。
ん?なんで防御力がそんなに高いんだ?
「なあ、防御力が高いんだが、なんでだ?」
「防御力?ああ、生まれつき魔法を使えない人だけが持ってる防御魔法が原因じゃないのか」
へぇ、防御魔法か。
ていうか、よく見たらマークがないから透明なだけでちゃんと右上にアイコンがあるじゃないか。
俺はそのアイコンを直視してアップにして確かめた。
防御魔法と書いてあり、レベル5と書いてあった。
どんなスキルがあるかも書いてあった。
防御魔法の場合は耐性とか無効が習得できるのか。
火耐性に水耐性と風耐性と氷耐性と雷耐性と光耐性と闇耐性、そして毒耐性と音波耐性か。
これは魔法を習得するとその魔法の耐性がつくのか。
無効は痛覚無効とか味覚無効と視覚無効に臭覚無効、聴覚無効て書いてあるけど役に立つの痛覚無効くらいだよね。
危険察知と身体強化もあるのか。
書いてあるのはこれくらいか。
「じゃあ、洞窟にいくか」
俺たちは高さ百九十センチの洞窟に入った。
俺は百七十センチだから結構ギリギリだな。
「この洞窟の中にあるのか?」
「ああ、確かこの洞窟に書いてあったと思うけど」
さっきから宝石みたいなのがいたるところにあるけどこれは違うのかな。
「リナ、さっきから無視してるけどこの宝石とかはその魔宝石じゃないのか?」
「これは魔宝石じゃなくて魔結晶という物なんだ」
「何が違うんだ?」
「魔宝石は魔法を習得するのに使う。そして魔結晶は魔剣とかを作るのに使うんだ」
「必要になるかもしれないから取ったほうがいいんじゃないか」
俺が魔結晶を取ろうとするのは剣が使いたいからだ。
剣は男のロマン。使いたいって思うのも仕方ない。
「荷物が増えるだけだ。それにツルハシがないからな」
くそー。バッグ持って来ればよかった。
また今度か。次来る時はツルハシとバッグ持って来よう。
奥に進むと錆びた鎖が落ちてた。その先は全体的に広い洞窟になっていた。
「あれ、おかしいな。ないぞ」
「別の場所か?しっかりしてくれよ」
俺は戻ろうと振り返ると赤いドラゴンがリナに向かって襲いかかろうとしたいた。
「リナ、危ない!避けろ!」
リナはギリギリで避けた。ふう、危なかった。
「なんだ、こいつ。ドラゴンか。こんなやつ私の火で倒してやる。私が操る火の神よ、今この封印を解く、神よ、我よりでかく、太陽より小さい巨大な炎を解き放て!」
「ビッグ・ファイア!」
リナは火の魔法をドラゴンに放った。
それが原因でドラゴンはより強くなってしまった。
「馬鹿か!さらに強くさせてどうするんだよ」
「こ、これは風でも火でも倒せません」
「逃げるぞ!」
あいつはでかいからこの小さい道は通れないはず。
と思ったけど後ろで岩が砕ける音がたくさんしていた。
多分、無理矢理通ってるんだろう。
俺たちは洞窟を抜けると崖を降りた。
「とりあえず、洞窟に隠れるぞ」
死角になってるところに曲がってそこにある洞窟に隠れた。
大きな足音が聞こえた。
その足音が小さくなったところで俺たちは洞窟を出た。
「火の魔宝石はあそこにあったんだ。でもあのドラゴンはいなかったぞ」
「もしかしたらあのドラゴンが火の魔宝石を飲み込んだのかもしれない」
「もしそうだったら、火の魔宝石を手に入れるにはあのドラゴンを倒さないといけないのか」
「確か氷の魔法があったよな。まずその魔法を習得してあのドラゴンを倒そう」
「そうだな」
「そ、そうですね」
氷の魔宝石ってどこにあるんだ?
「氷の魔宝石がある場所とかわかるか?」
「悪いが、それはわからない。手がかりを探すために街に行って話を聞くか」
「ついでに杖があったら買うか」
「杖といってもただの杖じゃないぞ。魔杖じゃないとダメなんだ」
「そうなのか?それってどんなやつなんだ?」
「魔宝石を吸い込むガラス玉がついてる杖じゃないとダメなんだ」
「魔宝石七個手に入れるから七個必要じゃないか?」
「いや、一個で十分だ。ガラス玉に七個の魔宝石、全部吸い込むことができるんだ」
へぇ、そんなことができるのか。さすが魔杖。
俺たちは話を聞くために街に行った。
「まずは魔杖を買いにいくか」
「占い屋に魔杖があるんだ」
俺たちは占い屋に行った。
そこには魔女の服を着たおばさんがいた。その前に机があって水晶が置いてあった。
いかにも占い屋って感じだな。
横には本棚があって、魔術書がたくさんあった。
「なんだい、あんたたち。見ない顔だね。占いしに来たのかい?」
「いや、おばさん魔杖が欲しいんだけど」
「誰がおばさんよ」
どう見てもおばさんなんだが。
「そんなことより魔杖ないの?」
「そんなことって、まぁいいわ。魔杖なら後ろのこれよ」
後ろの壁に五本の魔杖が並べられていた。
「ああ、これか。いくらだ」
「紙見ればわかるとおり銀貨五十枚ね」
「持ってるか?」
「持ってるけど、これ買うと残り少ないぞ」
「もうほとんど買う物はないから足りるでしょ。はい、銀貨五十枚」
「毎度あり。ここは魔術のことについて書かれてる魔術書がたくさんあるよ。見てっていかない?」
「ちょっと見ていくか」
俺は魔術書をとって表紙を見た。
読めない。
そういえばこの世界に来てまだ文字とか見てなかったな。
「それって予言書じゃんか。持ち主のことを予言してくれるから心構えができていいんじゃないか?」
「へ、へぇ〜確かに予言とかが書かれてる。これ買うか」
「あれ、最初は何も書かれてないんだ……」
「お金はいくらだ」
俺はリナの話をなかったようにするために話を遮った。
「金貨一枚だよ」
「はいお金。ところでおばさん。氷の魔宝石ってどこにあるか知ってる?」
「あんた、魔杖を買いに来たってことはやっぱり無属性ね。氷の魔宝石はこの街の中心に祀られてるからとらないほうがいいわよ。あの魔宝石はこの街の守り神みたいな物だからね」
「なんで守り神なんだ?」
「この街に火炎竜が火を履いた時に氷の魔宝石が火を消したからよ。最近は来なくなったけど。もしかしたら封印されてるのかもね。でもその封印が誰かに解かれたり強くなって自分で破るかもしれない。。だから悪いけど諦めたほうがいいわね」
封印?まさかあの洞窟に落ちてた鎖って封印するのに使ってたってことなのか?
「そうなのか。でも、今の俺は氷の魔宝石がどうしても必要なんだ」
「ただ氷の魔法が欲しいってわけじゃなさそうだね。何か理由があるのかい?」
「ああ、実はこの街に来る途中、ドラゴンに追われたんだけど、もしかしたらそのドラゴンはさっき言ってた火炎竜かもしれない」
「ほっとくと他の街が燃やされるかもしれない」
「それは大変だね。この街の領主に伝えないと。でもちゃんと聞いてくれるかどうか」
「とりあえず、行ってくる。話を聞いてくれてありがとう」
「またいつか来てね」
俺たちは占い屋を出ると領主のいるところに行って話をした。だが、ちゃんと聞いてもらえなかった。
「だから、火炎竜の封印が解かれたって。他の街が燃やされるかもしれないって。だから火炎竜を倒すために氷の魔宝石をくれって言ってるんだ。ちゃんと話を聞けよ」
「だからちゃんと聞いてるだろ。要するに氷の魔宝石が欲しいんだろ。だが、駄目だ。氷の魔宝石失うとまた街が燃やされてしまう」
「だから他の街が燃やされる可能性があるって!」
「それは他の街だろ。他の街が燃やされてもこの街が困ることは何もない」
「なに!」
バンッ!
外にいたリナがドアを開けてこう言った。
「火炎竜が攻めてきたぞ!」
「何をそんなに慌ててる。氷の魔宝石があるから大丈夫だろ」
「それが火炎竜が放った火で家が燃えてるんだ」
「バカな。そんなわけない。火がついてもすぐ消えるはずだ」
「まさか封印されてるときに強くなったのか?見ろ。あんな悲惨なことになるから氷の魔宝石をくれって言ってるんだ。俺が氷魔法であいつを倒したらもうあいつに怯えながら生活することもない」
「………わかった。くれてやる」
俺は街の中心に行って氷の魔宝石を取った。
「どうやって吸い込ませるんだ?」
「ガラス玉に当てれば、吸い込ませられるんだ」
急がないと街がどんどん燃やされてしまう。
俺は氷の魔宝石をガラス玉に吸い込ませるとドラゴンのいるところに向かった。