第4話 マルセイア王国
明日北の国に行くか。俺はそんなことを思いながらベッドの横になった。
「今日はもう寝るか」
朝になると俺は魔王の服に着替えて準備をした。
それにしても魔王の服って同じのしかないじゃんか。
「それじゃあマルセイア王国に行くか」
「ムツキはまだ魔法が使えないから私がこの火魔法で守ってやるよ」
「なんでそんなタメ口なの?俺一応魔王だよ。まあ別にいいけど。魔法が使えないからしっかり守ってくれよ」
「私はここに残って城を守っています」
「ああ、頼んだよ。リナ、クレア行くぞ」
「おう」
「は、はい」
俺たちは門を出るとマルセイア王国に向かった。
街並みとかまさに異世界って感じだな。
あそこがマルセイア王国の門だな。
門の横に二人、人が立ってた。
「誰だ、お前たちは」
「え?ああ、俺はまお……」
「ちょっとちょっと」
「なんだよ」
「自分が魔王ってことはあまり言わない方がいいぞ」
「え?なんでだ?」
「街に入れなかったりするんだよ。それに何より魔王は他の魔王を嫌うから戦うことになるかもしれない」
「どういうことだよ。魔王は俺だけじゃないのかよ」
「いや、それは違うな。この世界は東西南北にそれぞれ魔王がいるんだ」
「マジかよ。じゃあ、俺はどこの魔王なんだ?」
「東の魔王だな」
「何をこそこそ話してるんだ」
「あ、えっと俺たちは商売人なんだ」
「魔王がいる国に商売人がくるわけないだろ」
「しょうがないだろ。思いつかなかったんだから」
「なんだ商売人か、だったら早くそう言えよ」
「なんかいけたみたいだぞ」
「馬鹿だからだろ」
「あいつが新しく召喚された魔王か。せいぜい俺を楽しませてくれよ」
「サムンクルーガ様、あいつらに攻撃しますか?」
「いや、まだ踊らせておく」
「魔王の服着てるのになんでバレなかったんだ?」
「他の魔王と自分の国の人以外は知らないんだよ」
「そうなのか。ドライル島って一体どこにあるんだ」
「地図見ればわかる。クレア、地図くれ」
「は、はい」
「真ん中城があるからここから北東のとこに島があるからここだな」
「じゃあ、そこに行くか」
ドライル島に行く途中、一般人を何人も見た。
魔王がいる国なのになんで一般人がいるんだ。
「なんで一般人がいるんだ?外の村とか街に逃げたりしないのか?」
「外に逃げられないようにしてあるんだよ。だから厳重な壁になってるんだよ」
酷いことするな。まあ、俺も実際そういう立場なんだよな。だが、俺は絶対そんなことしない。
俺はそう心に誓った。
「あいつら何やってるんだ?」
命令してる人とそれに従う人か?なんか気になるな。ちょっと近づいてみよう。
「おい、遅いぞ!もっと速く運べ!」
「申し訳ありません。鞭で叩くのだけは勘弁ください」
「だったら速く運べ!」
バチン!
あいつ何してるんだ。まるで奴隷じゃないか。
「おい、お前何してんだ!」
「なんだお前は」
「俺は魔王だ!」
「おい、やめろ。正体をバラすな」
あ、やばい。ついカッとなって魔王ってことをバラしてしまった。
「何、魔王だと!」
「あ、いや、今のは」
「一旦逃げるぞ」
「あ、待てー!魔王!」
「え、魔王?」
「魔王がいるのか?」
やばい。俺が魔王ってことがみんなにバレる。それじゃあここにいられなくなる。
「俺たちはサムンクルーガ様に報告しに行くぞ」
「待てー!」
「しつこいなー攻撃するか?」
「わ、私に任せてください、我が操る風の神よ、今この封印を解く、神よ、悪しき者に音速の風を送れ!」
「サウンド・スピード・サイクロン!」
それってわざわざ言いまいなのか?なんか面倒くさいな。
どうやら風に飛ばされてどっかいったようだな。
「なんとかまけたみたいだな。お前の風魔法のおかげであいつを殺さずにまぬがれた。ありがとな」
「い、いえ別にそんな大したことはしてませんよ」
「どこいった」
「まだ遠くへ行ってないはずだ。探せー!」
「やばいことになってしまったな」
「ムツキが正体バラすからだろ」
「それは本当にすまん。それよりこの世界には奴隷がいるのか⁉︎」
「……このせかいは弱肉強食だ。弱い者が強い者に食われるように奴隷も奴隷使いにこき使われるんだよ」
「それっておかしいだろ。弱者が報われないなんて間違ってる」
「それは同意する。でもだったらなんであの奴隷使いを殺さないんだよ矛盾してるだろ」
リナは怒ったようにそう言った。
「奴隷を使うのは駄目だけど、殺すのも間違ってる」
「ムツキは優しすぎるんだよ。ああいう奴は一回懲らしめたほうがいいんだよ」
「ふ、二人とも落ち着いて」
「あそこにいたぞー!」
「くそ、話は後だ。逃げるぞ」
ーなんであの奴隷使いを殺さないんだよー
リナが言った言葉が脳裏に過ぎった。
やっぱりおかしいだろ、そんなの。殺すなんて絶対やってはいけないことだ。他に解決する方法があるはずだ。
俺はそんなことを思いながらリナとクレアと街に逃げた。