第1話 死亡
俺は矢水 睦月。十九歳だ。
努力して勉強した俺は晴れて大学に入学できた。
今思うと大学生になる前の高二までは真面目過ぎる優等生だったな。
今は授業や勉強はちゃんとしてるけど遊んだりしてる。
同じ趣味の友達もできた。
漫画の面白さを知った俺は今は完全にオタクだ。
そんな俺は今、本屋にいる。
俺は漫画の中でも異世界とかのラノベが好きだ。
小説のは文字だらけだから読まない。嫌いじゃないけど漫画のほうが好きってことだ。
前は小説を読んで漫画なんて読んだことなかったけど、今思うと損なことしたなって思ってる。
それはさておき何だ?横の奴が俺のことをジロジロ見てる。
「お前、睦月じゃないか?」
「え?なんで知ってるんだ」
「ほら、中学の時一緒だったあの」
「ああ、お前か〜」
「そうそう」
「で誰だっけ」
そいつはガクッとする。
「ほら人見知りで暗い性格だった手塚 勇希だよ」
「ああ、思い出した。あの話しかけんなオーラ出してた勇希か」
「そうそう。やっと思い出したか」
髪型とかでわからなかった。赤に染めてるし。
「お前変わったな。人と話すことすらおどおどして声も小さかったのに。今は自分から話しかけるようになって」
「まあ、俺は努力したり周りの環境で変わることができたんだ」
この男は俺が中学の時、三年間ずっと一緒だった勇希だ。
その時は暗い性格でずっと一人だったはずだが、今はこんなに明るくなっていた。
「その調子だと今は友達はいそうだな」
「失礼な。前から友達はいたよ。二人だけだけど」
「少な!」
「で、でも多くてあまり信頼してないより、少なくて信頼してるほうがいいだろ」
いいな。俺は友達なんていなかったからな。勉強ばかりしていて友達なんて作らなかった。
あの時の俺に言いたい。
勉強も大事だけど趣味を持ったり遊んだりすることも大事だと。
「睦月も変わったな。あの時は超真面目で一度も休むことがなかったのに」
「まあな。俺も変わったんだ。趣味を見つけて」
「どんな趣味なんだ?」
「漫画。といっても異世界物だな」
「それって俺と同じ趣味じゃんか」
「そうなのか?これも何かの縁。俺たち、友達にならないか?」
「そうだな。今のお前と話をすると楽しそうだ。いいぜ。友達になろう」
こうしてまた、友達ができた。
「じゃあ、またな」
「ああ、またいつか会おう」
俺は漫画を買うと店を出た。帰り道の途中の横断歩道で青になるのを確認すると渡った。
キー!
ドンッ!
あれ、何だか体が熱い。視界が赤い。
何だか周りが騒がしい。
みんなが俺を心配したように見ている。
一体何が起こったんだ。事故ったのか?
俺、死ぬのか?
ようやく俺の楽しい人生が始まったというのにもう終わるというのか?
いやだ、まだ死にたくない。
その途端、俺は死んでしまった。