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格差社会における異世界転生について  作者: ゆきしろ
第一章 ~アーデルハイト~
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~他者視点 フリッツ~

「危ない!!」


 姫様へと向かって投げつけられた石の進路を、身をもって遮ると、軽い衝撃ともにこめかみが熱を帯びる。幸い、小石であったため大事には至らなかったものの、熱さが顔を流れ落ちるのを感じた。

そして首謀者――幼い少年は直ちに兵たちに確保され、地面へと押し付けられた。


「お待ちなさい!それ以上は必要ありません!」


 そのまま首を刎ねられてもおかしくない所を、姫様の制止が入る。


「身柄の確保に止めて下さい。後で私が直接話を聞きますので、あまり手荒な真似はしないように。」


「しかし!御身に害を為そうとしたものを……。」


「命に従いなさい!

 ……さて、他に私へ何か仰りたい方はおられますか?

もし何かありましたら、後でも良いので遠慮なく私の所までお越し下さい。お話を伺わせて頂きますわ。」


 姫様は凛とした声でそう告げ、周りを囲んでいる町民たちをゆったりと見渡されました。誰からも声が上がらないのを確認すると、軽く会釈をされ、何事も無かったかのように移動を再開されました。自分たちも、それに従い動きだします。


「……大丈夫ですか、フリッツ?庇って下さってありがとうございました。後ほど、治癒を施して差し上げますので、暫く間我慢を。」


「いえ!御身に何事もなく幸いでした!この程度の傷、舐めていれば治りますので、お手を煩わせる訳にはいきません!」


 小声で自分を労って下さる姫様に自分は感激を覚えましたが、辞意の念を告げさせて頂きました。


「……くすくす。自分の額をどうやって舐めるというのです?私が気になるから治療するだけです。フリッツは黙って私の自己満足に付き合って下さればよいのですよ。」


「……は、はい!承知致しました!光栄であります!」


 その後は大きな問題は起こらず、姫様は順調に会談を終えられました。後程、同僚から聞いた話によると、子供は昨今の改革を快く思っていなかった地方貴族に利用されただけだという事が判明し、ある程度の罰は与えられたものの、命までは取られずに済んだとの事でした。勿論、貴族の方には厳重な処罰が為されたとの事です。

 弱者の事を考え、いたわって下さるその御心にはいつも感動を覚えます。自分を拾い上げて下さった事もそうです。

 自分が初めて姫様とお会いしたのは、ご自身の発案で開設された学校を姫様が見学に来られた時でした。自分は開校時の初期生として学校に在籍しておりました。学校での勉強は難しく、四苦八苦しておりましたが、一つ物を知る度に世界が広がるようで、それがとても嬉しく・誇らしく、充実しておりました。また、そんな機会を下さった姫様への感謝は言葉では言い尽くせません。


「皆さん。顔を上げて下さい。私は皆さんに傅かれたくてここに参った訳ではありません。この国の未来を背負う皆さんの、お顔を拝見しに参ったのです。」


 総出でお出迎えし、並んで頭を垂れていた自分たちに対し、姫様はそうお声を掛けられました。怖る怖る顔を上げた学生一人ひとりに視線を送りながら前へ進まれた姫様は、何を思われたのか、自分の前で立ち止まれました。そして、お付きの方と言葉をかわされた後、自分の方へと顔を向けられました。


「フリッツ。私の騎士団に入って頂けませんか?」


 憧憬の念とともに見入っていた自分に、姫様はそう声を掛けられました。


「申し訳ございません。いきなりこんなことをお願いしたら、混乱してしまいますよね?

 詳しい事は奥で説明させて頂きますので、まずは話だけでも聞いて頂けませんでしょうか?」


最初は戸惑いましたが、姫様の御心の内を理解すると、自分のような平民、孤児院出身者にも道を作って下さる姫様の御心遣いに感服しました。自分のようなものでお役に立てるのか不安があったものの、この事が学校――孤児院の皆の希望になればと思い、引き受けさせて頂きました。

 剣の腕も、魔法も、智謀も、同僚の皆さまには遠く及びませんが、少しでも大恩ある姫様のお役に立てるよう、精進を続けていく所存です。

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