でっかい蛇
俺たちは四人で森を歩いている、
もうそこそこ歩いているが、目的の蛇は見つからない。
「・・・止まってください」
サリアさんが皆を止める。
「どうしたサリア?」
「います・・・・エンシェントグラウンドスネークです・・・」
デビットの問いに答えたサリアだが、少し焦ったような顔をしている。
「どこにいるの?」
「・・・・・ここの・・・真下です」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
サリアがそう言った瞬間、突如地面が揺れ始めた。
「ごめんなさい!気付くのが遅れました!」
「謝るのは後でいい!一か所にいるとやられるぞ!ちらばれぇ!!」
おぉう・・いきなり戦闘が始まってしまった。
一先ず後ろにバックステップ。
ズボォォオオオ!!!
突如周辺に土が飛び散り、先ほどまで自分がたっていた所から巨大な蛇が地面から出てきた。
あそこにいたら死んでたなこれ・・・怖すぎだろ・・。
つかでけーなおい・・・胴回り直径五メートルはあんじゃねーか?
これぞ魔物、まさに怪物。
「『サンダー』!!」
これを倒せば街に行ける、そう思えば体も動くというもの。
ちなみに、こいつは炎系が効きにくいらしい。
途中で教わった。
「もう一回!『サンダー』!!」
しっかりとダメージは入っているようだ。
ギロッ
「!?」
完全にこちらをターゲットに定めた。
いったん攻撃を止めて逃げに徹しよう・・・・そう思った時。
「お前の相手はこっちだ!!」
そう言ってデビットが巨大な蛇の顔に向かって切りかかる。
その攻撃をくらった蛇は、そのままターゲットをデビットに変える。
何というイケメン、イケメンなのは顔だけではなく、戦い方もイケメンだった。
「『アイスニードル』!!」
気の強そうな女性が魔法を使ったようだ。
剣をもっているからてっきり剣で戦うのかと思ったが・・・。
ガガガがガガガッ!!!
空から氷の棘が無数に降り注ぐ。
蛇に直撃はするが刺さってはいない。
効いていないのでは・・・と、思ったが、蛇の動きが明らかに鈍くなっている。
氷が当たった場所が白くなっているのがわかる。
当たった場所が凍っているのだ。
結構凶悪な魔法だな。
蛇は、自身が不利だと感じ取ったのか、大暴れし始めた。
逃げようとしているようだ。
そこで、俺の目にある光景が映る。
蛇の尾が、サリアに向かっているのだ。
蛇も、狙ったわけではない様だ。
たまたまサリアがいた・・・それだけなのだ。
「サリアさん!!!」
ファイアーはおそらく効かない。
サンダーはこいつの尾を吹き飛ばすほどの威力は無い。
頭でそう理解した時、身体は勝手に動いていた。
気が付いた時には、俺はサリアを突き飛ばしていた。
なぜ助けたんだろうか・・・会ってから数時間しか、経っていない。
何か話したという訳ではないし、仲がいいわけではない。
自分でもわからないが、身体が咄嗟に動いたとしか言えない。
今からでは自分の回避は間に合わないだろう。
サリアが自分を驚いた顔をしてみているのがわかる。
自分の周りがとてもゆっくりに感じる。
パンッ!!
そんな軽快な音と共に、俺は弾き飛ばされた。
死んだ・・・そう思った。
「ん?え?・・・・生きてる・・・」
結構吹き飛ばされた。
放物線を描いて、そのまま落下したところまでちゃんと覚えている。
「・・・えぇ~・・・」
ボディ・エンハンスには防御力を上げる効果はない。
となると・・・
「今着てるやつが特別なものだったか・・・それとも身体がメチャメチャ丈夫なのか・・・」
おそらくその両方だと・・・思う。
・・・多分。
何となくそんな感じがする。
こりゃあ街に行ったら新しい魔法を覚えるのと同時進行で、身体についても調べないとな。
体については、研究資料を見ればわかるだろう。
まさか異世界に来てまで、本格的に勉強しなければいけないとは・・・。
でも、しっかり勉強しないと、資料がさっぱり理解できないし・・。
「・・・・今はこんなこと考えてる場合じゃなかったわ」
早く戻らないと・・・。
飛ばされた方向は覚えているので、蛇と三人がいる方向に俺は走った。
近くまで来たが、戦闘音は聞こえない。
あの分だと無事に倒したのだろう。
おっ!見えてきたぞ。
「お、お~い。大丈夫~?」
そんな感じで声をかけながら近づいてみる。
すると、サリアが走って近づいてきて、そのまま抱きしめられた。
おおう、幸せな感触が当たってる・・・・・自分にもついてたな、すっかり忘れてたぜ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。私の・・・せいで・・」
ふむ~、これは予想外だぞう。
泣きながらずっと謝っているな・・・どうしよう。
「なんともなかったので・・・謝らなくてもいいんですよ?」
「でも・・・」
「・・・・・正直にいって、どうしてあんなことをしたのか、自分でもわかりません。でも・・・・・少なくとも、あなたに泣いて謝ってほしかったわけじゃないと思います。ほら!誰かに助けてもらった時は、なんていうんですか?」
「・・・・・あり、がとう」
涙は止まっていないが、少し笑ってくれた。
うまく対応できただろうか・・・。
「えぇ、どういたしまして。あなたが無事でよかった」
俺は出来る限り笑顔でそう言った。
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「で?あなた本当に人間?」
「じ、自分は人間だと思ってます・・・」
まぁ、こうなりますよね。
いきなり現れたと思ったら何もわからないし、蛇の攻撃をくらっても無傷とか・・・・俺だって、こんなの現れたら怪しすぎて逃げたくなる。
しかしまずいな・・・俺は街に行きたいだけなんだが・・。
「・・・・まぁいいわ。身を挺して誰かを守るなんてそう簡単に出来る事じゃないし、約束はちゃんと守るわ」
「・・・・え?」
「なによ?」
「あ、いえ!なんでもありません!」
やったぜ!
街に行ったらどうしようかなぁ。
「お~い!とれたぞ~!」
蛇の所で何やら作業していたデビットが何かを持ってきた。
何を持っているんだろう?
あれは・・・・・魂魄結晶?いや、ちょっと・・・・違うか?
でもすごく似てる。
俺はどうしても気になったので何か聞いてみた。
「あの~、それなんですか?」
「え?何って魔石だよ。コイツが今回の目的の物だったんだ。これを納品するのが今回の依頼なんだよ」
「へ~」
ふ~む、魔石というのか。
外見は魂魄結晶と本当にそっくりだ。
それにしても・・・他の素材はとらないんだろうか・・・なんだかもったいない気がする。
「あの蛇の他の素材はとらないんですか?」
「あぁ、売れるところが多いから持って帰りたいんだけど、鱗一枚でもそこそこ大きさがあるし、ここから街まで結構あるから、かさばるものは持っていけないんだよ」
「・・・・なるほど。・・・・先ほど鱗をたとえに出しましたが、鱗は売れるんですか?」
「ん?あぁ売れるよ。一枚でもそこそこの値段で売れるし、まとまった数で売ればちょっと高めに買ってくる事もあるよ」
よし、持っていこう。
それも全部だ!俺にはこの巾着袋がある。
フフフ・・・剥ぎ取りの時間じゃあああ!!!
俺は巾着袋から装飾が施された高そうな短剣をだし、死んだ蛇の鱗を一枚一枚剥がしては袋に詰めていく。
「え?今どこからその短剣を・・・・!?まさかその袋は!?」
俺を見ていたデビットが袋を見て驚いている。
「その袋って、もしかして収納袋かい?」
「?名前はよくわかりませんが持ってました。結構貴重なモノなんですか?」
「あぁ。市場では、いつもかなりの金額で取引されているよ。それを作れる人が少ないのさ。いや・・・正確にはいっぱいいるんだけど・・・そこまで沢山入るように作れる人がいないんだ。大体が気休め程度にしか収納スペースを拡張できないんだよ。例えば、リンゴが10個入る袋が11個入るようになるとか・・・・その程度なんだ」
へ~、なるほど。
「持っているのは、それこそ人間離れした力を持った冒険者とか、大商人とか、お金持ちの貴族くらいだよ」
これ高いのか。
手に入れたときは便利だなぁ程度にしか思ってなかったな。
そうだ。
「よければ上げましょうか?」
「え?」
「実はもう一つあるんですよ。街まで連れて行ってくれるお礼に、と思ったんですが」
実はこれと併せて後3つあるが、個数は伏せておく。
「いや、でも・・・・・ダメだ。そんなに貴重なもの、俺なんかが受け取れないよ」
「・・・・そうですか。わかりました、では今のはなかったことに」
「それはとても高価なものだ。街に行ったら、あまり人前では使わない方だいいよ。狙ってくる奴がいるかもしれないから」
コイツはおそらく、根っからの善人なんだな。
貴重だとわかってるんなら、わざわざ教えずに、そのまま貰う事も出来たのに。
そんなことを考えながら、俺はせっせと鱗を剥いでは袋に詰めていった。
明日の更新はちょっと厳しいです。