引き換え
冬休みに突入。
「はぁ・・・あんたはほんとにお人よしね。今度はこの女の子を助けたってわけ?」
「いやぁ、あはは・・」
話を聞いている限りだと、どうやら何度も人助けをしているようだ。
それにしても冒険者か・・・やっぱりいるんだなぁ。
でもなぁ・・・おそらくだが、俺の実力なんて今の段階じゃあ大したことはない。
戦って食っていくなんて無理だろう。
「はぁ・・・まぁいいわ。・・・で?あんたは何者よ?」
・・・・ターゲットが俺に切り替わった。
ほんと・・なんでこういう時の設定考えておかなかったんだ俺・・・。
「えっと・・・ごめんなさい。自分でもよくわからないんです・・・」
さっきもこのデビットと名乗る男に様そう言ってしまったため、今更変えようがないので同じことを言う。
「・・・・・さすがに怪しすぎない?」
「うっ・・・」
この子は警戒心強いな。
これは困ったぞ・・・・・俺は街に行きたいのに・・・。
この人たちに送ってもらおうと考えていたが・・・最悪、街の方向だけ聞いて一人で行くことも視野に入れておこう。
「しかし・・・悪い人とは思えません」
「それはいつもの勘かしら?」
大人しめの美人さんが俺をかばってくれている。
意外な所からの援護射撃でちょっと驚く。
「ほら!サリアもこういってるし、大丈夫だって!」
「ちょっと黙って」
「はい・・・」
仲いいなぁ、この三人。
悪い人じゃなさそうだし、出来ればこの三人に街まで送ってもらいたいなぁ。
それに・・・ここがどこかもわからないのし、他に人に会えるかもわからない。
この運を逃してはいけない・・・と思う。
そして、あの美人さんはサリアというのか、覚えた。
「それで、あんたは・・・これからどうするの?」
「街に行くつもりです」
俺は正直に答えた。
あわよくば連れて行ってくれないかな~・・・なんて。
「・・・・・そんなに街に行きたいの?」
「はい!行きたいです!」
・・・・ん?
「・・・声に出てましたか?」
「顔に出てたわよ」
おうふ・・・これからは気を付けねば・・・。
「いいんじゃないか?連れて行こう!」
「ちょっと黙って」
「はい・・・」
いつもこんな感じなのかな?
「私も、街に連れていくのは反対しません。ですが、依頼はどうするのです?」
「あっ・・・そうだ。俺たち依頼の途中じゃん」
「依頼?」
どんな依頼なんだろう?
「そ、討伐依頼よ。エンシェントグラウンドスネークっていうでっかい蛇よ」
「この森にいるんです?」
「いるわ」
・・・・・ついて行きたくねぇ。
余計にこの森を出たくなった。
なんて所に住んでんだあの女・・・。
さっきのでっかいカラスといい・・・・・この森どんだけ魔境なんだよ・・・。
・・・そういや絵が付いてる魔物図鑑みたいな本があったような・・・・・あとで調べてみるかね。
「依頼の途中だけど、この子をこの森に放置するわけにもいかないだろう?何とか連れていけないか?」
デビットが意見を求めている。
「・・・ねぇあなた・・どれくらい戦える?」
「え!?」
戦えるかだと?・・・・・ん~・・。
「・・・魔法が・・・・いくつか使える程度です。でも・・・自分の魔法では、あそこに死んでいる奴に傷一つつけられませんでしたし・・・」
そう言って俺はすでに死んでいるカラスを指さす。
「ちょっと使って見てくれない?」
「?いいですけど・・・」
まぁ、問題ないだろう・・・多分。
「ふぅ・・・『サンダー』!!」
ドゴォオオン!!!
バキバキバキ・・・・ズサァァ・・・
「・・・」
「「「・・・」」」
・・・直撃した木が倒れた。
でもなんでだ?カラスに使った時はこんな威力じゃなかった。
見た目とか、撃った時の感覚は変わってない。
となると・・・・あのカラスが特別だったのか?
いや・・・単純にあのカラスが強いだけかもしれん。
「・・・・・ねぇ、今のサンダーに見える?」
「見えなかった・・・あれ?サンダーって雷系の初級魔法だよな?」
「私にも見えませんでした。それと、サンダーは初級魔法であっていますよ・・・」
おっ・・・と?やっぱり普通じゃないのか?
「ねぇあなた・・・・ほんとはあのサンダークロウ、一人で倒せたんじゃないの?」
「え?む、無理ですよ!?この魔法使って全然効かなかったんですよ?」
「そりゃそうよ。サンダークロウの羽毛は雷を殆ど通さない特性を持ってるのよ?」
「なん・・・だと・・・」
知らなかった・・・。
ちゃんと勉強しよう、うん。
「他には何か使えないのか?」
「えっと・・・・・攻撃魔法はあともう一つだけ」
「そちらも見せてもらえませんか?」
「あ、はい。・・・・・『ファイアー』」
ボォオ!!ヒューー・・・・ボゴォォオオオン!!!
着弾したところで爆発した。
どうしてこうなった!?
地下で練習してた時はこんな風にならなかったぞ!?
もしかして・・・・・あの地価が特殊だったのか?
「えっと・・・・どうしてこっちをサンダークロウに使わなかったの?」
「ほ、ほらその・・サンダークロウって動きが早いじゃないですか。だから撃ってから即着弾してくれるサンダーの方だ当てやすくてそっち使ってました、はい」
「一応、考えて使ってたのね・・・」
「・・・あ!でもこれなら連れて行っても大丈夫じゃないか?」
「他には何か使えないの?」
他・・・・あと一つしかないけど・・・。
「あと一つだけなら・・・・身体能力を強化する魔法があります」
「それって今使える?」
「さっきから使ったままですよ?」
カラスから逃げたときから解いてないままだからな。
「街にまで案内してもいいわよ。その代わり、この依頼にもついてきてくれるかしら?」
「えっと、まぁ、はい。問題ないです」
「二人もいいわね?」
「おう!」
「大丈夫です」
ふぅ・・・・ターゲットがどれくらい強いのか聞いてから返事すればよかったなぁ・・・。
やらかしてばっかりだな・・・。
思ったより短かった。ごめんなさい。