まさかの事態・・・
予定外に午後が暇になってしまったので投稿できました。
ブックマークしてくれた方々、ありがとうございます。
受付の人・・・もとい、ジェネスさんに案内された部屋に入る。
「来たかジェネス・・・その嬢ちゃんが、お前さんが言ってた子か」
部屋に入ると、そこそこ広い部屋の真ん中に置いてある長テーブルの一番奥に座っていた偉そうなおっさんが受付の人・・・ジェネスに声をかけてきた。
「はい。人柄も実力も申し分ないかと」
「ふむ・・・まぁ、お前が連れてきた人材なら大丈夫だろう・・・お嬢ちゃんは空いているところに座ってくれ。ジェネスはこっちで手伝ってくれ」
「了解しました」
あの偉そうなおっさん、やけに受t・・・ジェネスさんを信頼してるな・・・。
ジェネスさんも素直にいう事聞いてるし・・・どんな人なんだろう?
長テーブルに座って、この部屋に居る人の様子を見てみる。
20人近くいるが、みんなとても強そうな人たちだ。
部屋を見渡していると、ある人物達を見つける。
デビットさんたちだ。
今回は三人とも居る。
目が合うと、三人とも手を振ってくれたので、俺も振振り返しておく。
思ってたよりも早く再開したな。
そんなことを考えていると、長テーブルの一番奥に座っていたおっさんが口を開いた。
「うし、今回のメンバーはこれで揃った。早速始めるぞ。・・・の、前にだ。初対面の奴もいるから、念のため自己紹介をしておこう。このギルドのギルドマスターを務めているバーナードだ、よろしく」
自己紹介の時、俺を見ていた気がする。
俺が初対面だからかな?
というかこのおっさん、やっぱり偉かったのか・・・。
「・・・さて、それじゃあ本題に入るぞ。既にある程度聞いていると思うが、今回の仕事内容は『ゴブリンの集落の殲滅』だ。ここに居るメンバーには、その主力として働いてもらいたい」
「場所は?」
一人の冒険者が質問する。
「東の森だ」
ギルドマスターのバーナードさんは短く答える。
「それはおかしくないか?なぜ集落の規模になるまで気が付かなかった?」
先ほどとは違う冒険者が声を上げる。
「それについては、ここにAランクの冒険者を集めたのと関係がある」
「まさか・・・“いた”のか?」
これはデビットさんの発言。
いたって、何を示しているのだろうか・・・?
「偵察の奴らは直接みたわけではないらしいが、報告によると、発見した集落には“隠蔽”の類の効果がある結界が集落全体を覆っていたらしい。さらに、遠目ではあるが・・・ゴブリン・ジェネラルを三体確認したそうだ」
「三体だと!?」
部屋にいた冒険者たちも、かなり驚いている様子だ。
それにしても・・・ジェネラル三体か。
ゴブリン・ジェネラルは少し特殊なゴブリンで、それ単体では存在しない・・・らしい。
ゴブリン・ジェネラルは、ゴブリン・キングとセットで現れるようだ。
キング一体に対してジェネラル二体でワンセット・・・・つまり、今回は最低でもキングが二体とジェネラルが四体いることになる。
しかし、本来ならばキングは同じ集落に二体もいることは出来ない。
本来ならば・・・という事は、例外がある。
キングの更に上・・・ゴブリン・エンペラーが居る場合だ。
そして、このエンペラーだが・・・・・ゴブリンの癖にランクが準Sランクなのだ。
ちなみに、準とついているのは、そのランクには満たないがその前のランクよりは強い魔物に付けられるランクだ。
まぁ、エンペラーに関しては出現率があまりにも低く、ランクをつけにくいのもあるようだが・・・。
という事は、本当はAほどしかないかもしれないし、S程の力を持っているかもしれないという事だ。
キングが最低でも二体いる。
つまり、エンペラーがいると見て間違いないだろう。
他の冒険者たちもそのことを理解したのだろう。
それぞれがそれぞれの反応を示している。
「・・・・・はっきり言って、この状況はかなりまずい。最悪の事態になる前に対処しなければならない」
「・・・・・具体的な案はあるんですか?」
冒険者の一人がギルドマスターに質問する。
「・・・・今のところ二つある。と言っても、ありきたりな物だがな。・・・・一つ目は、前面衝突だ。まぁ少し考えればわかると思うが、リスクが高い。そもそも戦う場所に問題がある。仮に、今用意できる戦力で真正面から戦ったとして、戦地は森の中になるだろう。それだけでもこちらが不利になる。できれば、草原のような障害物のない場所での戦闘が望ましいだろうな」
「もう一つは?」
「もう一つは・・・・・少数で集落に乗り込み、最低でもエンペラー・・・可能ならばキングやジェネラルといった敵の主力を倒し、それから大勢の戦力を投入しゴブリンを殲滅するものだ。こちらはそもそも、成功できるかが不明だ。そして、集落に乗り込んだもの達が生きて帰ってくる保証はない。メリットがあるとすれば、消耗が少なくすむ程度か・・・。さらに言えば、失敗した時のデメリットが未知数だ。この作戦が失敗した場合、ゴブリンたちがこの街に報復に来る可能性がある」
特攻攻撃か・・・。
これで成功できれば犠牲は限りなく減らせるが・・・・やりたいとは思わないな・・・。
「街と森の間に草原があるだろう?あそこまでゴブリンを連れてくるのはどうだ?」
冒険者の一人が提案する。
「おとりを使って引き付けるのか・・・・・それをだれがやる?それに、これをやる場合には先ほどの作戦よりも人数を少なく、ばらけさせねばならないぞ?しかも、実行する者達の息がピッタリにあっていなければならないぞ?誰か一人がペースを誤れば、誰かが死ぬぞ。まぁ、それを言うなら他のも同じか・・・案の一つに入れておこう」
それからは、様々な意見が出ては想定できるメリットとデメリットを検証して、を繰り返した。
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結果として、採用されたのは“おとりで草原までおびき寄せる”作戦だった。
とある冒険者が提案したものだ。
作戦がこれに可決されたことにより、直ぐにギルドの掲示板に緊急依頼が張り出された。
参加条件なし、報酬は多め。
既にこの街の領主にもこのことは通達されており、この依頼の報酬の半分は街の領主が出すことになったらしい。
さらに、この街が所有している戦力も作戦にさんかするようだ。
まぁ、当然である。
下手をすればこの街が滅ぶ事態に既に発展しているわけで・・・・・もう領主も必死である。
だが・・・・一つ問題がある。
「なぜ・・・なぜ俺がおとり部隊に選ばれてしまったんだ!?」
もう胃痛が収まらない。
今はひたすら新たな魔法の習得に懸命に取り組んでいるところだ。
今回は出来るだけ広範囲の物と破壊力のある魔法に絞ってある。
と言っても、ちゃんと習得できるかは不明だし、出来たとしても、うまく制御できるかは不明である。
試し撃ちをする時間が無いからな。
「はぁ・・・・・」
つらい・・・・・でも頑張るしかないのだ。
まだ短い期間とは言え、この街には愛着もある。
何もせずにはいられないのだ。
ゴブリンたちが攻めてくる前に、この街の人たちを非難させようという意見もあった。
それが出来ればどれだけいいか・・・・。
まぁ少し考えればこれが現実的ではないことはわかる。
そもそも、何万人という規模の人を非難させる場所が無いし、仮にあったとしても、街人全員での避難となると、隣町に行くだけで何か月もかかってしまう。
そこにゴブリンたちが着たらもう終わりだ。
更に言えば、この街を離れたがらない人たちも大勢出てくる事は予想できるし、そもそもそれだけ大規模な移動にかかる資金や消耗品がそもそも用意できない。
「まさかここまで大変な事態になるとは・・・」
ギルドに報告した自分もビックリである。
「唯一いい事があったとすれば・・・デビットさんたちと同じ場所に振り分けられたことかな・・・・・」
しかし、そんなことではこの文字通り頭を抱える事態を変えられるわけがない。
現状は何も変わらないのだ・・・・。
「今俺に出来るのは、出来るだけ殲滅力のある魔法を、出来るだけ多く習得し、それを生かすこと・・・」
これで少しでもいい方向に進んでくれるのなら、俺は頑張ろうと思う。
さぁ・・・決戦は明日だ。