間抜けな名前
会話多めです。
「・・・ブサイクな鳥だな」
「ギョォォオオオ!!!!」
ブォォオオオ!!!
口から火を噴いてきた。
「ヤバッ!」
後ろにはお嬢さんがまだいる。
このまま避けたらお嬢さんに直撃してしまうだろう。
「『ファイアー・ボム』!!」
俺は鳥の胴体に向かって魔法を放った。
「ギョエエエエエ!!!!」
「あぁっ!・・・」
あの鳥に魔法が当たったことで炎の向きを逸らすことが出来たが、最初に放たれた炎が俺に当たってしまった。
「フィアーナさん!!」
炎をくらった俺を見て、お嬢さんが叫ぶ。
大丈夫ですよ、と声をかけておく。
「アッツ・・・・クッソ、腕が焦げてるじゃないか・・・」
とっさに顔を腕でかばってしまったが、そのせいで着ているローブに穴が開いた。
穴が開いたせいで、腕が少し焼けてしまったようだ。
「あの魔女め・・・ローブに火耐性ぐらいつけとけよ」
魔法がうまく使えればそもそも当たらんだろうバカめ!
という声が聞こえるようだった。
まったくもってその通りです。
「『ストーン・ウォール』!!」
俺は自分の後ろに石の壁を作っておく。
お嬢さんが狙われないようにするためだ。
あの鳥のファイアブレス?ぐらいなら何とかなるだろう。
「『インパクト』!!」
俺は怪鳥に次の魔法を放つ。
この魔法はただの衝撃波を放つ物だ。
そして、大した威力は無い。
人が相手だったら後ろに1・2メートルくらいは飛んだりするようだが、デカい標的だと、少しのけぞるだけだったり、意味が無かったりすることもある。
「ギョ!?」
今回はうまくのけぞってくれた。
俺はその隙に横に思いっきり走り出す。
「こっちだ化け物!!『ファイアー・ボム』!!」
俺は走りながら魔法を放つ。
「なに!?」
が、今回は避けられた。
しかも、そのまま走って追いかけてきた。
「うわわわ!!」
あの巨体が走って追いかけてくるのはかなり迫力がある。
結構怖い。
「もっと魔法の扱いに慣れてれば大規模な魔法もポンポン使えるんだけどなぁ・・・」
この体が、魔法を使いやすく作られているとは言え、俺自身が魔法に慣れていないとうまく使えない。
大規模な魔法とか暴走する未来しか見えない。
「ギョォォオオオ!!!」
また炎を吐いてきた。
「だが今回は避けれるぞ!」
吐き出された炎をサイドステップで避ける。
「『ウィンド・カッター』!!」
俺は魔法で風の刃を飛ばす。
「ギョエエエエ!!!」
怪鳥はその魔法をよけようとしたが、ウィンド・カッターはスピードが速いため、よけきれずに羽に被弾した。
「当たったといっても・・・浅いなぁ」
あの鳥が固いのか何なのかは知らないが、傷はあまり深くはないようだ。
やっぱり威力の高い魔法じゃないと決め手に欠けるよなぁ。
でも威力の高い魔法って難しいんだよなぁ・・・。
これは長期戦になる予感・・・・・。
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「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・倒した・・・・・」
とても時間がかかったが、かなりの激戦だった。
目の前には怪鳥の死体が転がっている。
「そもそも・・・あの鳥なんで・・・・来たんだよ・・・」
途中であきらめればいいものを・・・・・何がしたかったんだろうか・・・。
「フィアーナさん!!ご無事ですか!?」
お嬢さんこと、エリザさんが駆け寄ってくる。
「えぇ・・・大丈夫ですよ・・・・・ご無事で・・・何よりです・・・」
「あぁ・・・こんなにボロボロになってしまって・・・ごめんなさい、わたくしがいたせいで・・・」
よく見てみると、着ている服がボロボロになっていた。
体にも所どころ傷がある。
「大丈夫ですよ・・・ボロボロなのは・・・・・服だけなので・・・・・それよりも・・申し訳ないですが・・・・街までは・・・・もう少しかかりそう・・・です」
なかなか呼吸が整わない。
はぁ・・・・・回復魔法・・・覚え解けばよかった・・・・。
ん?・・・・・いや、使えるじゃん・・・。
「・・・・『ヒール』」
魔法を唱えると、俺の身体を柔らかな光が包み、傷を癒していく。
「・・・・・治った」
これで、街まで帰れそうだ。
「うまく治療できたので、街に向かおうと思います。問題ありませんか?」
「え、えぇ・・・・・本当に大丈夫なのですか?つらくありませんか?」
「大丈夫ですよ。それでは出発しましょう」
・・・・・ん?何かやり残した事があるような・・・。
「は!?」
「ッ!?」
おっと、いきなり大声をあげたせいで驚かせてしまった。
「す、すみません・・・・えっと・・・あれの・・・剥ぎ取りをしてもいいですか・・・?」
「・・・・ふふっ、ええ、構いませんよ。冒険者ですもの」
素材もボロボロになってるけど、丁寧に解体すれば、そこそこの収入になるかな?
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あれから何事もなく移動して、無事に街の近くまで来ることが出来た。
「ようやく着きましたね」
「そうね。無事にたどり着けて良かったわ!」
俺たちは街の門に向かう。
「うお!?フィアーナちゃん随分とボロボロじゃないかって・・・え?・・・あ、あなた様は・・・」
門番のクリフさんが変な事になってる。
この人やっぱり偉い人だったんだな。
「ふふっ、あなたはクリフさんね?覚えているわ」
「こ・・・光栄です。その・・・一体どうされたんですか?護衛もつけずに・・・」
「あら?護衛なら、この可愛らしくて勇敢な冒険者がわたくしを守ってくれたのよ?」
「そ、そうですか・・・・一先ず、手の空いている者に領主館に案内させます。こちらへどうぞ・・」
「ふふっ、ありがとう。お勤めごくろうさま」
「ハッ!」
「フィアーナちゃんもありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
「このお礼は必ずするわ」
そう言ってお嬢さんこと、エリザ様は数人の衛兵に案内されていった。
クリフはお嬢さんが視界から消えるまで敬礼をしたままだった。
「・・・・ふぅ・・・フィアーナちゃん、何があったんだ?」
「依頼先で拾ってきた」
「マジで?」
「マジで」
クリフとは、ここを利用している内に仲良くなった。
あまり忙しくないときはここでよく雑談などをしている。
「じゃあそのボロボロなのは?」
「運悪く、結構強い魔物に遭遇しちゃってね。逃げたかったんだけど、あの人が居たから戦うしかなくて・・・・」
「・・・・・お疲れさん」
「・・・ありがとう」
今まで言われた「お疲れ」の中で最も感情がこもっていた気がする。
「そんで、どんな魔物だったんだ?」
「名前はよく知らないんだけど、なんか鳴き声と色合いがすごく汚くてデカい鳥だった」
「・・・・・主にどんな色だった?」
「黄色とか・・・茶色とかだったかな?」
「それって・・・・オウチ鳥じゃないか?」
「何その間抜けな名前・・・」
「名前で馬鹿にしちゃあいけねーよ。俺は戦ったことがねーから分からんけど、とんでもなくタフでしつこいらしい。かなりめんどくさい奴の様だぞ?」
「あぁ~・・・たぶんそれだわ。いくら攻撃しても全然逃げないんだもん。結局倒しちゃったよ」
「・・・・・倒せたのか?」
「倒せなかったらここに居ないよ」
「それもそうか・・・・・オウチ鳥はBランクの魔物だぞ?よく倒せたな」
「・・・・そうなの?」
「そうだぞ?デビットが言ってたから間違いねぇ」
「そっかぁ・・・・・」
「・・・・いい加減ランク上げたらどうだ?フィアーナちゃんならできるだろ?」
「そろそろ上げようとは思ってたよ」
「ランク低いとギルドで出来る事も少ないらしいからな。俺は冒険者じゃないから知らんけどよ」
「ハハハ・・・じゃあそろそろギルドに向かうよ」
「おっと、引き留めちまったか」
「全然いいよ。それじゃあ」
「おう!頑張れよ!!」
クリフに別れを告げて、俺はギルドに向かう。
ギルドについた俺は受付に向かった。
登録した時の受付の人が居たので、その人の所に行く。
「おや?どうされましたか?」
「素材の買い取りをお願い。あと、結構重要な報告がある」
「・・・個室は要りますか?」
「お願いします」
「かしこまりました。こちらへ」
受付の人に案内されて、俺は部屋に入る。
「じゃあ先に素材の買い取りをお願いします」
「わかりました」
俺は素材を部屋の中に出す。
ついでに、ゴブリンの耳も出しておく。
「これは・・・・・オウチ鳥・・・ですか?」
「多分。これと今出したゴブリンの耳の買い取りをお願い」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
そう言って素材の鑑定をした後、部屋を出て、しばらくした後に袋を持ってきた。
「こちらが今回の報酬です」
「はい、確かに」
「それで・・・・報告と言うのは?」
「・・・・・ゴブリンの集落」
「・・・いま・・・なんと?」
「ゴブリンの集落がある可能性がある。この街の近くだ」
「詳しく聞かせてください」
「魔法の訓練がてら、ゴブリン狩りに行ってきたんですよ。場所は、受付で教えてもらった最近ゴブリンの目撃がそこそこあるっていう森に。その森で、ゴブリンを見つけたんだけど、そのゴブリンが女性を担いで何処かへ攫う途中に遭遇したんですよ」
「・・・・なるほど、それでゴブリンの習性から、集落の存在を疑った・・・という訳ですね?」
「博識ですね。その通りですよ」
「私は冒険者ギルドの職員ですよ?これぐらい知っていないと務まりません。あなたこそよく知っていましたね?」
「読書は趣味なんです」
「なるほど、書物ですか。・・・・・大変重要な報告、ありがとうございます。とても助かりました」
「いえいえ、それじゃ「ちょっと待って下さい」・・・・どうかしましたか?」
部屋を出ようと立ち上がると、俺の言葉にかぶせて声をかけられた。
「フィアーナさん、ランクを上げる気は・・・・ありますか?」