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魔女の記憶と俺の魂

明けてました、おめでとうございます。

 ・・・・・なんだ?

 ここは・・・どこだ?


 何もない。


 ただただ薄暗い場所。


 下には・・・これは・・・水?

 いや、違う・・・・これは・・・血か?


 足元は、赤黒い何かで覆われていた。


 足首の高さまで、血のようなもので覆われている。


 あれ?・・・・・ちょっと待てよ。

 これって・・・・。


 「俺の・・・元の身体じゃないか?」


 下を見たときに気付いた。

 俺の身体は、元の男の身体に戻っている。


 「なんでだ?この場所と関係してるのか?」


 そもそも、なんで俺はここに居るんだろうか?

 ここに来る前は何をしていたんだっけ?


 「え~っと・・・・そうだ。あのよくわからない男と戦って・・・え~っと・・・・・あぁ!傷がひどくなっちゃって、気を失ったんだっけか」


 なんでかわからないけど、デビットさんが現れたんだよな。


 「・・・・・で?結局ここはどこよ?」


 辺りを見渡しても、何もない。

 ただただ気味が悪いだけ。


 上を見上げても、何もかもを飲み込んでしまいそうなほどの『黒』が広がっているだけ。


 どうすればいいんだ・・・。


 「とりあえず、まっすぐ進んでみるか・・・」


 見渡す限り、この辺りには何もない。

 ここに居てもどうしようもないので、適当に歩いてみることにする。


 俺はとりあえず歩き出した。

 その時だった。


 「どこへ行くつもりだい?」


 後ろから声が聞こえた。


 「だれだ!?」


 俺は驚いて後ろに振り返る。


 そこに居たのは・・・


 「こうして話すのは数日ぶりだね?随分とあたしの身体をボロボロにしてくれたじゃないか」


 「お、お前は・・・」


 俺を殺して、魂を吸収しようとした女!!

 なぜ・・・ここに?

 死んだんじゃないのか?


 「そういえば、あたしの名前を教えてなかったねぇ。あたしはヘルミーネ。あたしを知る者は魔女と呼んでいるよ」


 魔女・・・ヘルミーネ・・。


 「それにしても、驚いたねぇ。まさかあたしの方が食われちまうとはね」


 「・・・・・ここは・・・どこだ?」


 「ここかい?ここはあんたの魂の中さ!とは言っても・・・まだ浅い所だけどねぇ」


 「俺の・・・魂だと?」


 魂の中?どういうことだ?


 「ここが俺の魂の中だとして、どうしてお前がここに居る?」


 「どうしてだと?そうさね・・・・結論から言えば、もうあたしの魂は存在していない」


 「でもお前はここに居る」


 「くっくっく、もうあたしはお前の一部になった。ちゃんと説明してやろう」


 気持ちの悪い事言いやがって・・・。


 「まず、あたしは魂の吸収に失敗し、あんたに食われた。ここまではいいね?」


 「あぁ」


 「でだ。魂の吸収が起こる中で、あたしの魂の一部が、あんたの魂に馴染んじまったのさ。その馴染んだ部分が、分解されずに融合した」


 「それが・・・あんたって訳か」


 「その通りさ。つまり、今のあたしはただの残痕さ」


 「今のあんたには、どれほどの力がある?」


 「はっはっは!真っ先にそこを気にするかい?」


 「当然だ。俺の中に、あんたが存在している。それが分かっただけでも、恐ろしくてたまらないよ」


 「なるほどねぇ。まぁ安心しな、もうあたしに力なんてこれっぽっちも残ってないよ。それにしても理解が早いねぇ。あんた自身が魔法について少し学んだおかげなのか、それとも、しっかりと教育を受けているおかげなのか」


 「・・・・・まて、なぜ俺が教育を受けていたことを知っている?」


 「そりゃあ見えるからさ」


 「まさか・・・・・俺の記憶が?」


 「そうとも。今のあたしはあんたの一部だ。表面上の物は見えるさ」


 「・・・・・・・」


 「あんたも見えるはずさ、あたしの記憶がね。あたしがあんたの記憶を見るよりも、はっきりとね」


 「なんだと?」


 「あたしの記憶を見れば、以前のあたしのように魔法を使いこなせるようになるだろう。どれ・・・少し刺激してやろう」


 「まて!何をする気だ!!」


 あの女・・・魔女ヘルミーネは、下に手を付けたかと思うと、突如として様々なものが俺の頭の中に流れ込んでくる。


 「ぐ・・・・ぁぁぁぁああああ!!!!!」


 「はっはっは!さて、どうなるかねぇ?お前が見ているのは、単純にあたしの記憶だけじゃない。感情、経験、様々なものが、お前の頭に入り込む。自分の物ではない記憶が入り込んだ時、お前はどう変わるんだろうねぇ?」


 くっそ・・・あんの魔女!!

 力なんて残ってないとか言いながら、なんてことをしやがる!


 「別にあたしは何の力も使ってないし、残ってもないよ。ただ、お前の中の、あたしの記憶を刺激して、お前が知覚できるようにしてやっただけさ。後は、お前が勝手に見てるだけさ」


 「ああああああああ!!!!!!」


 俺は苦痛のあまり叫び続けた。


 自分のものではなかったはずの物が、大量に頭の中に、一気に流れ込んでくる。

 頭がおかしくなりそうだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


 「こりゃ驚いたねぇ。あたしの記憶のすべてを見ても、自分を保っていられるとわね」


 「・・・・俺が・・・変わっていないと・・・どうしてわかる?」


 「いっただろう?ここはお前の魂の中だと。ここが変わっていなければ、お前も変わっていないという事だ」


 「はぁ・・・はぁ・・・」


 「くっくっく、まぁいいさ。本当はこの魂を今ので崩して乗っ取ってやろうかと思ってたが、失敗してしまった。・・・・でも、これでお前は、元のあたしの様に魔法を使いこなせるようになった」


 「あまり・・・・変わった気がしないな・・・」


 「そりゃあ使ってみないとわからないさ。・・・さて、あたしの最後の計画も失敗したことだし、さっさと目を覚ましな」


 「目を覚ますっつったって・・・・え?」


 突然、俺の視界が歪み、そのまま崩れていった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 「うっ・・・・・」


 「フィアーナ!?目を覚ましたのかい!?」


 俺は・・・寝てるのか?

 ていうかココどこだ?


 「えっと・・・・デビットさん?」


 「あぁ!俺だよ!よかった・・・・怪我は治ってるはずなのに、全然目を覚まさないから心配したよ」


 「・・・ここは?」


 「ギルドの医務室だよ。・・・・それで、実は・・・君に、謝らないといけないことがあるんだ」


 「?・・・謝る?」


 「あぁ。さっき・・・・・君が戦ったやつのことだ」


 戦った奴・・・・は、あの口の悪い男しかいないか。


 「奴は・・・・その・・・・・どうやら、僕たちのパーティに憧れていたようなんだ。それで・・・どうやら、フィアーナが僕たちに誘われて、断ったのが気に食わなかったらしい」


 ・・・・なんじゃそりゃあ・・・。

 あぁ~でも、そんな感じの事聞かれたなぁ・・・。

 自分の憧れていた冒険者のパーティに自分よりランクが低い奴が誘われたのが気に食わなかったのか・・・。

 ん?でもそれって・・・


 「デビットさん・・・何も悪くないですよね?」


 「・・・・・あいつには・・・前々から困らされていてね。・・・いろいろ問題を起こしていたのさ。俺なら・・・止めることだって出来たんだ。でも・・・俺自身が、あいつの事が苦手でね・・・・関わらないようにしてしまったのさ」


 「・・・・・」


 「いろんな人が迷惑してるってわかってたんだ。・・・・俺が・・・しっかりしていれば・・・・君が・・こんな目に合わずに済んだのに・・・・ごめん」


 ・・・・・やっぱり、デビットさんは何も悪くない。

 悪い事をしていたのはあの男だし、デビットさんも困らされていたのなら、デビットさんだって被害者のはずだ。


 「デビットさん・・・・私、勝ちましたよ」


 「・・・え?」


 「Gランクの私が、Cランクの冒険者に勝ちました。すごいでしょう?」


 「あ、あぁ。すごいよ。本当に、すごい事だ」


 「でしょう?私は強くなりました。そして、これからも強くなります。だから、大丈夫です!」


 「・・・ハハハ・・・・ありがとう」


 「お礼を言うのはこちらの方ですよ。どうやらここまで運んで、治療してくれたようですし」


 「それぐらい気にしなくていいよ」


 「そうですか・・・・そういえば、サリアさんとルシアさんは?」


 「あぁ、今は別行動してるんだ」


 「そうでしたか・・・・・そういえば、デビットさんってランクいくつなんですか?」


 「あぁ、そういえば教えてなかったね。俺とサリアとルシア、三人ともAランクだよ」


 冒険者のランクは一番高くてS・・・つまり


 「上から・・・・二番目・・・」


 「ハハハ。一応、この街じゃあ一番だからね」


 高いなぁ・・・。


 「追いついて見せますよ」


 「あぁ!頑張れよ!と言っても・・・俺は待たないけどな」


 「それって・・・どういう・・」


 「フィアーナが頑張る間だって、俺たちは強くなるぞ?目標はSランクさ」


 「・・・・ふふふ。そりゃあ努力のし甲斐があるというものです」


 「ははは!」


 まぁでも、今日は疲れたから、明日からでいいか。

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