7話:嫌がらせ!?
「確かに受付嬢は冒険者に依頼を売るのが仕事ですから、依頼について詳しくなりますし、他にも様々なサポートをしますので冒険者とふれ合う機会は多いですが……」
シスルは『あんたが勝手に冒険者候補の子どもを連れてきたんだから、自分で責任もって面倒見なさいよ!!』と喉元まで出てきた言葉をどうにか抑え込んだ。その代わりに少し皮肉っぽい口調で
「流石に受付嬢は」
基本的にというか、まず間違いなく冒険者組合の受付は女性しかいない。
少なくとも、これ迄ラガン冒険者組合には女性しかいなかったし、他の冒険者組合にも男性受付がいると言うことは今まで一度も聞いたことがない。
女性冒険者もいるとはいえ、根本的に冒険者は男性が圧倒的多数を占める。それも、お世辞にも上品とは言えない人種が多い世界である。
相手の態度が気に食わないという理由で刃物沙汰になることなんて日常茶飯事だ。
だから、少しでもその可能性が低くなるよう女性、特に見た目の良い女性が受付には多い。
それに加え、戦いの神は女神だと信じられており、女性に送り出された冒険者はその加護を得るという験担ぎ的な意味合いもあると言われている。
「それについては問題なかろう?男と言わなければ良いだけだ。まあ男と言っても大丈夫かもしれんがな」
ラガンはそう言いながらシャノンを見る。
確かに見た目は問題ない。それどころか受付嬢に向いているといえるとシスルは思った。
「それに、本人も慣れるまでは、と納得しているしな」
「うぅ。冒険者の事を知ることが出来る仕事だったらとは言いましたが、受付嬢とは言ってな…」
耳を澄まさなければ聞こえない位の声でシャノンは抵抗している。
本人がイマイチ乗り気でないことを感じたシスルが考えを巡らせている時、
「そう言うわけだ。ワシもこの後、損害賠償がどうとか喚くクルウ王国の使者の相手があるのでの」
ラガンは話を切り上げようとし、シスルに悪い目を向ける。
「…畏まりました」
シスルはやむを得ず承諾する。
「まあ、面倒を見ろと言ったが、これから半月はオリエンテーションを含めた基礎研修があるからのう。実際にお主に面倒を見てもらうのはその後になるな」
◇◆◇◆◇◆
「ちょっと、いつまで抱きついてくるんですか! いい加減離れて下さいよぅ」
顔だけでなく、茹でたタコのように全身が真っ赤になっているシャノンが後ろから抱きついているシスルから逃げようと必死にジタバタしている。
「うふふ。余りにも二回目の課題が良くできてたから、思わず初めて会った時の事思い出しちゃった。あんた、ホントに冒険者になりたいのね」
シスルはジタバタしているシャノンを更にぎゅっと抱きしめる。シャノンの頭程あるシスルの胸がシャノンの背中を強く押す。
「ちょっと、本気で怒りますよ!」
珍しくシャノンの口調が強い。しかしシスルはお構いなしに、
「あんた、この周辺の地理や植物・モンスターの分布は完璧だわ。それじゃあ次の課題よ。仮に一人の冒険者がここで採掘をする依頼をして無事に帰ってくるにはどのくらいの強さが必要だと思う?」
そう言うと、シスルは地図の一ヶ所を指で示す。




