00-プロローグ
世界樹イグドラシルにより支えられし、世界イーグリース。
多種族が住まうその世界に、ある日突然邪神を名乗るものが天より現れた。
そして、大地に降り立った邪神は言った。
「この世界に住まう生物達よ、僕とゲームをしよう」
笑いながら、邪神の告げた言葉は全世界に、まるで直接脳内に話し掛けるが如く、響く。
それが、全ての始まりである。
邪神は自分が使う駒として破壊の使徒を召喚し、イーグリースの住人も使える駒として巻き込まれたものを召喚した。
その中にとある三十二人が混ぜられたのは、恐らく邪神の故意であるだろう。
◆◆◆◆◆◆
夜の闇が不気味さを見せる森の中。
地面に倒れ伏す複数の人間を、月明かりと星の光りが照らしていた。
生い茂る木々達を僅かに揺らし、そよそよと冷たい風が、倒れ伏す者達の目覚めを促すように吹く。
肌寒さからだろうか、幾人かが身震いし、瞼を震わせると、「ん、うう……」と口からは僅かな声が洩れ出す。
倒れ伏す者達は総勢三十二人。
一人、二人ならばまだしも、そんな大人数が森の中で倒れているなど、端から見ずとも、かなり可笑しな光景であった。
その内、男女二名はスーツを、残りの三十人は制服を着ていた。
女子は灰色のブレザーに、青色のネクタイ、又は赤色のリボンに青色のチェックスカート。
男子は灰色のブレザーに、青色のネクタイと黒のパンツだ。
何処からどう見ても、学校一クラス分の生徒と教諭二人にしか見えない、その人達が何故、こんな森の中に倒れているのか。
非常に不思議である。
「……こ、こは?」
現実と夢の狭間に揺蕩う意識の中、一番最初に目覚めたのは女子生徒であった。
蝶の髪留めで緩く結われた長い黒髪に、黒みがかった翡翠色の瞳、比較的細身で小柄なその女子生徒──声楽部所属の栗原雪菜は上体を起こすなり、目を瞬かせて呟く。
何、これ。どうなってるの。
何処、ここ? 森?
雪菜は寝起きの回らない頭で思考する。
自分は確か、クラスの集まりで何処かのお店に居た筈だ。
なのに、何故、こんな所に居るのだろう。
意味の分からない現状に、雪菜は目眩と頭痛に襲われ、頭を手で押さえる。
「……誘拐、なんて有り得ないしな」
周囲を見渡しながら、更にぽつりと零す。
恐らく誰に言わせても、誘拐と言う線は、有り得ないと言う言葉で否定される事だろう。
この集団を一気に、それも誰にも気付かれる事なく、公共のお店から誘拐なんて出来る筈もないのだから。
それに、もし仮に出来たとして、こんな森に捨て置く意味も分からない。
雪菜は首を捻ると、考え込むように顎に手を添えた。
今だ夢心地の余韻が残る頭は、まだ鈍い思考を緩慢に回転させる。
丁度、その時、雪菜の周囲から僅かな唸り声と呻き声が響いたかと思うと、次々に瞼を開き、一人、また一人と起き始める。
現状を目にした者から順に、「ここ、何処?」「何これ森?」「は?」「瞬間移動?」「誘拐? 拉致?」と男女問わずに、口々に困惑の言葉が洩れ出す。
そして、最後に起きたのは教諭二人である。
教諭二人は、目を見開いて辺りを見渡し、混乱しているように一瞬身体を硬直させた。
けれど、そこは流石は教師と言うべきか、何とか持ち直すと、早くなる鼓動を落ち着かせるように深呼吸を行った後、教諭二人は互いに目を見合わせると、生徒の人数確認と、安否確認を始めた。
「混乱してる所悪いが男女で分かれてくれ! 女子は中田先生が、男子は俺が人数の確認と安否確認を行う!」
短い黒髪に黒目、体型はすらりとしていて背は高め、年齢は二十代後半程度、担当科目は科学であり、この生徒達の担任である男性教諭──遠野修也が、一度大きく手を叩き、自らに注目を集めた後、そう大きく声を上げる。
その隣で、前下がりボブヘアーの短い茶髪に焦げ茶色の瞳、生徒等と並んでも何ら違和感のない小柄で、年齢は修也と同じくらい、担当科目は家庭科であり、この生徒達の副担任である女性教諭──中田八重子が、修也を手伝うように、「女子はこっちに集まって!」と声を掛けた。
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こんにちは!
始まりました、集団異世界転移もの!
一応、三人称でお送りいたします。
お試し版ですので、連載版より文章が削られております。
連載版は来年投稿予定。
需要があれば早まるかも?
以下、おまけ(笑)
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邪神「これにてゲーム開始! で、次の出番は? 勿論、次も出るんだろう?」
各国の王「「「序盤から邪神に活躍されても困るわ!」」」
邪神「えー」
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