第97話 いざ、戦場へ!
「とはいえ、どうやってあそこまで行くんだ?」
派手にどんぱちやっているのは海の上。
俺らはイヴをのぞいたら飛ぶ方法など無いに等しい。
「イヴちゃんが全員抱えて飛ぶのは?」
「ルナ様さすがにそれは不可能です」
「だよねー」
「大丈夫だよ。 僕に任せて」
するとミーナがまるでドラ○もんのごとく困った俺らに頼りになることを言う。
ごそごそと持っていたカバンの中を探り、巻物のようなものを出しそれを広げる。
そこには何が書いてあるかわからないがびっしり文字が書いてある。
「それは何なのですか?」
ティアラがミーナに聞くのだが、まぁまぁとミーナは適当にはぐらかす。
「それじゃあ僕につかまってー。 いくよ!」
この感覚には覚えがある。
そしてこの後の展開にも……
「待って魔王倒す前に死んじゃう……」
「ちょっとソウタ! それどう言う意味!? 私あれから少し軽くなってるんだけど!?」
「ルナさん… たとえ軽くなってたとしてもこれは…」
「はい。 そう言うティアラ様も早くどいたほうがよろしいのでは?」
「はっはっはー。 相変わらず着地が下手みたいだねー」
「何で君たちがここに……」
どうやらミーナは転送魔法を使ったようだ。
そして前と同様、俺を下敷きにみんなが上に落ちてきた。
その様子を見てミーナは面白そうに笑い、エディさんは頭をが痛そうにこめかみを抑える。
エディさん? 何でここに?
と言うかここはどこ?
そんなことを思っていると大きな爆音がし、部屋が大きく揺れる。
「前衛の第六艦隊の三番艦、四番艦大破! さらに付近に展開していた『人造天使』の部隊のいくつかも撃破されました。あたりからは今までに無い魔力反応、 魔王本人と思われます!」
何やら機械を操作している男性がエディに大声で報告する。
「やはり押されて来てるか。 やはり魔王は伊達では無いな。 何としてでも進行をとめろ! ここが踏ん張りどころだ!」
エディは苦虫を噛み潰したような表情をする。
「一体何が起きてんだ? てか、ここどこだよ!?」
俺はエディに状況を聞こうとするが、それどころではないと怒られてしまう。
しかし、
「今は手が離せない。 君たちに説明する暇はない。 代わりに図書館長からこれを預かって来た」
エディは手紙をソウタたちに渡すと再び部下に指示を出す。
ソウタたちは忙しそうなエディたちのいる部屋から退散する。
「なんかものすごく忙しそうだったんだが… ってかここどこなの?」
「戦艦 睡蓮の中さ。 あらかじめここに飛ぶように設定しておいたんだ。 おそらく戦場の真ん中にいきなり飛んだんだろうね。 怒られるのも無理ない」
ミーナは肩をすくめてそういう。
睡蓮? つまり俺たちはどんぱちやってる真っ只中ということか?
いきなりすぎるだろ。 来たばっかだぞ?
「とはいえアザゼルからの手紙か…」
とりあえずいきなりクライマックスなのは理解できた。 次に気になるのはこの手紙だ。
「なんて書いてあるんですか?」
ティアラが聞いてくる。
「わからん。 そもそもまだ見てもないしな」
ティアラもとんだ天然ボケをかますものだ。
俺は冷静にティアラに突っ込みアザゼルからの手紙を読む。
ソウタくんへ
君がこの手紙を読んでいるということは僕のありがたーい忠告を無視して勇んで戦場へ駆けつけたってことだよね。 まぁそこは個人の自由だ、この際僕からは特に何もないよ。
とはいえ、今のままでのソウタくんだとおそらく魔王くんに一方的にボコられると思う。 そこでソウタくんが魔王くんと戦えるよう僕からあらかじめプレゼントさせて貰った。 何にも策がなくソウタくんを半殺しにしてたわけじゃない。 なんのことか、わからないかい?
それじゃあ順を追って説明をするよ。 まず、ソウタくんはあのドラゴンと戦い、魔力が切れて死にかけた。 ここで君の記憶は飛んでるんだと思うんだけど、実はそのあとガブリエルが君を助けに来たんだ。 そんで君はすでにあの変態吸血鬼の眷属となっているのを彼女は知っていたから君の治療のため自分の魔力を分け与えた。 君は魔力さえあればある程度自己修復するからね。 ここいらで気づいて欲しいんだけどそろそろ気づくかな? つまり君の中には大天使であるガブリエルの魔力が入ってるのさ。 いくらなんでももう答えが出たからだろう。 そう、今君は『魔力喰い』の効果で天使の力を限定的に使えるのさ。 しかもあの時はガブリエルもマジだったからかなり本気の天使の力が使える。 これならばおそらく魔王くんに勝てるんじゃないかと僕は踏んでいる。 やって見なきゃわからないけどね。 あ、そうそう、使えるかどうかの心配はしなくていいよ。 ソウタくんが寝ている間うまく使えるようにソウタくんの身体を弄っといたしといたから。 心配事といえばちょっと話は逸れるんだけどルナちゃんの薬、あれはあまり多様しないように言ってね? なんであんなの持ってるのかは知らないけどあれは諸刃の剣だからルナちゃん自身が心配だ。あ、あと、この手紙と一緒に同封してある魔法陣が書いてある紙切れなんだけどこれはもしもの時というかピンチの時使ってね。 まぁ僕からはこんなとこかな。 それじゃあ頑張って世界を救ってくれ、勇者くん。
P.S.
ちなみにガブリエルが君に魔力渡す際ベロチューで渡してたんだけど、どう? やっぱ天使のキスってすごいかった? 見てるぶんにはなかなか情熱的なキスだったよ。 まぁ僕は……… ガブリエルのキスは遠慮するかな。
最後の部分で顔が真っ赤になる。
え!? 俺が気絶している間そんなことあったの?
どーすんだよ。 もうまともにガブリエルの顔みれねーよ。
「ソウタ、どうしたんだい? 何か変なことでも書いてあったのかい?」
俺の様子をおかしく思ってかミーナが心配そうに聞く。
「いや、大丈夫」
なんとか俺は平常心を保つよう努力をする。
まぁそれはともかくここに来て役立つどころかチートアイテム受けとった気がするな。 本気の天使の力か…
「で、どうするの?」
ルナが俺に聞いてくる。
それに俺はこう答える。
「決まってるだろ? 救いに行くぞ、世界を!」




