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第90話 天界vs戦争屋

「さて、ついたぜ。 陰気臭い連中の住処(アジト)に。 俺たちが直接出てやる戦闘なんて何百年ぶりだ?」



「お前は犬か。 落ち着け」



「はぁ、今更彼らに堕天の裁きなど無意味だろうに。 実に虚しい」



エルフのくらす島国、ブリテンの通称『原始の森』この森には『生命の樹』と呼ばれる大きな木が中央の湖の島に生えている。

そんなエルフたちにとって神聖な場所に彼らのアジトがある可能性が高いのだ。

もちろん天界ははじめにエルフたちに協力を打診したのだが、エルフたちはそれを拒否、それどころか『戦争屋』と同盟を結び天界と徹底抗戦する構えをとったのだ。

さらには周辺の国々と同盟を結び天界の『戦争屋討伐』を阻止しようとしてきたのだ。 そこで天界は天界の先鋭たちを送り出し対抗する勢力ごと蹴散らそうとしていた。

そんな『原始の森』に近い上空。 トーガ姿の3人の天使の姿があった。



「にしても、神さまもあめーよな。 エルフたちの『生命の樹』にはくれぐれも手を出すな、なんてな。 あんな家にこもって魔法の研究している陰湿な奴ら全部燃やしちまえばいいじゃん」



耳にピアスをした金髪いかにもチンピラのような男がめんどくさそうに鞘に収まっている自分の剣で自分の肩を叩きながらめんどくさそうにいう。



「神さまからの命令は絶対だ、ラグエル。 私たちは殺戮を楽しむわけじゃないんだぞ。 正義を執行しに行くのだ。 あの天界を裏切った者共から元神様を救うために。 あと陰気くさいのはすでにここにいるだろ」



栗色の編み込みハーフアップの髪の女性はラグエルと呼ばれる男をたしなめる。 そして、陰気くさいと呼ばれる右目に眼帯をした黒髪の暗い雰囲気の男の方に目をやる。



「そうは言ってもかつての仲間を殺らなければならないなんて気の滅入る任務には変わらないだろう。 できればやりたくはない」



「おいおい、しばらく仕事しないうちに根まで腐っちまったか、サリエル?」



「根まで腐ってるのははもともとだ。 ラグエルもミカエル怒らせるとあと知らないぞ」



「だってよ。 ミカエル怒らせると大変なことになるって」



ケラケラと笑いながら先ほど自分のことを注意した女性にからかうようにいう。



「ほう? そんなに私を怒らせた後が知りたいようだな」



ミカエルは急に魔力を増加してラグエルを威圧する。



するとその魔力を察知したのか森の方からわらわらとエルフや『戦争屋』の兵士とみられる竜騎兵や『人造天使』が出てきた。



「はぁお主ら、ここは戦場なのだぞ。 軽率な行動は慎め」



「ゴミムシのようにわらわら出てきたな! さぁ狩りの時間だ!」



「すまぬ。 それでは我々も行くか。 皆の者、手を抜くでないぞ。 最初から全力だ!!」



ミカエルの進軍の合図と共にゲートが開き大量の天兵たちが出てくる。

数は互角。 エルフの平和の象徴であるはずの『生命の樹』のすぐそばで大規模な戦線の火蓋が切って落とされたのであった。











天界の勢力は圧倒的だった。

天界の兵士らは森への被害を最小限にと指令が出ているため向こうに向かって攻撃魔法を打てず気にせずバンバン打てる相手とは違ってハンデがあったものの、それでも向こうの『人造天使』や竜騎兵、エルフの兵士たちを次から次へと落として行く。



「歯ごたえがねぇーな、おい! もっと楽しませてくれよ!」



ミカエルが全体の指揮を、サリエルが治療や味方の強化などの後方支援をやっている中ラグエルは先頭にたち、次々と相手を蹴散らしていた。



「ラグエル殿! 戦場は遊び場ではないのですよ!」



軍服姿に軍帽を被った少女が先頭を走るラグエルを止めに入る。



「なんだ。 ミカエルのところの。 天兵の分際で俺を止めに来るなんていい度胸じゃないか」



「小生はミカエル様の命であなた様を止めに来たのであります。 陣形が崩れるから少しは周りを見ろと伝えろと」



「そんな周りを待っていられるかよ。 それにこんな雑魚俺一人でも、おっと!」



少女に口答えするラグエルに向けて光の矢が飛んで来る。

それを剣でなぎ払い飛んで来た森の方を見る。

すると向こうには浮遊魔法で飛びこちらへ鋭い視線を向ける一人のエルフの少女の姿があった。



「へぇ? 面白そうなのが出て来たな!」



「ラグエル殿! っ!? くっ! 何者!」



軍服姿の少女の足に今度は巨大な蔓のようなものが巻きつく。

それを少女は切り落とし、その蔓の出て来た方向を向く。 大きな植物の化け物を操る女性の姿があった。



「仕方ありません。 小生の名はジャンヌ・ダルク。 いざ尋常に勝負!!」



























「はぁーまたえらいやかましいところやなー」



「天界の連中も嗅ぎつけて来たのだろう」



天界と『戦争屋』をはじめとする勢力が激戦を繰り広げるその下の森。

そこに自称最強の吸血鬼のルークと彼に助けられ協力させられている魔王軍幹部のエスタの姿が見えあった。

森の中では案の定『戦争屋』の勢力のゲリラ部隊があちらこちらにいたが、彼らは『光学迷彩泡(ミラージュ・バブル)』という周りから見えなくなる魔法を使いばれないように進んでいた。 この魔法は大量の魔力を消費する代わりに姿はもちろん音、匂いをも遮断する優れものだった。



「にしても、あいつらアホなんちゃう? 自分らのご近所さんに笛があるなんて。 なんで気づかなかったんやろ?」



「なんせある場所が『生命の樹』の根元だからな。 気づいていたとしても奴らにはどうしようもできなかったんだろ」



「そんなすごいんか? 『生命の樹』ちゅーのは」




「着けばわかる。 ほら、話してるうちについたぞ」




「ッ!?」



目の前に湖が広がる開けた場所に出るとそれまでルークやエスタを覆っていた光学迷彩の泡がはじけてなくなる。 それどころか身体がやけに重く感じる。



「ここでは我々の持つ魔力が抑制される。 だから魔法を使うことができないのだ。 だから奴らはあのやすやすとあの巨大な木に手を出すことができないのだ。 まぁそれ以外にも奴ら… いや、『やつ』には理由があるがな」



ルークは湖のちょうど中央の島に生える大きな木を見ながらそう言う。



「? なんのこと…」



「ほら、噂をすればなんとやらだ」



エスタがルークにその『やつ』について聞こうとした時、ルークは横を指差す。

そこには獣人たちの国でエスタをボコボコにしたカマエルともう二人の女性がいた。



「カマエル… と、ベリアル、ベアト!? あんたらも関わってたのか!?」



「おー、二人とも久しぶりねー。 まぁ関わってると言うかそもそもこの『戦争屋』は私が作った組織だからねー。 神さま…おっといまは違うんだっけ、元神さまであるエレン様の復讐のお手伝いをしているのよ。 なかなか忠義あるとは思わない?」



「貴様が忠義など口にするとは世も末だな。 ベリアル。 ベアトの方は天界復帰が餌か?」



「……」



二人を懐かしむように親しげなベリアルをふんっとルークは一瞥し、ベアトの方に話を振る。

しかし彼女は答えることなく、代わりにルークに向かっていきなりで襲いかかって来たのだ。

しかしそれは二人の間に割り込んで来た意外な人物に止められてしまう。



「おっと、運が悪いなー。 ゲートの出口にまさか剣戟が飛んで来るなんて」



「アザゼル!? なぜ貴様がここに!」



カマエルは完全に敵意むき出しでアザゼルへ怒鳴る。

一方のアザゼルはそんなの気にもとめずに、はっはっはと笑う。



「ここに来たのはみんなと目的は一緒だよ。 と言うかわざわざここに来る目的なんて1つでしょ? さぁ笛は僕がもらうよ!」









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