第85話 ドラゴンと再び戦うまで!
「なるほど、あなたの考えはわかったわ。でも死んでもらうは言い過ぎね。 あと確かにあなたの計画通りなら議会のみんなは納得させられるだろうけどその『彼女』は絶対来るの?」
キーナはアザゼルに連れられて闘技場の方へ向かっていた。
「うーん、まぁ彼の場合ちょっと特殊だから死なないと思うんだよねー。 ん? 僕の予想では9分9厘かな。 『彼女』は来るよ」
「仮に来なかったらどうするの?」
「大丈夫、その辺はその辺で考えてるし、死んでもらうとは言ったけど本当にやばくなったらなんとかするさ。 僕もソウタくんが死ぬのはやだからね。 それよりどうさ僕の案は最速かつ簡単な証明の仕方だろ?」
「というか、腹黒いですわ。 あなたは昔と全く変わらないのですわね」
キーナに説明する、アザゼルをメルはふんっと一瞥する。
「メルのいう通りね。 それはソウタくんやルナちゃん、ティアラちゃん、そして何よりおねーちゃんの信頼を捨ててまでする作戦かしら? イヴちゃんにあんなことまでして」
「なに、僕はビジネスライクなだけさ。 それに一応ソウタ君にはさっきちょっと説明しといたしね。 あとイヴちゃんはもう元に戻したし、今はミーナたちと一緒に寝てもらってる。 ああ、それとさっきからその殺気出すのやめてくれる? 隠しきれてないし、君も部屋に軟禁しなくちゃいけなくなるんだけど」
「やれるもんならやってみろですわ! お姉さまに手を出そうなんて…」
「メル、やめなさい。 やっぱりあなたはすごいわ。 でもいつかあなたは必ず後ろから刺されるわよ」
「その時はその時さ。 それにソウタくんが負けると決まったわけではないだろ? さぁついたよ」
部屋にはすでにアザゼルの部下のエディと『色欲』のアリーの姿があり、そして
「このようなこといくら国立図書館の館長でも許されませんよ。 ちゃんと説明してもらえるのでしょうね」
キッとアザゼルをにらみそういうレイラの姿があった。現在アザゼルたちは闘技場のVIP専用の観覧席にいた。
「落ち着いてください、姫様。 ですが、説明は欲しいものですね。 我々をこんなところに閉じ込めておいてなにもなしはないんじゃないんですか?」
セリアはレイラをなだめるもアザゼルにはレイラと同じように警戒の目を向ける。
「2人とも落ち着いてください。 無礼があったことはお詫びします。 それより始まりましたよ、 勇者様の竜退治が」
アザゼルはにこっと笑い窓の外を指差す。
やはりというか、なんというかドラゴンの強さは圧倒的だった。 前回戦ったドラゴンとは種類が違うというのか、 簡単に説明するなら前回は四足歩行のずっしりとしたドラゴンだったのだが、今回は戦士のような、二本の足で立つタイプのドラゴンで前のに比べ技の威力や純粋なパワーは落ちるものの、素早く動け、前回と同じように強敵であることは代わりがなかった。 それに前回戦った時は4人しかも魔王軍幹部2人と大天使1人のパーティーでボコボコにしたのだが、今回は俺1人である。
もちろん圧倒されるのは必至である。
ギャァァァァァス
ドラゴンはこちらを喰わんばかりにその恐ろしい爪を向ける。 俺はそれを避け、一太刀食らわせる。 すれ違いざま斬り付けられたドラゴンの岩のような頑丈そうな脇腹からは鮮やかな赤色の飛沫が舞う。
が、その傷口はすぐに塞がってしまう。
「見た目通りのバケモノじゃないか! くそっ!『 氷結の筑紫』!!!」
俺はルナが前に使っていた氷魔法を使う。
ドラゴンは地面から突き出た無数の氷の刃を華麗に飛び跳ね避ける。そして、飛び上がったままこちらへ火の玉を吐く。 俺はそれをなんとか避けてゴロゴロと転がった。
「つーか、なんだよ! あのドラゴンだんだん皮膚が硬くなってないか!? あとスタミナ、どんだけあるんだよ!!」
先程からドラゴンを斬りつけるたびに『魔力喰い』を発動させてはいるのだが、全く衰える気配がしない。 こちらも相手から奪い取っているのでスタミナには問題ないのだが、これでは埒があかない。 これは長期戦を覚悟しないとな…。
「うっ… ここは…」
ルナが目を覚ますと見知らぬ部屋のベッドにソファーに寝かされていた。
まだ寝ぼけてなにがなんなのかさっぱり理解できないでいると横から急に声をかけられる。
「お目覚めですか。 ここはお客様用の控え室です」
「あなたは…! ねぇ、アザゼル…いや、館長どこにいるか知らない!?」
見ると最初にルナ達を部屋に案内したメイドさんがいた。 ルナはとりあえず、事情を知ってるであろうというよりこういう状況を作った張本人であるアザゼルの居場所を聞こうとした。
「はい、リアと申します。 館長はただいま闘技場の方行っております」
「ありがと… っ! どうして、そこを通して!」
ルナが礼をいい、部屋を出ようとするとリアはドアの前に立ちはだかる。
「館長からのあなた方をこの部屋から出さぬのよう指示が出ております。 ですから、ここを通すわけには参りません」
「なら、無理にでも! きゃあ!!」
ルナはリアを魔法で眠らせて通り抜けようとすると右手に走る激痛が走った。
それを見たリアは淡々と説明する。
「魔力を使おうとするとそのブレスレットから電撃魔法が発動するようになっています。 ここは大人しく館長が来るまでお待ちください」
「そんな悠長なこと言ってられないの!! それじゃあアザゼルを今すぐここに呼んできて!」
叫ぶようにリアに頼もうとするがリアの態度は変わらず、
「それは了解しかねます。 それ以外のことで何かありましたら外にいますのでお申し付けください」
と言っても部屋を出ようとする。
ルナは部屋を出ようとするリアに1番気になっていたことを聞く。
「ねぇ! ソウタは無事なの!? それだけなら教えてくれてもいいでしょ!?」
「ソウタ様は現在闘技場に出場中です。 それでは」
「え? ちょっと待って…」
ルナが何か言い切る前にリアは部屋を出て言ってしまった。




