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第82話 船の改修が終わるまで!


「…悪運の強いやつめ」



粉塵が巻き起こる大穴を見下ろしカマエルはそう呟く。

そのカマエルはいつの間にか先ほど戦闘していた時とは違い元の状態に戻っていた。


































「さて諸君、まさか本当に最終日までに出来上がるとは思ってなかったぞ」



満足そうに頷きながらアザゼルはいった。

しかしアザゼル以外の人間は疲労が色濃く出ており、特にミーナと俺は瀕死であった。



「お、鬼、悪魔、人でなし…」



「ははは、ソウタくん、僕は元々人ではないよ?」



こいつ…!




俺たちは会議が終わる前に駆逐艦 睡蓮のこちらの世界で使えるようにするための改修作業に不眠不休で取り組んだ。

魔法科学の専門家であるミーナを筆頭にアルシノエ王国の魔法技師50人、船の構造の解説役として俺(別に船に特段詳しいわけではないがこちらの世界の人よりかはわかるということとひーじぃーちゃんの残したあの書類を持っているということで抜擢された)が、そしてミーナのサポートとしてキーナさんとイヴ、そして、



「キーナお姉さまのお姉さまのサポートはお任せを!」



にこにこしながら俺らに敬礼する女の子。

驚くことなかれこの女の子は魔王軍幹部の1人、『嫉妬』 メルであるのだ。

これにはさすがに俺も、ティアラもルナもイヴも驚いた。 そりゃ敵であるはずの人間がここにいるんだもんな。

なぜ魔王軍幹部である彼女がここにいるのかというのは話せば長くなるので簡単に掻い摘むのだが、要するにキーナさんに一目惚れして今は魔王軍ではなくキーナさんの元で暮らしているところをアザゼルがもろとも引っ張ってきたということだ。 一目惚れというのはおかしいとは思われるだろうが、惚れたというのは人間としてというか恋人としてという認識で間違いない。 相手であるキーナさんもそろそろ男は飽きてきたなどと発言し、ミーナの頭を抱えせたのは別の話である。いろいろ間違えてるのだが、人には様々な性癖がある。 女性に彼女がいてもいいと思う。 というかむしろアリであると思う。 ただヤロウ同士はノーサンキューである。 ちなみにルナとティアラはご飯の準備をしたり、物を片付けたりと専門知識のない彼女たちなりに色々と手伝いをしてくれた。



まぁなにはともあれ1番の収穫は紆余曲折ありながらも惚れた腫れたなどいう魔王軍幹部であるメルをこちら側に引き込んだことだろう。 さらに、メルの言うことには現在魔王軍として侵攻しているのは、魔王本人と魔王軍幹部3人だけらしい。 それを聞いた俺はなんだ案外いけそうじゃね? と思うのであった。



「魔王とともにこちらへ来ているのは『強欲』、『憤怒』、『傲慢』ですわ」



「あれ? 3人だけか?」



俺は驚きメルに聞いてみるのだが、ふんっと顔を背けられてしまった。



「メル、あなた以外の魔王軍の幹部はどうしてるのかしら?」



「それはですね! 『暴食』の行方は知れませんが、『色欲』は自分の仕事があるとかで、『怠惰』はめんどくさいとか言って今回の侵攻には参加してませんわ、お姉さま!」



キーナさんが聞くと俺とはあからさまに態度を変えそう答えた。

なんか腑に落ちん。



「ああ、『色欲』ならこっちにすでに協力してもらってる。 相当な対価は払ったけどね」



アザゼルはメルの言うことに付け足すように言う。

その事実にも驚きだわ。 魔王軍幹部2人もこっちに引き抜くなんて実はアザゼル、俺が思ってるより有能なんじゃね? 俺らのことはここ数日奴隷みたいな扱いしてるが。



「なんだよ。 魔王軍の幹部2人がこっちに味方してるのかよ。 もしかしたら人間側の楽勝じゃね?」



「ソウタさん。 さすがにそれは油断大敵というものですよ」



「そうだよ。 ティアラちゃんの言う通りだよ、ソウタ」



「ティアラちゃんとルナちゃんの言う通りだよ。 これでようやく戦力が勝ち目のないところからは五分五分に持ってこれたんだから。 あとは余計なのが引っ掻き回さなければここで勝てる」



と頭を人差し指でトントンと叩きながらアザゼルは言った。

おそらく余計なのとは『戦争屋』のことだろう。 あの事件以来ぱったりと影を見なくなったが、おそらく奴らのことだまたよからぬことを企んでるに違いない。



「さぁそれじゃあ地上にこれを持って行こうか。 モーデル君も頑張ってるだろうけどいささか不安があるしねー。 君たちのとこの殿下も協力してくれてるみたいだけどね」



「ですが、アザゼル様。 この大きな船をどのようにして地上へ持っていくのですか?」



イヴが当然のように疑問を投げかける。

ここは地下空間であり、そもそも空気の換気をする程度の穴しか空いていない。 アザゼル曰く人間の出入りする入り口もあることにはあるのだが、ここはダンジョンの最深部自力で出るには恐ろしく強い魔物を倒さないと出れないというのだ。 なのでここに来るときはアザゼルがゲートを開けてそこを出入りしていた。



「まぁ簡単に言ってしまえばみんながここに出入りするみたいにゲートを使って外に出すよ」



「しかし、いくらアザゼル様といえどこのような大質量のものを通すゲートは不可能なのでは?」



「その辺は大丈夫だよ。 ちゃんと対策というか考えてるから」



イヴにニコッと笑いかける。 しかしその笑顔がこちらに向けられた時、俺もそしてミーナも悪寒を感じた。

あの目は俺らをまだ酷使しようとしている目だ!

どんな計画なのかわからないが聞く前に俺もミーナも戦々恐々としてきた。

































獣人たちの国の首都シリアーツクから少し離れた森の中そこには先ほどの大天使との戦いでボロボロにされたエスタと黒マントの男がいた。



「あんたがたすけてくれるとはなー。 どういう風の吹き回しや? 元魔王様」



「たまたまだ。 我は獣人たちの国で探し物をしていたら急に当たりを焼き払われたからな。 逃げようと思ったら見知った顔がボロ雑巾のように寝転んでいたから拾ったまでだ。 さすがの我もあの光に直撃したら昇天させられていたぞ」



「世界最強の吸血鬼である元魔王様でもあれはダメか。 うちももうダメかと思うたわ。 あのクソ天使急に身体が金ピカに光り始めたかと思ったらあんな馬鹿力だしおった。 なんやねん、あれ」



「『天装』だろ? あれは大天使なら誰でも使えるぞ。 まぁ使えると言っても反動がでかすぎてそんなひょいひょい使うものではないがな。 あの大天使はよほど貴様のことを殺したかったんだろうな。 あと元魔王はやめてもらおうか」



「はいはいルーク様。 にしてもほんま災難やで。 魔王くんに頼まれてケモミミ王国配下にしようときたらあんなのがおるんやもん。 やぶ蛇よりタチ悪いわ。 ははは、痛っ!」



エスタは右腕を抑える。

と言っても彼女の右腕は二の腕の半分から下がなくなっており、そこから普通の人間ならもうすでに死んでいるだろうおびただしい血が流れている。



「その怪我でよく生きてるな。 ここは旧知の仲だ、助けてやろう。 どれ」



そう言ってルークはエスタの首筋に顔を近づける。

それをエスタはばっと避け、顔を真っ赤にして怒る。



「ちょっ!? なにするんや!! この変態!!」



「なにを言うかと思えばどうやって治すかは貴様も知っているだろう。 助かりたくはないのか?」



「知ってるわ! ただ、いきなりすんなや!! 行く時くらい合図せーや!」



「なんでも一緒だろ。 ほら、行くぞ」



今度はエスタも抵抗せずルークに向かって横を向き首を差し出す。

それにルークは優しく噛み付く。



「…ん、あっ!…」
























「ふう、終わったぞ。 魔力も少し分けたから問題なく動けるだろう。 それにしてもなんという声を出しているのだ。 もう乙女という歳でもあるまいに」



見ると先ほどまで欠落していたエスタの右腕が戻っていた。 その腕をエスタはいろいろ動かし感覚を確かめる。



「女の子はいつまでたっても乙女や! だから嫌なんや。 あんたのそれは… で? うちはなにをすればいいんや?」



エスタは呆れたようにルークに聞く。



「お? 話が早いな。 さすが我の元部下だ」



「どんだけ昔の話をしてるんや。 で? なんなん?」



「笛探しだ」



「笛? まだやっとんたんか、あれ」



「まだというかあれ見つけないと人類滅ぼされるだろ? 男は全然滅んでも良いのだが美しい女性まで滅んでは困る」



「相変わらずやなー。 本当は働きたくないけどええで。 場所の検討は… こんな僻地まで探してるようやとついてなさそうやな」



「いや、そうでもないぞ。 ここだろうなというところは何箇所か回った。 あと心当たりがあるとすれば一か所だけだ」



「どこや? その心当たりがある場所ゆーのわ」



「ブリテン。 エルフの国だ」



「ブリテン!? 悪魔にとっては最悪な場所やん!! それを魔族であるうちとあんたがいくゆーの? 無謀すぎやろ!」



「まぁ大丈夫だろう。 貴様みたいにその『人の皮』かぶれば魔族だと気づかれまい。 そういえばあの大天使との戦闘でなんでそれを脱がなかったのだ? 元の魔族の状態ならあそこまで一方的にやられずとも済んだであろう」



このルークの発言にエスタは難しい顔をする。

ルークもその様子に何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのかと首をかしげる。



「…うちにもいろいろとあんねん。 わかったわかった、命も助けてもらったしかったるさこの上ないけど協力したるわ」



そう言ってエスタは話を区切り、ルークへの協力を承諾した。それを聞いたルークはニヤッと笑い、



「貴様も変わったな。 それでは行こうか彼の地ブリテンへ」
















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