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第81話 天使の本気を見るまで!

「ん、ありがとクロエ。 ごちそうさま」



「お粗末さまでした」



出てきた料理をぺろりと平らげたフーカはクロエに礼を言った。

クロエはドアを開けた時びっくりした。

なんせ目の前に魔王幹部の1人がいたのだから。

クロエ自身、フーカに会いたくなかったかといえばそうではなくむしろ助けてもらったお礼がしたいと思っていたところなのだが、実は今日のレイラ様からの定時連絡で、これから人間諸国と魔王軍の全面戦争が始まるらしいとの連絡が入ったそうだという噂が城内で囁かれていた。 もちろん宮廷薬師のクロエの耳にも入っており、それが本当ならもうフーカやサーニャさんには会えないんだろうなーと思っていたところだったのだ。




なので食事を終え、ひと段落ついたところでそのことについてフーカに聞いてみた。

するとフーカは



「…フーカは魔王軍抜けてきた。 人間全部滅ぼしたら美味しいご飯食べられなくなる。 それにクロエも死んじゃう。 それは嫌だ」



「フーカさん…!」



「だからフーカは今回の人間との戦争には参加しない。 あとさっきクロエは全面戦争と言ったけどそれは違う。 魔王幹部も一枚岩じゃない」



「それはどういう…?」



するとグルグルグルとフーカのお腹がなる。



「とりあえずデザート先にしたい」



緊張感もないフーカの様子に自然にクロエは笑いがこぼれた。



「ふふ、ソウタさんやはり持つべきものは友達ですね」



クロエはそう呟き、昼に趣味で焼いたケーキの準備をするのであった。






















































「あー、さぶっ! 風邪引いたらどうしてくれんねん。 なんかあったかいもの食べたいわー」



身体をブルブルっと震わせるエスタ。彼女は現在魔王の指示で魔王軍の橋頭堡であるあの宮殿のある都市より北方にある獣人の国へ侵攻していた。

エスタは街を見下ろせる小高い岡の上から最後に残った獣人の国、シビルの首都シリアーツクを見ていた。 するとゲートが開き黒マントの魔族が出てきた。




「エスタ様。 敵の主要な都市はすでに占拠、残すは首都のみです」



「お、ご苦労さん。 めんどくさかったやろうけどゆーた通りにしてくれたかー?」



「はい、大人しく投降するものは殺してしません」



「ありがとーな。 それじゃあ後のことは任せたで」



「御意に!」



黒マントの魔族は再びゲートでどこかへ行ってしまった。




うーんっと伸びをして、エスタは自分の相棒である鎌バアルを出しニヤッと笑う。



「さぁーて、めんどくさいから自分の仕事は仕事で終わらせよーか。 というかうち最近はたらきすぎやない? ん?」



エスタは急に街が騒がしくなり始めに気づいた。 爆発音とともにあちらこちらから黒煙が上がり始めている。



「なんやなんや、あいつら何を暴れとるんや。 今から和平交渉しに行こうって時に。 確かに1週間の包囲で鬱憤溜まってたとはいえあれはダメやろー。 しゃーない。まずは包囲している連中なだめてからやな。 あー本当に面倒なことが次から次へとはぁーあ」



そういい、エスタはゲートを開き街の方へ向かった。


































「なんや、これ…」



エスタが見たのは包囲していた魔族が死屍累々と倒れているところであった。



「うぐっ…」



「おい! 大丈夫か! 一体何があったんや!」



近くの魔族の兵士にまだ息があるのに気づき、何があったのか聞く。



「ものすごく強い大柄の男が一瞬で… うっ!」



「ものすごく大柄の男? 1人にやられたんか?」



「申し訳…ありません」



「わかった。 ありがとうな。 とりあえず回復できるだけの魔力は渡したから死ぬことはないやろ。 そいつどこへ行ったか知らんか?」



「ありがと、ございます。 街の中央、議会堂の方へ行きました…」



「わかった。 動けるようになってからでええから、他に生き残った連中がいるか探しといてくれ」



そう言ってエスタは街の中央にある議会堂の方へ向かった。


















「そういうことやったか。 道理でうちの精鋭がことごとくやられとったわけやわ」



エスタを出迎えたのは武装した獣人の兵士たちそれと

大柄のトーガ姿の男であった。



「ベルンの街以来か」



「なんでお前がここにいるんや。 カマエル」



カマエルと呼ばれた男はフンと一暼して、エスタの質問に答える。



「われらが同盟国を魔王の侵略から救いに来たのだ」



「同盟…やと! バカな!! そもそも獣人種とお前たちじゃ信仰する神が違うやろうが!」



「敵の敵は味方というやつだよ。 危機を同じにすれば普段いがみ合っているものでも協力する」



予想外の展開にエスタは動揺した。 ただ同じ魔王軍の獣人の彼女のように戦闘バカではないエスタである。 数も力量も不利とわかれば大人しく撤退するまでだった。


さすがにこれは手ぶらでも怒られないやろ…



「逃すと思うか?」



エスタは撤退しようとするがカマエルに阻まれてしまう。



「あれ? 前は逃がしてくれたやん」



「あれは邪魔が入ったからだ。 今回はやつも乱入してこないだろうからな」



「なるほど」



エスタははぁと溜息をつき、めんどくさいわーと言いつつ、魔力を全開に放出する。 その魔力に触れた獣人の兵士たちはバタバタと倒れていく。




「悪いんやけど、意地でも帰らせてもらうで?」



そういい、エスタはカマエルに不敵に笑いかけた。









エスタ自身自分がここまで力を出すのは久しぶりであった。 どれくらい昔かは記憶が定かではないが…

しかしその瘴気によって北国一のツワモノと名高い獣人の兵士たちは皆倒れてしまって動かない。



「ただ、私には効かぬがな」



「そもそもあんたがその程度でやられるとは思ってへんわ。 はよ来るならきーや。 こないなら帰らせて、おっと」



カマエルは剣を抜きエスタへ襲いかかるがエスタはその攻撃を上手く受け流す。



「逃がしはせぬと言ったはずだが? 貴様ら全員に天界に逆らった罪の重さというものを教えてやる」



「天界? ふん、一部の頭の固いジーさま連中の間違いやろ? ほんま『神さま』も可哀想やわ」



「黙れ!!!」



エスタの言葉にカマエルは声を上げエスタへの攻撃の手を強める。

ただエスタはこちらから攻撃はせず、カマエルの攻撃を紙一重で避けたり、鎌を使って器用に受け流したりしている。

その様子はまるでカマエルのことを弄んでるようにも見える。

以前カマエルと戦ったベンケイの一方的なやられ方とは全然違った。



「無駄やで、うちにダメージを与えようなんて。 確かにまともに戦ったらうちはあんたには勝てへんし、ベンケイみたくボコボコにされるのがオチやけど、ダメージを受けないようにするだけやったらうちの得意分野や。 それにうちと戦う時長期戦なんか持ち込んで勝てると思ってへんよな?」



余裕の笑みでエスタはそう言った。



「なるほど。 その鎌から私から奪い取った魔力を使いながら戦ってるからスタミナは無限というわけか。 確かにジリ貧だな。 ならば、」



剣を前に突き出す。

するとそこに光が凝集し、



「あ、やば」



大天使の弩弓アークエンジェル・バティスタ



剣先からとんでもなくでかいレーザー光線が発射されるもちろんエスタは避けたのだが、議会堂の壁には大きな穴が開き、その向こうの建物は轟音とともに跡形もなくなくなった。



「なんて魔法使ってんねん!! 危ないやろうが!!」



そのツッコミに対して全くの無反応のカマエル。

彼はすでに次の魔法の詠唱を始めている。



「やってられるかい! 『激流水牢』!!」



エスタが魔法を唱えるとカマエルは球状の水の牢の中に閉じ込められてしまう。



「どこかで会える日まで! ほな、またな!」



そう言ってエスタはその場から立ち去る。











「…………………『天装』」














「いやー、ほんま危なかったわ。 大天使相手にタイマンやなんてどう勝つ…!?」



エスタは何者かの攻撃によって吹き飛ばされてしまい、そのまま建物に叩きつけられる。




「かはっ!? なん…!」



エスタは自分を吹き飛ばした空を浮かぶ相手を見上げる。



「なんや… それは…」




そこには先ほど水の牢に閉じ込めたはずのカマエルの姿があったのだが、様子が違った。

身体は金色に輝き、服も剣も神々しい物へと変わっていた。

何よりもカマエルの目は赤色からまるで深海のように深く染まった紺色に変わっていた。

それは吸い込まれて、溺れそうなくらい深々とした青色だった。

その様子が先ほどとはまるで違うカマエルはエスタの質問に答えようともせず、エスタに追撃をかける。

もちろんエスタは先ほどのように応戦しようとするのだが、



(なんつう速さや。 いや、速いだけじゃない。 一撃一撃がさっきと比べ物にならないくらい重い!! しかもこいつ、うちの魔法が効いておらへん!)




先ほどまでエスタの周りの瘴気は効かないとは言いつつある程度パワーが減弱していたカマエルの攻撃であったが、現在は弱くなるどころかむしろ強くなっていた。 さらには先ほどまで吸収できていた魔力が全く入ってこなくなってしまっていたのだ。




(肉体強化系の魔法を使ったんか? いや、そうやとしてもこのバアルの効果を受けないのはおかしい。 なんで魔力が吸収できへんのや)



激しい空中戦を展開し、カマエルの攻撃をどうにか受けるエスタであったが状況は劣勢であった。

それでもなんとか攻撃を受け止めてきたのだったがカマエルの一撃が余りの威力に体制を崩され、そこに再び先ほどと同じように光りが凝集された剣先を向けられた。



「!!!」




轟音とともにあたりを白い閃光包む。




「なんつう威力しとるんや。 バアルを右腕ごと持っていきおった…」



激痛で顔を歪めるエスタの右腕は上腕の半分より下がなくなっていた。

腕からはおびただしい血が流れている。

だがカマエルは全く攻撃の手を緩めない。

エスタは魔法の障壁で防ごうとするのだが、力には抗えず下に叩き落とされてしまった。



「うぐっ… もう身体ボロボロで動かへん… って、あーあ、あれはあかんわ。 やばい、死ぬかも」



瓦礫の上に寝そべるエスタの上空、カマエルは片手を高々と挙げ、魔法の詠唱を始めていた。



「…『天撃』」



先ほどとは比べ物にならないくらい光がはるか上空からエスタのいるところへ落ちる。 そして今までに聞いたことのない雷鳴とともに、エスタのいた地面に大きな穴を開けていた。

















































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