表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/114

第7話 いろいろわかるまで

くそっ!いきなり戦闘開始かよ!

こんな狭いとこであんなデカイ巨人を召喚するわけにもない!



とりあえず、戦えないセリアさんだけは逃さないと! おれはそう思い剣を抜き、ルナも両腰の短刀を抜き戦闘態勢に入る。


「セリアさん! 逃げて! ここは私たちが食い止めるから!!」


「で、でも…」


「いいから、早く! 覚悟しろコウモリ野郎!!」


俺とルナはルークに斬りかかる。さすがに2対1だこちらに分がある!



しかし、ルークは俺たちの攻撃を華麗に避けて間をするりと通り抜けた。

そして、セリアさんの前まで一直線に向かう。



「その命頂戴いたす」





剣を振るい、首を落としたーーー


かのように見えた。





「っセリアさん!!!!!」


ルナが悲鳴をあげる。


当然だ。 バンパイアつまりは吸血鬼の天敵といえば聖職者である。この中でいえばシスターであるセリアさんだ。 ルークは自分の天敵であるシスターのセリアさんを最初に狙ったのである。


だが、様子がおかしい。


両断され、普通なら落ちるであろうセリアさんの首が落ちていない。 それどころか全く外傷がないように見える。



いや、外傷がない(・・・・・)だけでしっかりと斬られていた。



セリアさんの長く美しい紫の髪が。




「へ?」



セリアさんは驚いているようだ。セリアさんだけではない。俺もルナも驚いて固まったままだ。




そんな中、ルークだけが満足げな顔をして



「うむ、ようやく我の長年の野望が叶った。

この髪を手に入れたのだ思い残すことは何もない。そこの人間、我を捕まえるのであろう? 煮るなり焼くなり好きにしろ。 ただ、この髪だけは、一緒にもっていかせてくれ」


「は?」


「ちょっと、ソウタ。 このバンパイア何を言ってるの? 街の女の人襲ってるのばれて口封じに私たちを殺すんじゃなかったの?」


そんなこと聞かれても、俺もそうだと思っていたのでわからん。


するとルークは


「こんな綺麗な女性を殺すわけなかろう。 我はこの髪さえ手に入ればよかったのだ。 そもそも我は無益な殺生はしない。」


「私の髪を手に入れたかったとはどういうことなのですか?」


とセリアはルークに尋ねる。



「ん? シスター・セリアおぬしには教えても良しかもしれぬ」


と部屋の本棚から一冊の分厚い本を取り出してくる。


「人間、おぬしたちも見たければ見るがよい。我の素晴らしいコレクションの全てだ」


言われるがまま、セリアさんとルナとその本を見てみる。


そこにはなんだろう。 文字と何か細い糸のようなものが貼り付けてある。 いや、細い糸ではなく髪?



「どうだ? 素晴らしいだろ! この我がコツコツと貯めたコレクションは!」


「えーと、何これ?」


ルナが尋ねる。


「見てわからんのか。それはこの街に住む美しい女性の髪と、その女性の名前、年齢、身長、体重、スリーサイズ、趣味などいろいろなことが書いたプロフィールだ」



と大真面目な顔でいうルーク。



「きもっ!」


ルナは容赦なしにそういう。 そしていまさっきこのコレクションの一員にされたセリアさんもこれには苦笑いで引いている。



このルークとかいうバンパイア…見た目は長身でいかにも英国紳士ぽい黙ってればイケメンなのになんだろう。




趣味が残念…というか、ただの変態紳士だった。


「この芸術がわからんとは見る目がないな、人間の女よ」


「見る目があるから言ってるのよ! それじゃ最初っからこれが目的だったわけ?」


「そうだ。 普段からシスター・セリアの髪を手に入れたいと思っていたのだが、いかせんシスター・セリアは滅多に夜に外を出歩かない。なので夜に出歩くのを待っていたのだ」


というルーク。


「それならば、私に言ってくだされば髪くらい。いくらでもあげましたのに」


さっきは引いていたのだが、セリアさんはそういう。


なんと! 自分をストーカーまがいに狙っていたバンパイアに対しても優しいなんて!


もはや天使というか、仏である。



「街の女性の髪を狙っていたってことはもしかして私も狙われていた!?」


ルナは両手で自分の胸を隠すような動作でルークからあとずさる。


「そんなわけなかろう。 おぬしは対象外だ。

『ポルタの狂戦士』などのはいらぬ。」


「ポルタの狂戦士?」


「知らんのか? この娘、弓兵なのに最前線に出てその短刀で魔物を狩るからついたあの街で異名だ。ポルタの街の狂った弓兵だとな」


「うあああぁぁぁっ!な、何言ってんの!? てか、なんでしってんの!? バカっ!」


とルークに殴りかかるルナ。

それをルークはするっと避け、


「はっはっは! この人間の男には黙っていたのか? いやー狂戦士も随分と女っぽくなって」


「ソウタ! こいつ煮るなり焼くなり好きにしろっていったよね!? こいつをカンカン照りの太陽の下に磔にしてバーベキューにしてやりましょ!!」


「やれるものならやってみるがよい。 だが我はバンパイアの中でも希少種なバンパイアロードだぞ? それに私はその中でもさらに希少な貴族種、その辺の平民バンパイアと一緒にしては困る」


「る、ルナさん、ルークさんのいうことが本当なら太陽光じゃ彼は死にませんよ? バンパイアロードの、その中の貴族種は普通のバンパイアの弱点になるものが弱点になりませんから」


「そう、我は不死身なのだぞ? 狂戦士よ」




なんだろう、この状況…


ルナは殺してやる!とルークの胸倉につかみかかって揺らしていて、それを必死に止めようとしているセリアさん。

そして揺られながらもさらにルナをからかうルーク。







そもそもいまの会話の中に初めて知ったことがたくさんあった。


まず、ルナがあの街で呼ばれているあだ名だが、なるほど。 だから最初のクエストの時受付のお姉さんはルナの顔を見て、わかったような顔をしてたのか。 ついでに言うと街の名前もいま知った。




あと、ルークが普通のバンパイアと違って弱点が効かないとすると、どうしたもんか。 退治の仕方がわからない。


まぁでも髪を集める変態だということ以外害はなさそうだから放置しても大丈夫なのかな



とりあえずいまは暴走しているルナを止めにいかないと



「ちょ、ルナ落ち着けって! 不死身相手じゃさすがに何しても無理だ、 髪のことを除けば害はなさそうだし今日は帰ろう!」


「見逃しちゃだめだよ! こんな変態っ!」


「はっはっは、よいのか? 狂戦士? そんなに暴れたら今までの猫被った苦労が台無しだぞ?」


ルークはニヤニヤしながらルナにそういう。




「〜〜〜〜っ!!」



ルナは顔を真っ赤にして部屋を出てってしまった。そんなにこの変態紳士にからかわれるのが気に障ったのか?


「私、ルナさんが心配だからあと追いますね」


セリアさんは部屋を出てったルナを追いかけていった。 まぁセリアさんが一緒なら大丈夫だろう。



さて、残された。俺と変態紳士。 本当どうしよ、こいつ。



「ふむ、それで人間、結局我を倒すのか?」


「不死身なやつをどうやって倒すんだよ。 髪のこと以外で人間を襲っているようでもないし今日のところは引き退るよ」


「そうか、人間ちょっとこっちへ来い」



と、ルークが俺をひょいひょいと手招きして呼ぶ。


なんだ?



「人間、向こうを向いておれ」


言われるがままルークに背を向ける。

すると、ガブリとルークが俺の首筋に噛み付いてきた。


「なっ!!」


「動くな、すぐ終わる」


と、言葉の通りすぐにはなされた。こいつ、なにをした!?



「そいつは我からの餞別だ。異界より訪れし人間よ」


こいつ、今なんて?



「おぬしは『この世界』ではなく『違う世界』からやってきたのだろ? おぬしを最初に見たとき匂いでもしやと思ったが、今血を吸って確信した」


「なんで、そうだとわかる」


「なに、どれくらい前だったかな。おぬしのように『違う世界』からやってきた人間にはあったことがあるのだ」



俺以外にもこの世界にやってきた人がいるのか!?


「まぁそれにしてもいきなり噛み付いて悪かった。お詫びに我のコレクションをこれからは好きなときいつでもみせてやるぞ?」


「いらねーよ! それより前にも会ったってどこで!」


「覚えていないくらい昔だな、それよりよいのか? この本には髪以外にもあの街すべての女の情報が載っているのに。もちろんシスター・セリアのあんなことからこんなことまで」



その言葉に、昔いた現実世界の人間などどうでもよくなった。





俺、こいつとは仲良くなれる気がする。


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ