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第77話 アルシノエ王国に到着するまで!

エディはアルシノエ王国から船で半日ほどで行けるサティマン王国にやってきていた。 この国は東西貿易で栄えており、大陸随一のド派手な国である。 そんな街の首都にある繁華街、多くの人の流れがあるためそれに合わせた多種多様な店々が立ち並びエディが訪れたのは夜だったのだが、どこのお店も明かりが煌々とついており、派手な衣装を着た水商売のキャッチがあちらこちらで客を勧誘する。 その様子はまさに夜の街といったところでかれこれエディも何回キャッチに勧誘されたかわからない。

そしてエディはある一軒のお店の前につく。 見ただけでとても高そうなお店で、さすがに入るのに躊躇われる。



「全く、私がなぜこのようなところに…」



エディは忌々しそうに独り言を漏らし、意を決してお店の中へ入った。






















「フフフ、まさかここにいる子じゃなくて店長である僕を指名してくるとはね。 飲まなくていいの?」



「公務ですので」



エディはそう言って目の前に座る人物の誘いを断る。

騒がしい店内とは一線を画す、店の奥にある個室。 普段はVIPをもてなす部屋なのだが、今回はこの店の店長であり、この繁華街を事実的に仕切る目の前に座る人物、アリスと呼ばれる女性が特別にこちらの部屋を用意してくれた。 エディは最初、ホステスなのになぜイケメンなのだ? 可憐とかではないのか? と疑問に思ったのだが、なるほどその見た目でアザゼルの言う通りだと納得した。 一言で言ってしまえば、劇などで見かける男役を演じる女性のような人物が目の前にいるのだ。



「それで? 僕に何のようなの? アルシノエ王国の使者様」



グラスに入っている、1つのボトルでエディの1カ月分の給料と同じ額の酒を氷の入ったグラスに入れ飲む。



「アルシノエ王国というより、アルシノエ王立図書館館長の使者としてきました。 アリス様へ館長が図書館へ来て欲しいと」



「王立図書館? ああ、あのテキトー元天使のが暇つぶしでやってるとこ。 なるほど、確かにあいつなら僕の正体知ってるからなー。 来て欲しいって僕も暇じゃないんだけどな。 どうせ魔王軍絡みだろ?」



「そうです。 魔王軍に立ち向かうためにも是非力を貸して欲しいと」



それを聞き、アリスは難しい顔をする。



「是非力を貸して欲しいってあのテキトー元天使、僕に同士討ちしろっていうのか? つくづく嫌な性格をしている」



「え…」



エディは驚く。

今アリスは何て言った? 同士討ち?

それはどういう…

そんなエディの様子を見て気づいたようにアリスはああといい、



「何だ、アザゼルから聞いてなかったの? 僕は魔王軍のものだよ。 アリスは源氏名、うーんと、色欲のアリーといえばわかるかな」



「なっ!?」



それは一兵士であるエディでも知っている名前だった。 目の前にいるのは今問題になっている魔王軍、しかもその幹部である。

エディは横に置いていた剣に手をかける。



「ああ、待った待った。 早まるなよ。 まさか知らないでここにくるとはねー」



アリーはそう言って両手を前に出し、エディを制止する。

だが、構えたまま警戒の態度を崩さないエディにやれやれと溜息をつきながら、話を続ける。



「悪いけど僕には人間を滅ぼす趣味はないよ。 むしろ滅んでもらったらお店が成り立たなくて困る。 魔王軍って言っても一枚岩じゃないんだよ」



「貴様は人間には手を出さないと?」



「むやみやたらに殺しはしないよ。 僕はそもそも可愛い女の子や性欲溢れる男子に囲まれた生活が気に入っているんだから」



エディは警戒した態度のままであったがひとまず、剣を抜く構えだけはやめ、剣を再びおく。



「…なるほど。 アザゼルがあなたを呼びたい理由がわかりました。 相手が何であれ私は任務を果たすまでです」



「確かに僕にメリットはある。 魔王君にこのままやられ放題じゃ営業どこの話じゃなくなる。 だからと言って魔王君たちと戦えというのもなー」



「それならば大丈夫だと思います。 アリスさんは直接戦場には出ないで済むと思います。館長は何か秘密兵器があると言っていましたから」



「秘密兵器? ふーん、面白そうなことやってるなー、アザゼル。 わかったよ、行くだけ行くよ。 協力するかはアザゼル次第だけどね」



















































「よし、ついた!」



俺はうーんっと大きく背伸びをする。



「何事も起きなくてよかったねー。 前、皇都に着くまではすごかったからねー」



と出発前に言ってたら完全にフラグのようなことをルナは整然という。

面倒ごとになるようなことはやめてもらいたい。



「さぁ、皆さん今回はよろしくお願いしますね」



最後に船から降りてきたレイラは俺たちにニコッと笑いかけてそういう。

ちなみに今は周りにアルシノエ王国の関係者がいるので外モードになっているが、船の中ではお手製のトランプをつくりルールをみんなに教え、ひたすらそれを使ってみんなでワイワイやっていたのだ。

どこの世界に行ってもトランプは共通で何かない時に役立つ救世主らしい。





俺たちはそのままアルシノエ王国の役人の人に案内され、今回の会議の場所となるアルシノエ王王立図書館に案内される。 俺はこの図書館は前にも来ているのだが、実際中を詳しく見るのは初めてだ。

ここは様々な施設が一緒となっており、他国の要人を迎える迎賓館と宿泊施設もこの中にあった。



「それでは会議は夕刻からですのでそれまでおくつろぎください。 何かあれば外に女給の者がいますのでそちらにお申し付けください」



「わかりました。 ありがとうございます」



とこないだアザゼルの部屋に行った時見かけたメイドさんが部屋のあれこれを説明し、部屋から出ていく。 レイラは部屋を出るメイドさんに一礼する。




「それではどうしましょうか。 会議が始まる時間まであと2時間くらいありますが」



「なら、さっきの『とらんぷ』続きしようよ! 今度こそ負けないんだからねっ!」



ルナはレイラにそう提案する。 ここまでトランプが流行るとは思わなかった。 というかこれから世界の要人が集まる会議を前に遊んでるとはなんのために来たのかわからない。

まぁ辛気臭い空気で待っていてもしょうもないしレイラに取ってもアルシノエ王国に来るのはあまりいい思いはないだろう。 ならその気を少しでも紛らわせるのにちょうどいいのかもしれない。

俺はカバンから先ほどまで船で遊んでいた厚紙で作ったお手製のトランプを取り出す。 そしてシャッフルを始めるのだが、そこでティアラがちょっと待ってください! と俺を止める。




「皆さん! ここには遊びに来たわけではないのですよ! それにレイちゃんも! 緊張感なさすぎです!!」



「ティアラ? とは言ってもあと2時間ほど何もすることがありませんよ?」



なんで止めるのかとレイラは首を傾げる。

本当にこの人の場合緊張感ないのかもしれない。

…それだけ俺らが信頼されているものだと思うことにした。



「とは言ってもですね! もしかしたら『戦争屋』からの刺客とかあるかもしれないんですよ!? 」



ティアラはみんなを説得するようにそういう。



「確かにそうかもしれませんわね。 ですが、ずーっと気を張っていては最後まで持ちませんよ?」



この場で一番最年長のセリアさんがクスクスっと笑い、ティアラに言った。 そしてそれに続いてこう提案する。



「それでもティアラさんの言うことも間違いではありません。 なので、今から始まるトランプでビリだった人が見張り役になるというのはどうでしょう?」



「さんせーい!! ソウタ、早く配ってよ! ゲームはさっきの続きの『大富豪』でいいよね!?」



「ちょっ! ルナさん!?」



「ティアラ、いいではありませんか。 ルナさん、わかりましたわ。 でもみなさんいいんですか? そしたら私が大富豪からスタートですが?」



「私は構いません。 ゲームでもリアルでも上の立場にあるなど私が革命で地の底に叩き落として差し上げます」



「おい、 イヴ。 お前がそれいうとリアルでもやりそうで怖いからそういうこと言うなよ。 あと、一応無礼講とはいえレイラは皇族だぞ?」




「フフフ、 本当に賑やかなパーティですね」



提案したセリアさんはおかしそうに笑い、こうして緊張感もなく、ティアラの忠告もむなしく、俺たちはゲームに勤しむのであった。






























「結局こうなるんだよなー」



俺は部屋の外扉の前にいた。

部屋の中からは賑やかな声が聞こえる。

結果として俺は負け、こうして外で警備となった。

そして、俺の代わりに外で待機していたメイドさんが今はゲームに加わっている。



「ふぁーあ、暇だな… ん?」



大きく背伸びと欠伸をしたところでこちらへくる人物に気づく。

あの最初に俺らを案内したメイドさんだった。



「なぜソウタさんが外に? ここにいた者はどうしたのですか?」



俺はメイドさんに事情を説明する。



「そういうことでしたか。 お疲れ様でした」



「ありがとうございます。 それでどうしたんですか?」



「ええ、時間になりましたので皆さんをご案内いたします」







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